2025年10月のNFT市場は、9月の下落から再び反発を見せました。CryptoSlamのデータによると、月間取引高は約6億3,000万ドルを記録し、9月の約5億5,600万ドルから13%以上増加しています。
特筆すべきは、取引件数が約671万件と前月から微減する中で取引高が増加した点です。これは市場における平均取引単価が上昇に転じたことを示唆しており、イーサリアム基盤の主要コレクションなどで大口取引が復調したことが背景にあります。一方で、ユーザー数ではレイヤー2のBaseチェーンが依然として他を圧倒しており、市場は「取引高で圧倒するイーサリアム」と「ユーザー数で郡を抜くBase」という二極化が進みつつあります。
本レポートでは、NFT市場の全体動向と内部の構造変化を、チェーン別・マーケットプレイス別・主要コレクション別に分解し、国内の動きも交えながら多角的に整理していきます。
- 月間取引高は約6億3,000万ドルと前月比13%増
- イーサリアムの取引高が約3.2億ドルと復調、市場シェア69%を維持
- Baseがユーザー数38万人(シェア57%)で独走
- OpenSeaが取引高シェア60%、ユーザーシェア83%と一強体制を強める
- OpenSeaの取引高26億ドルのうち90%以上が「トークン取引」で占める
- Pudgy Penguinsの取引高が前月比180%増、CryptoPunksやBAYCを上回る
- 国内ではJPYCが正式発行、大手IPと連携したNFTを意識させない実用例が加速
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市場概要
2025年10月のNFT市場は、暗号資産市場全体が逆風にさらされる一方で、独自の反発力を見せました。

Binance Researchで「レッド・オクトーバー」と評されているように、10月の暗号資産市場全体の時価総額は約6.1%減少しました。これは、米国政府の閉鎖に対する懸念や、FRB(連邦準備制度理事会)の利下げペースに対する慎重な見方が広がったことによるものです。
しかし、こうした厳しいマクロ環境にもかかわらず、NFT市場の月間取引高は約6億3,000万ドルに達し、前月から13%以上の成長を記録しました。先月ローンチされたHypurrの続伸やPudgy Penguins、Crypto PunksをはじめするブルーチップNFTの復活、そしてDX Terminalの成長などが主な要因に挙げられます。
また、DappRadarのレポートによれば、10月のNFT販売件数は1,010万件を突破し、2025年で最も活発な月となりました。

従来のコレクティブルに加えて、DX TerminalやCourtyardなどに代表されるDeFi・RWA領域と統合したNFTの利用が拡大したことを示唆しており、市場の裾野が着実に広がっている証左と言えるでしょう。
チェーン別動向
10月のチェーン別動向は、イーサリアムの復調とBaseチェーンの独走という、市場の二極化がより鮮明になった一ヶ月でした。
イーサリアムは月間取引高で約3億1,870万ドルを記録し、市場全体の約69%という圧倒的なシェアで首位を堅持。9月の調整局面から取引が活発化しており、高額なブルーチップNFTを中心に資金が回帰した様子がうかがえます。


一方で、Baseは取引高で約9,130万ドル(シェア約20%)を記録し、SolanaやBitcoinを抑えて2位の座を築きました。特筆すべきは、ユーザー数で38万人以上(シェア約57%)がBaseを利用している点で、市場参加者の過半数が集まる最も活発な経済圏となっています。
この背景には、コインベースエコシステムとの統合による圧倒的なアクセスの容易さがあります。外部ウォレットを必要としないシームレスな体験と、低コストな取引環境が、新規ユーザーや投機的なトレーダーを大量に呼び込み、独自の巨大な文化圏を形成しつつあるのです。
マーケットプレイス別動向
10月のマーケットプレイス市場は、OpenSeaが一強体制をさらに盤石なものにしました。月間取引高は約2.8億ドルで市場シェアの約60%を握り、ユーザー数に至っては約45.5万人でシェア83%と、他の追随を許さない圧倒的な支持を集めている状況です。

これを支えているのが、Baseチェーンにおける絶対的な優位性です。Base上のNFT取引の約89%がOpenSeaを経由しており、活発なBaseのエコシステムを取り込むことに成功しています。

