
パクソス、技術的ミスでPYUSDを300兆ドル誤発行
米ニューヨークを拠点とするPaxos(パクソス)は2025年10月16日、イーサリアム(ETH)上で誤って約300兆ドル(約4京5,000兆円)相当の自社ステーブルコイン「PayPal USD(PYUSD)」を発行し、直後にその全額をバーン(焼却)したと明らかにしました。
パクソスは公式X(旧Twitter)で「今回の誤発行は社内の転送処理中に発生した技術的ミスであり、セキュリティ侵害ではない」と説明しています。
また、過剰発行されたPYUSDはすべて焼却されたため、供給量に実質的な変化はなく、ユーザー資産への影響もないとしています。
At 3:12 PM EST, Paxos mistakenly minted excess PYUSD as part of an internal transfer. Paxos immediately identified the error and burned the excess PYUSD.
This was an internal technical error. There is no security breach. Customer funds are safe. We have addressed the root…
— Paxos (@Paxos) October 15, 2025
現地時間3月12日午後3時12分、当社内部の資金移動の過程で、PYUSDが誤って過剰に発行される事象が発生しました。当社は直ちにこの誤りを確認し、過剰に発行されたPYUSDをバーンしました。
今回の件はあくまで内部の技術的なミスによるものであり、セキュリティ侵害ではありません。ユーザーの資金は安全です。根本原因についてもすでに対処済みです。
この前例のない300兆ドル規模の誤発行は市場に一時的な混乱をもたらし、分散型金融(DeFi)プラットフォームのAave(アーヴ)はリスク回避のため、PYUSD市場を一時的に凍結しました。
ブロックチェーン関連企業Chaos Labs(カオスラボ)のオマー・ゴールドバーグCEOは「PYUSDの裏付け資産は引き続き100%米ドルで保全されている」と強調しており、ステーブルコインとしての信頼性が維持されていることを確認しています。
ステーブルコイン「PYUSD」が急成長
PYUSDの300兆ドル誤発行が浮き彫りにした課題と教訓
世界GDPの2倍超のPYUSDが一時的に誤って発行
パクソスは日本時間2025年10月16日、今回の誤発行を検知し、公式X(旧Twitter)で即座に状況を報告しました。
誤って発行された「300兆ドル」は、IMF(国際通貨基金)が発表している世界の年間GDPの約2.5倍の金額であり、世界中の米ドル紙幣の流通量の約125倍に相当します。
パクソスが短時間で全額を焼却したことで市場への直接的な影響は避けられましたが、このような巨額の誤操作が発生した事実はコミュニティに衝撃を与えました。
Aaveが一時凍結で迅速対応、影響を最小化
Aaveを運営する開発チームのBGD Labsは、今回の超過発行について「明らかにオペレーション上のミスであり、プロトコルの安全性に問題はない」との見解をガバナンスフォーラムで示しています。
この対応策として、Aave上のPYUSDマーケットは一時的に凍結されましたが、状況の確認が取れ次第、通常運用へ戻る見込みです。
パクソスの迅速な報告に加え、Aave側でも即座にリスク管理措置が講じられた結果、幸い大きな被害や混乱は発生しませんでした。
透明性と集中管理に揺れる分散化議論
今回の騒動に対し、仮想通貨コミュニティでは「新人スタッフの誤操作(いわゆるファットフィンガー)だろう」といった冗談が飛び交う一方で、単一企業が数百兆ドル規模のステーブルコインを自由に増減できてしまう現状への懸念も示されています。
PYUSDは毎月の準備金レポート公開や第三者によるアテステーション(残高検証)を受けるなど透明性に配慮しているものの、今回の一件は「透明性の確保が必ずしも発行管理の分散化を意味しないことを浮き彫りにした」と指摘されています。
裏付け資産が十分あったことで、価値への直接的な影響は避けられましたが、ステーブルコイン発行の管理体制について改めて議論を呼ぶ結果となりました。
「PYUSD」ソラナ上でも利用可能に
法整備と金融連携が進めるステーブルコインの拡大
SEC「PYUSDに法的問題なし」
今回のPYUSD誤発行騒動は、ステーブルコインの安全性や管理体制に対する課題を露呈しましたが、同時に業界全体では透明性確保と規制整備の動きが進んでいます。
米国では2月、SEC(米証券取引委員会)がPYUSDに関する15カ月に及ぶ調査を終了し、違反などはなかったとして法的措置を取らない判断を示しました。
PayPalはこの調査結果を4月の四半期報告で明らかにしており、規制面での不確実性を解消しています。
PayPalとVisaが進めるステーブルコイン実用化と普及促進
こうした規制面の整備を背景に、民間でのステーブルコイン活用の拡大も加速しています。
PayPalは2025年4月に米大手取引所のCoinbase(コインベース)との提携強化を発表し、PYUSDの売買・送金時の手数料を期間限定で免除するなど普及促進策を打ち出しました。
また、決済大手Visa(ビザ)も8月に、PYUSDやUSDC、EURC(ユーロ連動型コイン)など複数のステーブルコインを自社決済ネットワークに統合すると公式発表しており、主流金融機関による受け入れが着実に進んでいます。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=150.63 円)
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Source:Paxos公式X
サムネイル:AIによる生成画像







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