
暗号資産もインサイダー規制対象に、課徴金制度導入へ
2025年10月15日、金融庁が暗号資産(仮想通貨)取引において未公開の内部情報を利用した売買を禁止し、違反者に課徴金を科す規制を導入する方針を固めたことが明らかになりました。
日本経済新聞によると、この規制は金融商品取引法(金商法)の改正案に明記される見通しで、暗号資産取引にも株式と同様のインサイダー取引規制が適用される見込みです。
改正案は2026年の通常国会に提出される予定で、成立すれば違反行為に対して課徴金(経済的制裁金)が科されることになります。
この改正に加え、金融庁は年内にも専門の作業部会で詳細な制度設計を議論し、証券取引等監視委員会による監視体制の整備を進める方針です。
これまで、暗号資産取引における不公正行為の監視は、主に暗号資産交換業者や日本暗号資産取引業協会(JVCEA)の自主ルールに依存してきました。しかし、取引データの監視体制が十分でないとの指摘もありました。
こうした背景から、金融庁は証券取引等監視委員会によるモニタリングを導入し、市場の公正性を高めるとともに、暗号資産を安全な投資商品として位置付け、投資家保護を強化する狙いとみられています。
「暗号資産規制の金商法移行」を議論
金融庁のインサイダー取引規制で変わる日本の暗号資産市場
未公開情報の扱いとインサイダー規制の課題
報道によると、規制対象となる「未公開の重要情報」には暗号資産の取引所への新規上場計画やセキュリティ上の重大な脆弱性情報などが含まれる見通しです。
これらの未公開情報を利用した取引も、株式市場と同様に、一般に公表されていない価格に重大な影響を与える場合は禁止されることになります。
一方、暗号資産は発行主体が不明確なものも多く、価格に影響を与える「重要事実」の定義が難しいため、株式と比べて規制対象者(インサイダー)の特定が困難との指摘もあります。
1,200万口座突破の裏で高まる不正取引リスク
暗号資産市場の拡大に伴い、公正な取引環境の整備は急務となっていました。
実際、国内の暗号資産取引の口座数は増加の一途をたどり、金融庁の発表では国内稼働口座数が1,200万口座を超えるまでに拡大しています。
金融庁は、個人投資家の参入増加により内部者による不正利益獲得のリスクが高まっている状況を踏まえ、暗号資産を「決済手段」ではなく、実質的に株式などと同じ投資商品として位置付け、投資家保護の観点から規制を強化する方針です。
今回のインサイダー取引規制の導入は、暗号資産を金融商品の枠組みに組み込む一環とみられており、専門家からも「現状を踏まえれば、暗号資産市場の透明性を高め、投資家保護を強化するために不可欠な措置だ」と評価されています。
インサイダー取引で従業員を停職処分
暗号資産の制度改革が進展、日本の転換期を迎える
暗号資産を金商法で一元規制へ
今回報じられたインサイダー取引規制の導入方針は、日本における暗号資産規制全体の見直し作業の一環でもあります。
金融庁は2025年6月より金融審議会のワーキンググループ(WG)で暗号資産制度の包括的な議論を進めており、年内に報告書を取りまとめる予定です。
この報告書をもとに、2026年の通常国会で関連法改正案を提出し、2027年から新制度を施行する見通しとなっています。
9月開催の第2回WG会合でも暗号資産規制を資金決済法から金商法へ移行する方向性が確認されており、金融庁は「暗号資産は原則として金商法のみで規制するのが適当」との見解も示しています。
暗号資産仲介業のライセンス新設で市場健全化を促進
2025年に入り、暗号資産を取り巻く法制度の整備が加速しています。
6月には暗号資産に関する利用者保護策を盛り込んだ改正資金決済法が成立しており、新たに「暗号資産サービス仲介業」の創設や顧客資産の分別管理強化といったルールが導入されました。
これにより、取引所とユーザーを仲介する事業者には登録制のライセンス制度が設けられ、市場の健全な発展とイノベーション促進の両立を可能にする基盤整備が進んでいます。
今回報じられた金融庁による暗号資産のインサイダー取引規制は、日本が国際的な基準に沿った透明で信頼性の高い市場を目指すうえでの重要な転換点とされ、今後の制度改革の基礎を築くものとみられています。
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Source:日本経済新聞
サムネイル:AIによる生成画像





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