
規制転換とETFが動かした2025年仮想通貨市場
2025年12月24日、米仮想通貨メディアCryptoSlateは、仮想通貨分野における2025年に顕著な成功を収めた「12の勝者」を示した分析記事を公開しました。
同記事では、米国の規制環境転換や現物ETFの台頭、ソラナ(SOL)の急成長、Ripple(リップル)社とXRPの訴訟勝利など、制度・プロジェクト・市場構造の観点から主要な要因が「勝者」として挙げられています。
これにはプライバシー通貨の復権やRWA(現実資産)トークン化の進展、ステーブルコイン市場の拡大、DEX(分散型取引所)や予測市場の躍進、香港市場の台頭、長期投資家の成功といったトピックも含まれました。
2026年に向けた仮想通貨の中核テーマ
2025年仮想通貨市場を牽引した12の成功例
米国とトランプ政権
CryptoSlateは、2025年の仮想通貨市場における主要なテーマとして「米国の規制枠組みの転換」を挙げています。
7月には「GENIUS法」が成立し、ステーブルコインに連邦レベルでの法的定義が与えられました。
また、3月に発令された「戦略ビットコイン準備金設立」大統領令では、デジタル資産が国家安全保障の一部であるとの認識が示され、規制執行リスクの低減につながったとされています。
さらにSEC(米国証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)のリーダー交代が、従来の執行による規制不透明性を解消し、米国を「世界の仮想通貨資本」とする構造変化をもたらしました。
2026年展望として、CryptoSlateは米国が新たな規制スタンダードを国際的に推進し、CBDC(中央銀行デジタル通貨)を禁止する方針の下、Tether(テザー)やCircle(サークル)、銀行系のドル建てステーブルコインがデジタルドルの実質的な供給源となる可能性があると分析しています。
米初のステーブルコイン規制が成立
米国の現物ETF
米資産運用大手BlackRock(ブラックロック)の現物ビットコインETF「iShares Bitcoin Trust(IBIT)」は、2025年に伝統的ETF上位銘柄と比肩する資金流入を達成し、機関投資家のエントリーポイントとしての地位を確立しています。
イーサリアム現物ETFは、富裕層の資産管理者向けのデフォルトの入口として機能し、従来の「自分で鍵を管理する」論争を事実上無意味なものにしました。
また9月には、SECは仮想通貨ETFの上場手続きを簡略化する新たな汎用上場基準を承認し、19b-4提出を各ティッカーごとに求めない要件に簡素化しました。
これを受け、ソラナやXRPなどの新たなETFが相次いで登場しています。
2026年展望として、CryptoSlateは米資産運用大手Vanguard(バンガード)の仮想通貨ETF取扱い解禁を背景に、バスケット型・カバードコール戦略の商品が増加し、オプション市場の厚みが実現値動きのボラティリティを抑制することで、保守的な年金基金などへの浸透が進む可能性があると分析しています。
ETF上場手続きの簡略化を承認
ソラナ(SOL)
規制とETFを軸とした資金流入が進む中、ソラナ(SOL)は2025年に従来の「高速である一方、脆弱」という評価からの改善が進み、グローバル市場の流動性レイヤーとしての位置付けが強まったとされています。
CoinGeckoによれば2025年、ソラナは世界で最もフォローされるブロックチェーンとなり、その地位を2年連続で維持しました。
また、SOL-USDのオンチェーン取引量が仮想通貨取引所Binance(バイナンス)とBybit(バイビット)の現物取引量合計を3カ月連続で上回ったとの報告もあり、オフチェーンよりオンチェーンでの価格発見が進んでいます。
2026年展望として、CryptoSlateはオンチェーン主体の取引量増加が構造変化を示しており、高頻度・ステーブルコイン建ての商取引や決済が主要な利用となることで、ソラナがオンチェーン価格発見の中心となる可能性があると分析しています。
イーサリアムL2「Base」
仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)のレイヤー2ネットワーク「Base」は、ユーザー基盤の広さが普及を後押しした要因として挙げられています。
このネットワークは、消費者向けアプリやステーブルコイン実験のデファクトスタンダードとなり、裏側で仮想通貨ネットワークを利用しつつ、ユーザーは意識することなくサービスを享受できる構造を創出しました。
Baseは一般利用者向けの暗号資産活用を促す役割を担い、オンチェーンと規制済みサービスの接点として位置付けられています。
2026年展望として、CryptoSlateは「ウォレット起点の商取引」が進む中、Baseがコインベースの加盟店決済推進の中核として利用される可能性があると分析しています。
