金融庁、ビットコインETF派生CFDに警鐘「望ましくない」国内での提供に牽制

金融庁、暗号資産ETFのCFD提供に否定的見解

2025年10月31日、金融庁が発表した「金融商品取引業等に関するQ&A」の改訂で、海外で組成された暗号資産ETFを原資産とするデリバティブ商品の国内提供について「望ましくない」との見解を示しました。

ビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)を組み入れた海外ETFを原資産とする差金決済取引(CFD)は、実質的に暗号資産価格に連動する金融商品とみなされています。

このため、金融庁は国内で暗号資産ETF自体の組成・販売が認められていない現状を踏まえ、投資者保護の観点からこうしたデリバティブ商品の取扱いは望ましくないと判断しています。

同Q&Aでは、当該取引が金融商品取引法上の「暗号資産関連デリバティブ取引」(金商法第29条の2第1項第9号)に該当するとしたうえで、たとえ金融商品取引業の登録を受けていても提供は望ましくないとの立場が明示されています。

暗号資産ETFベースCFDに「望ましくない」金融庁が懸念示す

ETF経由のCFDも暗号資産と同視

金融庁のQ&A追加回答(問6)では、まず暗号資産ETFを原資産とするCFDは暗号資産デリバティブ取引に該当することが示されています。

例えば海外で設定されたビットコインETFは、その基準価額(NAV)がビットコイン現物価格と連動するため、そのETFを使ったCFD取引は実質的にビットコイン価格に連動します。

そのため、法律上は暗号資産の価格指標を用いるデリバティブ取引と見なされ、金融商品取引法(金商法)の規制対象となります。

具体的には、改正金商法で追加された第29条の2第1項第9号に基づき、暗号資産(または金融指標)に係る店頭デリバティブ取引を行うには内閣総理大臣への登録が必要です。

この条項は2019年の法改正で導入されたもので、暗号資産CFDや先物取引を取り扱う事業者は「第一種金融商品取引業者」としての登録が義務付けられています。

国内未承認ETF起点のCFD提供に懸念

ただし、記事執筆時点で日本国内では暗号資産ETFそのものが承認されておらず、投資家がこうしたETFに直接投資する環境は整っていません。

金融庁は、このような状況下で海外ETFを基にしたCFDを提供することは、制度的な整備が不十分なままでの提供となり、投資者保護の観点から問題があると指摘しています。

実際、同Q&A回答では「いずれにしても望ましくない」と明記されており、登録事業者であっても取り扱いは控えるべきだとする強い姿勢が示されています。

これは行政指導的な表現ではありますが、事実上の提供禁止に近いメッセージと受け止められます。

IG証券のCFD提供が引き起こした議論

今回の金融庁見解は、実際に日本国内でこうした商品が登場したことを受けたものとみられます。

英国系オンライン証券のIG証券は9月30日、米資産運用大手ブラックロックが運用するビットコイン現物ETF「iシェアーズ・ビットコイン・トラストETF(IBIT)」およびイーサリアム現物ETF「iシェアーズ・イーサリアム・トラストETF(ETHA)」を原資産とするCFD取引の提供を日本で開始しました。

これは日本初の試みで、両ETFがNASDAQ上場の商品である点を踏まえ「ETFを原資産とするため申告分離課税(税率20%)が適用可能ではないか」との見方から大きな話題を呼びました。

暗号資産CFDの課税区分に揺れる解釈

この税制上の扱いについては明確な基準がなく、不確実性が残っています。

現行の国税庁FAQでは暗号資産の証拠金取引(レバレッジ取引)は分離課税の対象外とされていますが、一方で「原資産が上場ETFなら分離課税適用可能」との専門家見解も一部にあり、解釈が割れています。

仮に総合課税(雑所得)とみなされれば最大約55%もの税率が課され、損益通算も不可となるため、投資家にとっては極めて不利なものです。

金融庁がこの時点で「望ましくない」と明言したのは、こうした税制面の不透明さも踏まえ、制度整備が整っていない段階で安易に商品を提供すべきではないとの警鐘とみられます。

今回の金融庁の発表後には、形式はETFでも実質はビットコインCFDであり、過去の類似事例では当局見解公表後に取引停止に至ったケースがあることから、IG証券のETF-CFD提供停止リスクが高まったとの見方が出ています。

規制に揺れる国内暗号資産ETF市場

今回の金融庁によるQ&A改訂は、暗号資産デリバティブ取引に対する当局の基本姿勢をあらためて明確に示したものです。

日本では2019年改正の金商法施行以降、暗号資産の証拠金取引に対してレバレッジ倍率2倍までの自主規制が導入されるなど、投機的リスクを抑えるための措置が段階的に整えられてきました。

無登録業者によるデリバティブ取引の勧誘への警告も相次いでおり、当局は一貫して慎重な監督姿勢を維持しています。

こうした流れの中で、金融庁は暗号資産ETFについても依然として慎重な立場を崩しておらず「まずは税制や投資家保護の体制整備が優先」との方針を明確に示しました。

一方で、国内では現物ビットコインETF解禁に向けた制度設計の議論も徐々に進みつつあり、金融庁も2026年度税制改正要望で「暗号資産取引の分離課税導入」や「暗号資産ETF組成の検討」を正式に掲げています。

海外では仮想通貨ETFの市場拡大が進むなか、日本では依然として慎重な姿勢が続いており、制度面で大きく出遅れています。今後の政策判断が国際的な投資環境との整合性をどのように図るのかが注目されます。

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Source:金融庁発表資料
サムネイル:AIによる生成画像

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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