英国、DeFi関連取引の課税ルール見直しへ。利確まで課税繰延へ

AMMも制度対象に

英国政府機関の歳入関税庁(HMRC)が、暗号資産(仮想通貨)のレンディングおよび流動性プール取引に関する新たな課税ルールの導入を検討していることが明らかになった。DeFi(分散型金融)における取引の経済実態に即した税制への見直しが進められており、ユーザーの税務上の負担軽減につながる可能性がある。このことは、11月26日に公開された協議結果報告書「分散型金融(DeFi)における暗号資産の貸付およびステーキングに関する課税 — 回答の概要(The taxation of decentralised finance (DeFi) involving the lending and staking of cryptoassets — Summary of responses)」で示された。

この文書では、2023年に実施された公開協議の結果報告と、その後の業界との継続的な意見交換を踏まえ、「ノーゲイン・ノーロス(NGNL)」方式を軸とした制度設計が提案されている。

HMRCは2022年、DeFiにおける暗号資産レンディングや流動性プールについて、既存の資本利得税(CGT)ルールを適用するとの解釈を示していた。しかしこれに対し、業界側からは、実態に比べて過度な税務処理負担が生じるとの懸念が多数寄せられていた。

これを受け英政府は2022年に情報提供要請(Call for Evidence)を実施。その後、2023年4月から6月にかけて正式な公開協議を行い、32件の意見書が提出された。回答企業には、アーベ(Aave)、バイナンス(Binance)、コンセンシス(Consensys)、a16z、KPMG、デロイト(Deloitte)など、暗号資産・金融・税務の主要プレイヤーが名を連ねている。

協議参加者は、ほぼ全会一致で制度見直しを支持しており、現行ルールについて、経済的実態と課税処理の乖離、取引回数の多さによる計算負担の重さ、投資家の非意図的な政務違反の誘発などの問題点を指摘した。

特に流動性プールや自動マーケットメーカー(AMM)では、トークンの出し入れのたびに課税対象となる可能性があり、DeFi特有の高速・高頻度取引と税制が根本的に噛み合っていないとしている。

これらを踏まえ、政府は「ノーゲイン・ノーロス(NGNL)」方式の採用を提案している。

これは、経済的な実現利益が確定するまで課税を繰り延べるやり方で、単一トークンのレンディングや暗号資産の借入(担保提供を含む)、自動マーケットメーカー(AMM)型の複数トークン流動性プールを対象として検討されている。

この方式が導入されれば、レンディングや流動性提供の開始・終了時点では課税されず、最終的に暗号資産が売却され、法定通貨化された時点などで損益が確定する仕組みとなる。

HMRCは、AMMについてもNGNLを適用する方向で検討していることを明言しており、例えばイーサリアム(ETH)とUSDCのような複数トークンが自動変換される仕組みも制度対象に含める方針が示された。

一方で、レンディングや流動性提供によって得られるリワードをすべて「収益」として課税する案については、多くの反対意見を受けて現時点では見送られることになった。

反対意見として業界側からは、一律に収益として課税する方式は、これまで税制が前提としてきた「資本と収益の区分」という長年の原則を無視するものだとの指摘が出ている。

また、暗号資産のリターンを収益扱いとすれば、本来キャピタルゲインとして課税される場合よりも高い税率が適用される可能性があるとの懸念も示された。

さらに、こうした課税方式は、各国の税制との間で国際的な不整合を生み、裁定取引(アービトラージ)を誘発するおそれがあるとの見方も出ている。

現時点では、具体的な法改正の時期や施行スケジュールは未定だ。また業界からは、新制度を過去の取引にも遡って適用できるよう選択制にすべきとの要望も出ている。

HMRCは今後も業界との対話を継続し、課題となる箇所を詰めてから最終的な立法判断を行うとしている。

参考:発表
画像:PIXTA

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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