米SECアトキンス委員長、IPO再活性化と暗号資産向けイノベーション特例の導入推進へ

イノベーション特例にも言及

米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス(Paul S. Atkins)委員長が、米国資本市場の競争力回復に向け、IPO(新規株式公開)市場の再活性化と規制改革を進める方針を示した。上場企業数が過去30年でおよそ半減している現状を踏まえ、「IPOを再び魅力あるものにしたい」と強調した。

12月2日に放送されたCNBCの「スクワーク・ボックス(Squawk Box)」のインタビューにおいてアトキンス委員長は、現在の米国市場について「スタートアップから大企業までが、かつてほど容易に資本市場へアクセスできなくなっている」と指摘。その背景として、規制の複雑化に加え、企業活動を萎縮させる訴訟リスクの拡大を挙げた。とりわけ、いわゆる濫訴(Strike suit)など、上場を目指す企業にとって過度な負担となる訴訟慣行についても是正が必要だとした。

アトキンス委員長は、時代に合わなくなった規制を削ぎ落とし、資金調達をしやすくするためにルールブックの現代化を進める考えを示した。SECとしては、企業が安心して上場に踏み切れる環境を整えることで、再び公的市場に資本を呼び戻したいとしている。

さらにアトキンス委員長は、ESG(環境・社会・企業統治)やDEI(多様性・公平性・包摂性)を含むコーポレートガバナンスの分野についても強い問題意識を示した。

発行済み株式の1%にも満たない少数株主が、株主提案によって経営陣の意思決定を事実上足止めしている現状や、バンガードやブラックロックのようなパッシブ運用の巨大投資家において、実質的にCEO個人の思想が議決権行使に反映されてしまう構造に言及した。

こうした現状について同氏は、「どうして私たちは、これを異常だと考えずにここまで来てしまったのか」と指摘。そのうえで、ESGやDEIといったイデオロギー的な論点に過度に引きずられるのではなく、資本市場の本来の役割である資金調達の円滑化と企業成長の促進に立ち返るべきだとの考えを示した。

暗号資産規制をめぐっては、現在も議会と連携しながら技術的な助言を行っているとした一方で、「SECには単独でも前進できる十分な権限がある」と述べ、規制の主体的な見直しにも前向きな姿勢を示した。

とくに注目されるのが、暗号資産分野を対象とした「イノベーション特例(Innovation Exemption)」の導入だ。政府閉鎖の影響で一時作業は中断したものの、現在は再始動しており、早ければ約1か月以内の公表を目指しているという。

アトキンス委員長は「これまで米国は暗号資産やブロックチェーン分野に対して過度にブレーキをかけてきた」としたうえで、今後はスタートアップが柔軟に実証実験や新規事業に取り組める環境を整備し、将来的に暗号資産関連企業がIPOに至るまでの成長ルートを制度面から支援していく考えを示した。

また、近年、予測市場や超短期オプション取引の拡大により、投資とギャンブルの境界が曖昧になっているとの指摘がある点についても言及。アトキンス委員長は「リスクには本質的に長期と短期の連続性がある」と述べ、一定の管理のもとであれば対応は可能との見解を示した。デリバティブ市場についてはCFTC(米商品先物取引委員会)の管轄事項としつつも、米国のリスクテイク文化そのものは依然として世界から高く評価されていると強調した。

欧州や日本を訪問すると、多くの国が米国の資本市場と投資文化を羨望の目で見ているとも語り、「このリスクテイクの文化こそが起業家の夢を支え、投資家がその成果を共有する米国経済の原動力になってきた」と述べている。

4月にSEC委員長に就任したアトキンス氏は、就任以降、暗号資産をめぐる規制の明確化を積極的に進めてきた。11月には、デジタル資産がどの時点で証券と見なされるべきかを判断しやすくするため、SECが近くデジタル資産の分類基準を設けることを検討していると明らかにしている。さらに同氏は、暗号資産市場の構造に関する法整備を年内に完了させるよう求めるトランプ大統領の呼びかけを支持し、米議会に対しても同様の対応を促している。

参考:CNBC 
画像:iStocks/hapabapa

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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