さらに同社は、CEOのデビン・フィンザーCEOが「NFTマーケットプレイスから、すべてを取引できる場所へ」と宣言したように、あらゆる暗号資産を集約するアグリゲーターへの転換を急速に進めています。
実際に、10月前半だけで暗号資産の取引高が16億ドルに達し、NFTの取引高(2.3億ドル)を大きく上回るなど、その成果はすでに数字に表れ始めています。

一方で、ユーザー獲得のエンジンとなっている報酬プログラム「Wave」には課題も残ります。事前の詳細告知なく「Wave 2」へ移行したことや、トークン生成イベント(TGE)の延期に対し、コミュニティからは不満の声も上がっています。
OpenSeaは、NFT市場の低迷を乗り越えるべく、アグリゲーターとしての再開発と独自の経済圏構築という二つの大きな賭けに出ており、その成否が市場全体の今後を左右するという声も少なくありません。
Blurは取引高で約9,340万ドル(シェア約20%)と2位を維持したものの、ユーザー数は約8,700人(シェア1.6%)に留まりました。市場の関心が特定の高額コレクションから、より広範な低価格帯のNFTへとシフトする中で、その影響を最も強く受けていると言えるでしょう。

3位のMagic Edenは、SolanaやBitcoinでの強みを活かしつつ、取引高で約8.3%、ユーザー数で10%のシェアを確保し、マルチチェーンプラットフォームとしての存在感を示し続けています。
主要NFTコレクションの動向
10月のコレクション動向は、9月のRWA・ゲームNFT主導のトレンドから一変し、ブルーチップNFTがランキング上位を賑わせる活発な展開となりました。
OpenSeaの月間取引高ランキングでは、9月末にローンチされたHyperliquidの記念NFT「Hypurr」が、その熱狂を維持し約8,720万ドルを記録して首位に立ちました。

続く2位には、BaseチェーンのAIゲームプロジェクト「DX Terminal」のNFTが取引高約4,040万ドルでランクイン。前月の約1,930万ドルからさらに倍増する驚異的な成長を見せ、Baseエコシステムの顔としての地位を確立しました。
そして特筆すべきは、Pudgy Penguinsの躍進です。月間取引高は約3,810万ドルを記録し、前月比で約180%増と急成長。CryptoPunksやBAYCなどを取引高で上回り、トップ3入りを果たしました。
10月は、強力なコミュニティを持つ新興プロジェクトの台頭と、実業を伴う有力IPの復権が同時に起こり、市場の関心がより多様な価値へと広がっていることを示しています。
国内のNFT市場動向
2025年10月は、日本初となる円建てステーブルコイン「JPYC」が正式に発行開始されたことで大きな話題となりました。これにより、Web3に対する世間の関心が高まっただけでなく、NFT・暗号資産を実経済と結びつけるインフラが整い始めています。
また、これまで同様にかつて市場を賑わせたPFP系コレクションの取引は沈静化する一方で、ゲーム系NFTもしくは実需寄りのプロジェクトが賑わいを見せています。
カルビーとSNPITのコラボや、進撃の巨人のデジタルコレクション販売は、既存の強力なIPとNFTをシームレスに結びつける事例です。また、「SOBA NFT Plat」のようなウォレット不要・コンビニ決済対応のプラットフォーは、ユーザーがWeb3を意識せずにNFTに触れられる環境を整備しています。
さらに、大阪・関西万博の公式NFT「ミャクーン!」が、単一イベントでのNFT発行枚数としてギネス世界記録に認定されました。発行数が1,000万枚に迫るこの動きは、NFTが国家的なイベントで大規模な記念品として活用される象徴的な事例となっています。
2025年10月のNFTニュース5選
ここでは、2025年10月に話題になったNFT系ニュースの中から、特にインパクトのあったものを5つに厳選してご紹介します。
- トークン・NFTを獲得できるクレジットカード「SyFu Card」発行
- 千葉市動物公園NFTコレクションで、動物の3D・NFTデータの販売開始
- 新作MMORPG「Legend of YMIR」、正式サービス開始!
- 『甲虫王者ムシキング』とMUSHIを活用したブロックチェーンゲームを開発中
- 訪日外国人観光客の誘客拡大に向けて、NFTを活用した観光DXプロジェクト開始
各ニュースの概要を見ていきましょう。
トークン・NFTを獲得できるクレジットカード「SyFu Card」発行

