Addictedというブロックチェーンゲームが、ローンチからわずか48時間で5億円以上の売上を叩き出しました。この金額は、2025年のブロックチェーンゲーム市場において世界最大規模です。
しかし、これほど成功を収めたにもかかわらず、Addictedはわずか数ヶ月でアップデートの提供を停止してしまったようです。開発・運営元であるPandemic Labsは、すでに新しいタイトルの開発に取り掛かっているとのこと。なぜ、大ヒット作であるAddictedは短期間で幕を下ろしてしまったのでしょうか。
今回は、Addictedの開発・運営元であるPandemic Labs co-founderの永田公平さんへインタビューを行いました。
以下の疑問にお答えいただき、Addictedが成功した要因に迫ります。
- Addictedが成功した要因はどこにあるか?
- Addictedが短期間でサービスを停止した理由とは?
- バイラリティマーケティングの重要性とは?
自社でトークンプロジェクトを検討している方、ブロックチェーンゲームに興味がある方はぜひ最後までご覧ください!
東南アジアやアメリカで起業し、ブロックチェーンの世界に至る

co-founder 永田公平氏
ーーまず、永田さんのこれまでのキャリアについて、教えてください。
永田氏:現在は、Pandemic Labsのco-founderとしてブロックチェーンゲームの開発・運営に携わっています。
これまでのキャリアとして、東南アジアやアメリカで起業家として活動し、いくつもの事業に挑戦して多くの失敗をしてきました。
起業家を目指したのは高校生の頃です。思い立って高校を中退し、特に当てのないままフィリピンに出国しました。その後は、8年間にわたってマレーシア、サンフランシスコと世界各地でビジネスをしてきています。
特定の業種にはこだわらず、さまざまなプロジェクトを手がけてきましたね。サービス開発が好きで結果的にソフトウェアに行き着き、アプリからブロックチェーンにシフトしていきました。
ーーブロックチェーンに興味を持ったきっかけについて、教えてください。
永田氏:NFTブームでブロックチェーン業界の熱量を目の当たりにして、強い関心を抱きました。
サンフランシスコで起業した際に最初に作ったプロダクトが、遠距離カップル向けの通話アプリです。サービスに対するニーズは強かったものの、遠距離カップルの母数が少なくマーケット規模の小ささに悩みました。このような経験から、マーケットとトレンドの重要さを学んだのです。
ちょうど同じタイミングでNFTブームが到来したため、まだ先駆者のいないDAOの分野でポジションを取ろうと全力を投じたのです。
大麻を栽培するゲームで、人々の注目を集める

ーー続いて、「Addicted」がどのようなゲームなのかを教えてください。
永田氏:「Addicted」は、大麻栽培のシミュレーションゲームです。
大麻栽培をモチーフにした理由は、誰もが注目する刺激的なテーマが必要だったからです。
これまで4年間ほどブロックチェーンアプリを作ってきた経験から、さまざまな成功事例・失敗事例を目の当たりにしました。これらを分析したところ、プロダクト自体よりもマーケティングがすべてだとの結論に至ったのです。
賛否両論のあるテーマで「なんだそれ?」と興味を引くコンセプトを考えた結果、大麻栽培というアイデアに行き着きました。
――「Addicted」リリース後の実績を教えてください。
永田氏:ローンチしてわずか1日で紹介動画が230万回再生され、2日間でトレーディングボリュームが約70億円に達しました。
パックの購入数は約20万個で、収益は約5億円以上。この金額は、2025年にローンチされたブロックチェーンゲームの中で最大です。
――「Addicted」のエコシステムについて、詳しく教えてください。
永田氏:Addictedでは、最初に0.5SOLを支払って工場を作ることから始まります。
Addicted内で流通するトークンがWeedです。このWeedトークンを使ってカードパックを購入したり、工場をレベルアップさせたりできます。
パックからはレアリティの異なるWeedカードを入手でき、レアリティが高いほど生産性も向上する仕組みです。なお、ユーザーが使ったトークンはすべてバーンされるため、インフレを防ぐ設計となっています。
――「Addicted」は、Solana上のプロジェクトです。プラットフォームとしてSolanaを選んだ理由について、教えてください。
永田氏:過去にイーサリアムを採用した際に、スケーラビリティの問題に直面したためです。その反省からSolanaを選びました。
2024年10月頃に、パンデミックをテーマとしたプロジェクト「Infected(@infecteddotfun)」をイーサリアム上のレイヤー2に構築しました。しかし、ゲーム自体は好評で爆発的にユーザーが増加したものの、トランザクションの増大に伴ってガス代も高騰し、ユーザー体験が悪化してしまったのです。
当時フォロワーが5万人ほどの状態でさえ耐えられなかったので、これ以上の拡大が難しいと感じました。僕自身はもともとイーサリアム派だったのですが、このような理由から大量のトランザクションを処理できるSolanaを選択しました。
――前回のプロジェクト「Infected」では、サイバー攻撃によってプロジェクトが攻撃されたと伺いました。「Addicted」では、どのようなセキュリティ対策を施したのでしょうか。
永田氏:主に、以下の2点に対する厳重な対策を行いました。
- DoSアタック(大量アクセスによるサーバーダウン)
- 不正アクセスによるデータベースの改竄
ブロックチェーンゲームはお金が関与するため、あらゆる隙が狙われます。そこで、DoSアタックを防ぐために認証ステップを増やしました。加えて、データベースはできる限りプライベート化し、攻撃できない仕組みにしています。
また、想定されるリスクを列挙し、一つ一つ検証しました。ゲームを作ること自体は難しくなかったものの、このようなセキュリティ対策に相当なリソースを投入しています。
成功の要は、徹底したバイラリティマーケティング