仮想通貨へのシームレスなアクセスを提供
リップル社とXRP
長年の米SECとの法的係争は2025年に最終決着し、XRPが「証券ではない」と公式に方向付けられたことでXRPの法的リスクが大幅に低下しました。
これにより11月には米国で初のXRP現物ETFが上場しました。
同年、Ripple(リップル)社は40億ドル(約6,240億円)超を買収戦略に費やし、HiddenRoadやGTreasury、Railなどを買収し、決済関連の事業に加えて機関向けサービスへ事業領域を広げています。
2026年展望として、CryptoSlateはXRP ETFの登場が統合の動きを後押しし、買収した財務・ブローカレッジ網を活用してRLUSDなどのステーブルコインを法人クライアントに展開することで、XRPLedgerと企業バランスシートの橋渡しとなる可能性があると分析しています。
900本のETF中で初日出来高トップに
Zcash(ZEC)とプライバシー分野
CryptoSlateは、2025年を「プライバシー技術の再評価が始まった年」と位置付け、その象徴としてジーキャッシュ(Zcash/ZEC)を挙げています。
ZECは2025年において、主要アルトコインの中でも最も高いリターンを記録した銘柄群の一つとされ、これまで長く付きまとっていた「違法用途に使われる通貨」というレッテルから脱却しつつあるとしています。
記事では、イーサリアム開発者コミュニティがプライバシーを「周縁機能」ではなく、MEV耐性や取引戦略保護のための必須要素として再定義し始めた点を指摘しています。
その流れの中で、Zcashのゼロ知識証明技術が注目を集め、選択的開示という設計思想が具体的なユースケースとして取り上げられているとの見方を示しました。
また、米SECが2025年後半にプライバシープロトコル関係者とのラウンドテーブルを開催した点にも触れ、「全面禁止」ではなく「適法な設計を前提とした対話」へ姿勢が変わったことを大きな転換点としています。
2026年展望として、CryptoSlateは「コンフィデンシャルDeFi(取引内容や残高などの秘匿性を組み込んだ仕組み)」の概念が現実味を帯び、機関投資家が取引内容を秘匿しながらもコンプライアンスを満たすための「選択的プライバシー」が新たな競争軸になる可能性があると分析しています。
Zcashが過去1年で10倍超に急騰
RWAのトークン化
CryptoSlateは、RWA(現実資産)トークン化を「2025年に最も構造的進展を遂げた分野」と評価しています。
これまではパイロットプログラムや実験段階に留まっていたトークン化が、2025年には実際の金融取引インフラとして機能し始めた点が強調されています。
象徴例として挙げられているのが、ブラックロックのBUIDLファンドがバイナンスにおいて店頭外取引の担保として受け入れられた事例です。
これにより、トークン化された国債やMMF(マネー・マーケット・ファンド)が仮想通貨市場と伝統金融市場をまたぐ担保として用いられる動きが広がったとCryptoSlateは指摘しています。
CryptoSlateによると、2025年末時点でトークン化された米国債・MMFのAUM(運用資産残高)は約80億ドル(約1.2兆円)を超え、RWA全体では約200億ドル(約3.1兆円)規模に到達しました。
JPモルガン、フィデリティ、ナスダック、DTCC(証券保管振替機構)などの伝統的な金融大手が本格参入している点も指摘されています。
2026年展望として、CryptoSlateは24時間稼働するオンチェーン担保市場がレポ取引に近い効率性を実現し、RWAのAUMが180億ドル(約2.8兆円)規模へ拡大する可能性があると分析しています。
「RWA(現実資産)のトークン化」とは
ステーブルコイン
CryptoSlateは、2025年を「ステーブルコインが投機の道具から金融インフラへ移行した年」と位置付けています。
10月にステーブルコインの時価総額は初めて3,000億ドル(約46.8兆円)を突破しました。
特にイーサリアム上のステーブルコイン供給量は9月に1,660億ドル(約25.9兆円)に達し、決済・清算・送金といった用途での利用が急拡大しています。
TokenTerminalのデータによると、保有者数が約2億アドレス規模に到達したとされています。
CryptoSlateは、米国で成立したステーブルコイン関連法制により、銀行や規制準拠企業が安心して参入できる環境が整ったことを2025年最大の転換点と評価しています。
2026年展望として、CryptoSlateは利回り付きステーブルコインや企業の国庫管理、FX決済用途が拡大し、市場規模が3,800億ドル(約59.3兆円)へ向かう可能性があると分析しています。
ステーブルコインとAIが次の成長を牽引
無期限型DEX
オンチェーンの無期限先物DEXは、2025年に取引高を拡大し、CEX(中央集権型取引所)と並ぶ取引の場として存在感を強めました。
