【税理士監修】NFTクリエイター必須の税金ガイドブック

※本記事は、カオーリア会計事務所 税理士の藤本様による寄稿記事です。

今年も確定申告の時期が近づいてきました。

そこで今回は、NFTクリエイターの方向けに暗号資産・NFTの損益計算で頻出する処理についての解説を行います。

なお、本記事では暗号資産・NFT損益計算ソフトを用いて総平均法で計算することを前提とします。

NFT・暗号資産の損益計算で頻出する取引10選

ここでは、数ある取引の中でも特に確定申告で判断に迷いやすい10の事例を厳選しました。

それぞれの取引について収入・費用の区分や計上タイミングといった基礎知識から、消費税の取り扱いや実務上の留意点に至るまで、ポイントを整理して解説します 。

  1. 暗号資産・NFTの売買
  2. 自分のウォレット間での暗号資産・NFTの移動
  3. 自分のNFTのミント
  4. 他者のNFTのミント
  5. 暗号資産、NFTを他者に無償譲渡した場合
  6. 二次流通ロイヤリティの受取
  7. トランザクション手数料(≒ガス代)の支払い
  8. NFT同士の交換
  9. リスト(出品)およびリストの取りやめ
  10. スキャムトークンについて

それでは、各ケースにおける具体的な処理方法と実務上のポイントを順に見ていきましょう。

1. 暗号資産・NFTの売買

暗号資産、NFTを購入した場合、それらの取得原価は購入時に支払ったトークンまたは法定通貨の価値と同額になります。

もし、購入時に支払ったものが法定通貨の場合は基本的には損益は発生しません。トークンを支払った場合はその支払ったトークンの時価から取得原価を差し引いた残額が損益額となります。

一方で、暗号資産、NFTを売却した場合、それらの損益額は売却したことによって受け取ったトークンの時価から売却した暗号資産の取得価額を差し引いた残額となります。

なお、NFTを売却した場合は消費税の課税対象となります。

2. 自分のウォレット間での暗号資産・NFTの移動

暗号資産、NFTを自分の取引所含むウォレット間で移動させた場合、損益は発生しません。

なお、ブリッジについてはブリッジ手数料が差し引かれた場合、その差し引かれた数量だけ費用計上することになります。

3. 自分のNFTのミント

自らのNFTをミントした場合、その際に支払ったガス代が取得原価となります。

ミントしたNFTが売れた際には、受け取った暗号資産などの時価からその取得原価を控除した残額が損益額となります。

なお注意したいこととして、デジタルアートそのものの制作費はNFTの取得原価として計上することはできません。

4. 他者のNFTのミント

他者のNFTをミントした場合、ミント時にガス代を支払っている場合はそのガス代が取得原価となります。

ガス代を支払っていない場合、取得原価はゼロとします。

5. 暗号資産、NFTを他者に無償譲渡した場合

暗号資産を無償で譲渡した場合、無償譲渡した時の時価から取得価額を差し引いた残額が損益額となります。つまり、普通に暗号資産を売却したときと同じ結果になってしまうので注意が必要です。

個人のクリエイターがエアドロップなどで自分が制作したNFTを無償譲渡した場合については、基本的には時価で収益計上する必要がない(=取得原価分を損失計上)と考えます。

ただし、そのクリエイターの作品群が高額で取引されている現状がある場合は注意が必要です。作品群の平均時価をもって売上額とし、取得原価を差し引いた残額を利益として計上しなければ、税務的なリスクが発生する可能性があります。

6. 二次流通ロイヤリティの受取

二次流通が発生したことによりロイヤリティを受け取った場合は、受取時の時価がそのまま利益として計上されます。

ロイヤリティは消費税の課税対象となります。

7. トランザクション手数料(≒ガス代)の支払い

暗号資産やNFTの取引を行った場合に生じるトランザクション手数料(≒ガス代)は経費計上が可能です。こちらについては支払時の時価を経費計上します。

ただし、支払時の時価と取得原価の差額も別途損益計上することになります。

8. NFT同士の交換

NFT同士の交換を行った際は、引き渡したNFTの取得原価と受け取った時価の差額を損益計上することになります。

ただし、受け取ったNFTの時価を判定することは実務上非常に困難であることから、引き渡したNFTの取得原価をそのまま受け取ったNFTの取得原価に引き継がせる処理を行います(損益が発生しない)。

