IMF、ステーブルコインと金融市場の密接化に懸念=レポート

規制と国際協調を訴え

国際通貨基金(IMF)が、報告書「Understanding Stablecoins」を12月1日に発表し、ステーブルコインが抱える潜在的リスクと、それに伴う金融システムへの影響を詳しく分析した。

報告書では、IMFが各国・各地域におけるステーブルコインの規制枠組みを分析した上で、今後、国際送金や決済手段として普及が進む可能性がある一方、規制や監督が不十分なまま拡大すれば、通貨主権や金融の安定性を損なう恐れがあると指摘した。

IMFは、ステーブルコインのリスクとして、準備資産の流動性リスクや市場環境の悪化に伴う価値変動リスクを挙げている。市場の混乱時に利用者による大量の換金要求が発生した場合、準備資産の急速な売却が起こり、金融市場に悪影響を及ぼす可能性があるという。

またステーブルコインの普及により、銀行など既存の金融機関を介さない資金移動が拡大すれば、従来の金融仲介機能が弱まり、マクロ金融の安定に影響を与える可能性があるとした。

またIIMFは、現在のステーブルコイン市場が米ドル建てトークンに大きく依存した構造になっているとし、米国の金融システムとの結びつきが強まっている点にも触れている。

さらに新興国や途上国を中心に、自国通貨が外国通貨建てステーブルコインに置き換えられる「通貨代替」が進めば、金融政策の有効性や通貨主権が損なわれるリスクがあるとIMFは警告。国内の経済活動の多くが自国通貨以外で行われるようになれば、中央銀行は流動性や金利への影響力を弱めると指摘している。

加えて、金融整合性の観点から、マネーロンダリングやテロ資金供与への対応も重要な課題とされた。規制や監督、本人確認体制が不十分なまま利用が拡大すれば、不正資金の流通につながる恐れがあるという。

報告書でIMFは、ステーブルコイン規制が金融安定リスクの低減に資する可能性を認めつつも、各国の制度や政策対応が断片化している点に懸念を示した。複数のブロックチェーンや取引所でステーブルコインが乱立すれば、相互運用性の欠如や規制の違いによる国際取引の分断が生じる可能性があるとしている。

IMFは、「規制は一定のリスクに対処し得るが、第一の防御線となるべきは強固なマクロ経済政策と堅牢な制度であり、国際協調が不可欠である」と強調している。

さらに、外国通貨建てステーブルコインが決済手段として定着すれば、中央銀行デジタル通貨(CBDC)などの公的なデジタル通貨が競争上不利になる可能性があるとも指摘。

IMFは、通貨主権を守る観点から、デジタル資産の法的な位置づけについて各国が慎重に対応する必要があると述べている。

参考:報告書
画像:Reuters

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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