決済データをデジタル資産化するWeb3アプリ「SyFu」を運営するGINKANは、エポスカードと提携し、Visaブランドのクレジットカード「SyFu Card」の発行を発表しました。
日常のカード決済に応じてトークンやNFTを獲得できるWeb3ロイヤルティプログラムを搭載し、GameFiと現実の決済体験を融合させる取り組みとして注目されます。
詳しくはこちら▼
【SyFu×エポスカード】トークン・NFTを獲得できるクレジットカード「SyFu Card」発行
千葉市動物公園NFTコレクションで、動物の3D・NFTデータの販売開始

パシフィックコンサルタンツは、千葉市動物公園と連携し、園内の動物を3Dスキャンした高精細な「3D・NFTデータ」の販売を特設サイトで開始しました。
売上の一部は動物公園の運営に活用されます。
NFT購入者には、抽選で「飼育員による解説付きバックヤード見学ツアー」が当たる特典も用意されており、地方自治体が運営する施設の新たな資金調達とファンエンゲージメントの手法として注目されます。
詳しくはこちら▼
【地域資源の3D・NFT事業】千葉市動物公園NFTコレクションで、動物の3D・NFTデータの販売開始
新作MMORPG「Legend of YMIR」、正式サービス開始!

WEMADEは10月28日、Unreal Engine5を採用した大型MMORPG『レジェンド・オブ・ユミル』のグローバル向け正式サービスを開始しました。
サービス初期は主要地域含む全30サーバーで展開され、日本ユーザーが快適にプレイできる環境として「TOKYOサーバー」も同時オープン。
本作はPCとモバイルのクロスプレイに対応し、WEMADEのブロックチェーンエコシステム「WEMIX PLAY」を基盤としたP&E(Play and Earn)体験を提供します。
詳しくはこちら▼
新作MMORPG「Legend of YMIR(レジェンド・オブ・ユミル)」、正式サービス開始!
『甲虫王者ムシキング』とMUSHIを活用したブロックチェーンゲームを開発中

株式会社Kyuzanは、セガからライセンス許諾を受け、伝説的なキッズカードゲーム『甲虫王者ムシキング』を題材としたブロックチェーンゲームの開発を発表しました。
本作はOasysチェーンのミームコイン「MUSHI」の初のユーティリティとして、期間限定のカードバトルゲームとしてリリースされました。
国民的な人気IPとWeb3ネイティブのミームコインが融合する新たな試みとして、大きな話題となっています。
詳しくはこちら▼
Kyuzan、『甲虫王者ムシキング』とMUSHIを活用したブロックチェーンゲームを開発中
訪日外国人観光客の誘客拡大に向けて、NFTを活用した観光DXプロジェクト開始

JTB、戸田建設、富士通の3社は、福井県越前市を舞台に、訪日外国人観光客向けの観光DXプロジェクト「ECHIZEN クエスト」の実証実験を発表しました。
参加者は伝統工芸などの体験を通じて、越前市ゆかりの紫式部が描かれたNFTを取得できます。
大手企業が連携し、インバウンド観光と地方創生にNFTを活用するモデルケースとして期待されます。
詳しくはこちら▼
訪日外国人観光客の誘客拡大に向けて、NFTを活用した観光DXプロジェクト開始
まとめ
2025年10月のNFT市場は、取引高が約6億3,000万ドルへと前月比13%増となり、9月の調整局面から反発する形になりました。市場の中身としては、高額なブルーチップが復調したイーサリアムと、AIゲームに牽引されユーザー数で独走するBaseという二極化がより鮮明になっています。
コレクション別では、9月末に登場したHypurrが熱狂を維持し首位を獲得、さらにPudgy PenguinsがIP戦略の成功で取引高180%増と急伸しました。国内でも、日本円ステーブルコイン「JPYC」の正式発行や、大手IP・自治体によるNFTを意識させない実用例が加速しています。
10月は、投機的な側面だけでなく、実用性やブランド価値が再評価される月だったと言えるでしょう。
過去の市場レポートはこちらから
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参照元:NFT Media

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