9. リスト(出品)およびリストの取りやめ

オークションサイトにおいて、NFTを出品する場合、その時点では損益は発生しません。

また、オークションが成立せず、自分の所に出品したNFTが戻ってきた場合、こちらについても損益は発生しません(損益計算ソフト上では取引がなかったことにしてOK)。


もし、オークションが成立(売買が成立)した場合は、「1.暗号資産・NFTの売買」を前提にして損益計算を行うこととなります。

10. スキャムトークン

NFTクリエイターの処理とは直接的には関係がないですが、暗号資産・NFTの取引を行った場合、必ずついて回るのがスキャムトークンです。

単純に価値のないトークンが送られてくるだけではなく、自分が暗号資産(例:ETH)をいずこかへ送金したタイミングの直後に、同じシンボル名だが、コントラクトアドレスが異なるトークンを他所に送金したという履歴が発生します。

この場合はコントラクトアドレスを確認して、本物のトークンか否かを判別したうえでスキャムトークンの場合は、損益計算の対象から除外してください。

その他注意点

暗号資産の税務調査で必ず見られるのが、期末の暗号資産保有状況です。

こちらについては、年末時点のスクリーンショットを残しておくと、後戻りがなくスムーズです。

同人誌等のグッズを作成した場合の注意点

なお、暗号資産・NFTの取引とは関係ありませんが、NFTクリエイターの方が同人活動を行っているケースは多く見られます。

その時に注意したいこととして、年末時点における同人誌やアクリルキーホルダーなど自作のグッズの数量、購入した数量および1個あたりの購入単価は必ずエクセルやスプレッドシートに記録しておくようにしておきましょう。

税務調査で必ずチェックされるポイントであり、かつ調査官も棚卸資産の部分は暗号資産・NFTの税務よりも経験豊富であるため、適当にやっていると必ず指摘されます。

その年の経費として計上が可能なのは売上に対応する経費です。つまり、売れなかった同人誌やグッズの購入費用はその年の経費に入れてはいけません。そのため、売れた同人誌に対する購入費用のみを経費計上するようにしてください。

例えば、以下のケースがあったと仮定します。

200,000円で同人誌を500冊(1冊あたりの単価400円)制作した。それを2025年のイベントにおいて1冊2,000円で販売したところ400冊が売れた。年末時点で同人誌は100冊在庫として残っている。

上記の場合、同人誌制作費用の20万円をすべて経費に入れることはできません。

20万円のうち、販売できた400冊分相当の制作費用のみが経費計上可能です。

具体的には、

200,000円(制作費用全額)÷500冊(制作数)×400冊(販売数)=160,000円(経費計上可能額)

ということになります。残額(在庫)の40,000円は棚卸資産として資産計上します。

これを制作したグッズごとに計算することになります。
なお、前年の在庫がある場合も、前年に引き続き同じ様に今年売れた数に応じて経費計上を行ってください。

まとめ

NFTクリエイターの皆様が確定申告を円滑に進められるよう、暗号資産・NFT取引で特に迷いやすい10の事例について、具体的な税務上の処理と実務上の留意点を解説いたしました。

暗号資産やNFTの損益計算は複雑に感じられるかもしれませんが、取引の区分や計上タイミング、消費税の取り扱いといった基本を押さえることが重要です。また、期末の暗号資産保有状況や、同人誌等の棚卸資産の記録・管理は、税務調査で必ずチェックされるポイントですので、念入りにご準備ください。

この記事が、皆様の適正な確定申告の一助となれば幸いです。

執筆者プロフィール
  • カオーリア会計事務所 代表税理士 藤本剛平 
  • 暗号資産・NFT専門税理士として個人から大企業まで様々な税務・損益計算の対応実績を有する。税理士向け専門誌「税務弘報」にて税務記事を多数掲載。取引所・税理士向けセミナー実績多数。著書(共著)「事例でわかる!NFT・暗号資産の税務」(中央経済社)
  • https://kaoria-tax.com/

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