CryptoSlateによれば、10月のオンチェーンデリバティブ月間取引高は1.2兆ドル(約187.2兆円)に達し、過去最高を更新しています。
CryptoSlateは、ハイパーリキッド(Hyperliquid/HYPE)を代表例として挙げ、成長要因として、トレーダーがスマートコントラクトリスクを受け入れてでもカウンターパーティリスクを回避したいと考えていると説明しています。
また、オンチェーンで公開される建玉(OI)や清算データが、マクロ市場のリスク指標として利用され始めている点にも言及されています。
2026年展望として、CryptoSlateは手数料競争とUX改善が加速する一方で、オンチェーン派生市場がグローバルな価格変動の先行指標として機能する可能性があると分析しています。
予測市場
予測市場は、2025年に「規制された金融商品」としての地位を確立しました。
CryptoSlateは、Kalshi(カルシ)とPolymarket(ポリマーケット)が過去最高の取引高を記録した点を勝因として挙げています。
これらの市場は、単なるギャンブルではなく、選挙・金利・経済指標に対するヘッジ手段として機関投資家に利用され始めました。
CFTCの承認を得たことで、米国市場への再参入が可能になった点も重要視されています。
2026年展望として、CryptoSlateは予測市場がETFや先物と並ぶ「アウトカム連動型金融商品」として標準化され、想定元本が600億ドル(約9.4兆円)規模に拡大する可能性があると分析しています。
gumi、予測市場サービスを検討
香港
CryptoSlateは、香港を「米国以外で最も成功した規制ハブ」と評価しています。
香港の地元メディアによると、2025年第3四半期、香港の仮想通貨ETP市場の平均日次売買代金は378億香港ドル(約7,580億円)に達し、世界第3位の規模となりました。
また、VATP制度に基づく取引所ライセンス発行が進み、2025年半ばまでに11社が本免許を取得したことも報じられています。
8月1日施行のステーブルコイン条例により、香港ドル建てステーブルコインの競争が本格化しています。
2026年展望として、CryptoSlateは免許取得済みステーブルコインが流通し始め、香港がアジアのデジタル決済ハブとして実需主導の成長を遂げる可能性があると分析しています。
香港が世界2位の仮想通貨都市へ
初期投資家
CryptoSlateが最後の勝者として挙げたのは、2022〜2023年の弱気相場を耐え抜いた初期投資家です。
2025年について同メディアは、機関投資家が本格参入する前にポジションを構築していた個人投資家が、相対的に有利な位置にあったとの見方を示しています。
過去数年間にわたり、仮想通貨市場に対しては「詐欺」や「バブル」「いずれ行き詰まる」といった否定的な評価が一部で見られていました。
2022年の市場混乱や、ゲンスラー(元SEC委員長)時代の規制強化、2024年にかけての取引低迷期を経て、市場環境は大きく変化しています。
CryptoSlateは2025年の市場動向を通じて「初期投資家の判断が結果として市場で評価された」と指摘しました。
また、多くの初期投資家は、2025年に利確を進めつつも市場から完全に退出せず、流動性提供や新規プロジェクトへの資金供給に回る動きが見られているといいます。
2026年展望として、CryptoSlateはこの層が分散型資本市場の「エンジェル投資家」として機能し、新たなイノベーションを下支えする存在になる可能性があると分析しています。
トム・リー氏「最高の年はこれから」
2026年は「実装の年」になる可能性
2025年に確立されたこれらの潮流について、CryptoSlateは「2026年にかけて継続する可能性がある」との見方を示しています。
同メディアは、米国が国内で整えた規制基盤を国際標準として打ち出す動きが進む可能性があるほか、香港もアジアの決済ハブとして存在感を高める可能性があるとしています。
ステーブルコインやRWAの普及により仮想通貨と伝統金融の接点が広がり、24時間稼働の金融インフラ整備が進む中で、年金基金など保守的資金が参入しやすい環境が整う見通しです。
CryptoSlateは、利益を再投資する動きが広がればエコシステムへの資金循環が進み、仮想通貨市場がより安定的な基盤を備える可能性があると述べています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.02 円)
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Source:CryptoSlate分析
サムネイル:AIによる生成画像














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