――「Addicted」が成功を収めた要因について、どのように分析していますか。
永田氏:バイラリティマーケティング(SNSや口コミ)にすべて振り切った点が、成功要因です。
ローンチ前にアニメーションを作り、SNSでの発信を通じて30万人の事前登録者を集めました。僕も毎日SNSのトレンドを確認し、バズる要素を散りばめて投稿していました。このように多くの人が注目してくれる状態をリリース前に構築できていた点が、これまでとの大きな違いです。
――「Addicted」は、どのようなユーザーをターゲットにしているのでしょうか。
永田氏:非常にニッチであるものの、特定のユーザーに心から楽しんでもらえるプロダクトを意識しています。
今回の「Addicted」では、ディージェン(ハイリスクを好む投資家)に刺さるコンテンツを目指しました。彼らはフルタイムでトレーディングしているような熱狂的な投資家層です。
Web3の面白いところは、ディージェンのような一部のユーザーが取引額の大多数を占めている点です。前作の「Infected」でも実感しましたが、ゲームをプレイするために10億円くらい資産を投じたりと、まさに桁違いです。
ディージェンはこだわりが強く、好き嫌いが明確です。そこで「Addicted」の設計では、彼らに熱狂してもらうためのプロダクト設計にこだわっています。
ブロックチェーンゲームでは、ゲーム自体の面白さよりも取引額が注目を集める要素です。つまり、大口のユーザーが集まり取引ボリュームが増加すると、話題が大きくなり新規ユーザーも流入します。
このような理由から、ディージェンが楽しんで周りのユーザーを紹介し、結果的に広がっていく設計を描いています。
――「Addicted」について、ユーザーからどのような反応がありましたか。
永田氏:ポジティブな反応をたくさんいただいています。
前作の「Infected」では、ゲームが満足に動かず厳しい意見もいただきました。一方で「Addicted」では、このような反応はまったくありません。
「Addicted」には、ポケモンのトレーディングカードのようにパックからカードを開封できる機能があります。この時の演出にもこだわっており、実物のトレーディングカードと同じドキドキを味わえるようになっているのです。多くのユーザーがこの瞬間をムービーとして記録しており、リアクション動画としてSNSに投稿したのです。
この様子を見て、僕は「体験時間の重要性」を実感しました。単にチャートを見ながら操作するだけでは面白さがないため、ゲームの過程においても楽しさを提供できる仕組みが求められると感じています。
ショート動画のように期間限定でゲームを提供する

――「Addicted」の現状について、教えてください。
永田氏:既存ユーザーは引き続き「Addicted」を楽しめるものの、今後の新規アップデートは提供しません。現在は新しいゲーム制作に挑戦しています。
もともと「Addicted」は、数ヶ月でサービス終了する前提でリリースしました。なぜなら、ひとつのゲームタイトルが永続的に楽しまれる時代はもう終わったと考えているからです。
僕も、昔はモンハンやドラクエのゲームタイトルをひたすら遊んでいました。しかし今の若い人は、すぐに次のコンテンツに興味が移ってしまいます。そこで、3ヶ月ほどで終わる期間限定のリアリティーショーのような展開に至りました。
加えて、今後リリースされる新しいタイトルへのトークン・デジタルアセットの引き継ぎも不可能です。このような設計もかなり珍しいと言えるでしょう。
一度発行したトークンの価値を維持しようとすると、運営側が常に働きかける必要が出てきます。例えば、既存プロジェクトに新しい要素を追加するといった手法がありますが、初期のリリースを超える勢いにはなりません。それならば「このゲームは一時的で短期的なものだ」と伝えた上でトークンを発行しようとの結論に至りました。
――一時的なプロジェクトのためにトークンを発行した場合、トークン保有者から不満の声は出ないのでしょうか。
永田氏:儲ける人がいる一方で損をする人もいるので、もちろん不満の声も届きます。
とはいえ、「永続的に特定の銘柄にコミットします」との姿勢を貫けば問題が解消されるかというと、そうでもありません。一つのプロジェクトを無理に続けようとすると、どうしても価格は徐々に下落してしまいます。中には、そのままフェードアウトしてしまうプロジェクトも少なくありません。
結果的にこのような状況になってしまっては、永続的なプロジェクトとは言えないはずです。そこで僕たちは、「一定期間しか開発しません」と宣言した上で、その期間内で遊んでもらう設計にしています。
トークンはエンタメの一種だと僕は捉えています。ショート動画と同じく短期間で楽しんだのちに、次のトークンに移っていく。これからの時代は、このような短期的なエンタメが主流になると予測しています。
――今後の展開について、教えてください。
永田氏:次のタイトルである「Jailed」 (@Jaileddotfun)というゲームを開発中です。
「Addicted」は2025年で最大級のヒットゲームとなりましたが、今回のプロジェクトを通じて多くの反省点もありました。この経験を活かせば、「Addicted」の10倍規模のゲームも実現できるはずです。
「Addicted」のチームメンバー3名はいずれも日本人で、2025年最大のWeb3ゲームは日本人の手によって誕生しました。エンタメ分野は日本のお家芸なので、日本企業もグローバルで十分に戦えるはずです。ぜひ、ブロックチェーンの世界に挑戦してもらいたいですね。
- 永田公平氏 X:@weretuna
- Pandemic Labs 公式X:@pndmdotorg
- Addicted 公式X:@addicteddotfun
- Jailed 公式X :@Jaileddotfun
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参照元:NFT Media


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