量子コンピュータはBTCの脅威となるのか|アダム・バック氏の見解と技術的制約

量子FUDに反論、バック氏がBTC崩壊説を否定

ビットコインの基礎技術「Hashcash」の開発者アダム・バック氏は2025年12月16日、自身のX(Twitter)の投稿で、量子コンピュータがビットコイン(BTC)を崩壊させるとの主張を否定しました。

X上では、量子コンピュータによるウォレットやネットワークの破壊が起きれば、ビットコイン価格が3ドル(約460円)にまで暴落し得るとの憶測も見られていました。

これに対しバック氏は「ビットコインは暗号化を使用しない」と述べ、量子コンピュータによる脅威が直ちに現実化するものではないとの見解を示しています。

ビットコインは暗号化を使用しない

これに先立つ11月16日の投稿では、同氏は「現状の量子コンピュータがBTCへ意味のある脅威を及ぼすのは、少なくとも今後20〜40年先になる」と述べています。

こうした見解を背景に、量子コンピュータが将来的にビットコインの安全性へどのような影響を及ぼし得るのかが改めて注目されています。

量子コンピュータは今後ビットコインの脅威となるのか

初期BTCアドレスが量子脅威とされる理由

量子コンピュータがビットコインの脅威とされる背景には、初期に発行された一部のBTCが特定のアドレス形式で保管されていることが挙げられています。

ビットコインの初期設計を巡っては、サトシ・ナカモトの初期ウォレットを含む約400万BTCが古い「Pay-to-Public-Key(P2PK)」形式のアドレスに保管されている点が以前から指摘されていました。

これらのアドレスでは公開鍵がブロックチェーン上に露出しており、ビットコイン長期投資家のウィリー・ウー氏は、理論上は量子コンピュータによって秘密鍵が逆算されるリスクがあると説明しています。

一方で、SegWitやTaprootなど新しいアドレス形式では、コインを使用するまで公開鍵が明らかにならない設計となっており、量子攻撃に対する耐性は相対的に高いとされています。

量子コンピュータによる価格崩壊説の広がり

こうした技術的背景を踏まえ、X上では量子コンピュータがビットコイン価格に与え得る影響を巡る議論が展開されています。

一部のX投稿では、量子コンピュータが実用化された場合に初期ウォレットの暗号が破られる可能性を前提に、サトシ・ナカモトの保有するとされる約100万BTCが市場に影響を与え、ビットコイン価格が大きく下落するとの見方も示されています。

今回再燃した議論は、Xユーザーがビットコイン価格の下落を示すチャート画像を投稿したことを受け、仮想通貨系インフルエンサーであるジョシュ・オッテン氏が、量子コンピュータが実用化された場合の理論的影響について言及したことをきっかけに広がりました。

市場構造から見たBTC崩壊論への反論

このような暴落シナリオに対し、市場構造の観点から異論も示されています。

ウィリー・ウー氏は「多くのOG(古参投資家)はそのフラッシュクラッシュが起これば買い支えるだろう。ネットワークは生き残り、大半のコインは直ちに危険に晒されるわけではない」とオッテン氏に対して反論しました。

現行量子プロセッサの到達点と限界

量子計算を巡っては、現行の量子プロセッサの性能に大きな制約があるとの指摘が専門家の間で共有されています。

ビットコインの暗号基盤を破るためには「少なくとも2,500個以上の論理量子ビットを安定稼働させ、何日間もエラーなしで動作できる量子コンピュータが必要になる」との見解が示されています。

一方、現状の量子プロセッサはIBMで約1,000量子ビット、Googleでも50量子ビット程度の試作段階に留まっており、エラー率も極めて高いといいます。

このため、仮想通貨の専門家らの間では、量子によるビットコインへの脅威は「長期的な課題」にとどまり、当面から中期的には現実的ではないとの見方が示されています。

量子計算を巡るリスク評価に温度差

量子計算を巡る懸念について、バック氏はNIST(米国標準技術局)が2024年に標準化した量子耐性署名『SLH-DSA』などを例に挙げ、実用的な量子コンピュータが到来するよりも十分前にビットコインは量子対応が可能になるとの見解を示しています。

一方で、投資家のチャマス・パリハピティヤ氏は、今後2〜5年以内に量子計算が仮想通貨のセキュリティを脅かす可能性があるとの見方を示しており、量子技術を巡る評価には依然として幅がある状況です。

マクロ要因が左右する直近のビットコイン相場

記事執筆時点でビットコインは1 BTC=約87,000ドル(約1,350万円)前後で推移しており、10月初めに付けた史上最高値12万6,000ドル(約1,950万円)から大幅に下落しています。

この急落以降、市場では投資家の慎重姿勢が続いており、短期的には米国の金融政策や景気見通しといったマクロ要因によるリスク回避姿勢が市場を支配しています。

こうした短期的な慎重姿勢が続く一方、米資産運用大手Grayscale Investments(グレースケール)の最新分析では「現在の弱気相場は移行期に過ぎない」とされ、2026年前半にはビットコインが過去最高値を更新し得るとの予想も出ています。

直近の価格動向は主に伝統的な金融市場の動きに連動しており、特に金利動向や株式市場の変化が短期的な値動きに影響を与える展開が続いています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=154.75 円)

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Source:アダム・バック氏X投稿
サムネイル:AIによる生成画像

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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