
金融庁、暗号資産105銘柄に金商法適用の方針
2025年11月16日、金融庁が暗号資産(仮想通貨)を金融商品取引法(金商法)の対象とする方針を固めたことが明らかになりました。
朝日新聞によると、国内の暗号資産交換業者が取り扱うビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)を含む計105銘柄が規制対象となり、情報開示義務やインサイダー取引規制が適用される方向だといいます。
金融庁は、これらの内容を盛り込んだ金商法改正案を2026年の通常国会に提出することを目指しているとみられます。
今回の報道は国内の事業者や投資家に大きな衝撃を与え、SNS上でも規制強化や税制変更の是非を巡る議論を呼んでいます。
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暗号資産105銘柄に金融商品法制の網、業界に波紋
規制対象の銘柄と既存ルールの課題
金融庁が暗号資産を金商法の枠組みに組み込む方針を示した背景には、暗号資産市場の拡大に伴う投資家保護の強化があります。
日本暗号資産取引業協会(JVCEA)のデータによれば、国内の第一種会員(通常の暗号資産交換業者)が取り扱う暗号資産は119種類にのぼります。
今回金融庁が示した「105銘柄」は、119種類のうち優先的に規制対象として位置づけられる銘柄を指すとみられています。
対象となる105銘柄には主要な暗号資産の多くが含まれており、現行の自主規制では十分とは言えない情報開示や取引ルールの整備が課題とされていました。
情報開示義務とインサイダー取引規制の導入方針
金融庁は暗号資産への金商法適用に向け、具体策として以下のものを挙げています。
- 発行主体の有無やプロジェクトの性質に関する情報開示
- 利用しているブロックチェーン技術の特徴やリスクの明示
- 取引所での上場・廃止やプロジェクト破綻など重要事実に関するインサイダー取引規制
これらの規制が導入されることで、投資家は株式市場と同様に定期的な情報開示を受けられるようになり、内部情報を悪用した不正取引も防止される見通しです。
金融庁はすでに7月以降の金融審議会ワーキンググループでこれらの論点を議論しており、今回の報道内容はその議論の方向性を裏付けるものとなっています。
金商法適用による投資家保護の効果
金商法適用による最大の利点は、投資家保護と市場の信頼性向上にあるとされています。
発行体やプロジェクト情報が開示されることで、投資家は各銘柄の事業内容やリスクをより正確に把握できるようになります。
インサイダー取引規制が導入されれば、上場前の極端な値動きや関係者による不公正な売買行為が抑制され、公平な市場参加が期待されています。
また税制面でのメリットとして、現在、暗号資産の売却益は雑所得として総合課税され、所得額に応じて最大55%の税率が課されています。
これが金融商品扱いとなれば、株式と同様の申告分離課税(税率20%程度)が適用され、個人投資家の税負担は大幅に軽減される見込みです。
実際、この税率引き下げは業界団体や投資家が長年要望してきた内容で、日本ブロックチェーン協会(JBA)の調査でも税率が20%となった場合、84%の保有者が「投資額を増やしたい」と回答しています。
税制が株式並みに整備されれば、将来的に損失繰越控除(最大3年間)など株式投資と同等の優遇措置も見込まれ、投資環境の改善につながるとの声もあります。
過度な法規制が新興プロジェクトに壁、業界が危機感
一方で、暗号資産を金商法の厳格な規制下に置くことによる弊害も指摘されています。
金融審議会の有識者からは「規制案が重厚すぎる」との意見が出ており、実際に国内交換業者の約9割が赤字経営という現状で追加のコスト負担に耐えられないとの懸念も示されています。
加えて、過度な規制は新規プロジェクトの参入障壁となり、市場の萎縮につながる恐れがあります。また金融商品に該当しない暗号資産やDeFi(分散型金融)が取り残され、イノベーションが海外に流出する可能性も指摘されています。
実際、コミュニティからは「こんな規制では日本の暗号資産業界は完全に終わってしまう」といった厳しい声も上がっており、規制強化と市場育成のバランスが重要課題となっています。
ただし金融庁は「事業者・利用者双方の声を踏まえたバランスの取れた制度設計」を目指す姿勢も示しており、今後の議論でどこまで柔軟性を持たせるかが注目されています。
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暗号資産の金融商品化と税制改革の行方
税制改正要望に暗号資産課税見直しを明記
今回の金融庁による暗号資産の金融商品化方針は、規制面だけでなく税制面にも影響を及ぼす重要な転換点とされています。
こうした制度改革の動きと並行して、金融庁は8月に2026年度税制改正要望で暗号資産取引の申告分離課税の導入を明記するなど、税制の見直しも前進しています。
この提案を受け、与党の税制調査会でも今年12月に本格議論が行われ、金商法改正と並行して制度設計が進む見込みです。
議論の中では、現行の最大55%という高い税率をおよそ20%へ引き下げる案が軸となっており、損失繰越といった株式並みの優遇措置も検討されています。
制度整備への期待と慎重な見方の交錯
仮にこれらの改革が実現すれば、個人投資家にとっては大幅な負担軽減となり、市場参入意欲の向上が期待されます。
こうした制度整備が進むことについて、国内投資家の間では期待が高まっていますが、一方で「減税が実施されるのは2026年以降ではないか」という慎重な見方もあります。
こうした賛否がある中でも、日本政府は投資家保護と市場育成の両立を掲げ、法規制と税制改革の双方で具体的な制度づくりを進めています。その動向は今後も国内外から大きな注目を集めるとみられます。
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Source:朝日新聞
サムネイル:AIによる生成画像






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