プログマ主催のDCCが報告書を公表。オンチェーン完結型STの実現に向け課題整理

トークン化MMFの国内導入に向け日本の法制度整備を呼びかけ

デジタルアセット発行・管理基盤「Progmat(プログマ)」提供のプログマ社が主催する「デジタルアセット共創コンソーシアム(DCC)」が、「オンチェーン完結型STワーキンググループ(WG)」の検討結果をまとめた報告書を10月2日に公表した。

同WGは「オンチェーンで完結するST(セキュリティトークン)─SC(ステーブルコイン)取引」の実現に向けて論点を整理することを目的とし、今回の報告書を踏まえ、今後は政府・当局や民間に対し、改正要望や個別案件化を含む新たなアクションを開始する方針だ。DCCは、商品化を検討中の事業者や専門家など315組織で構成されている。

報告書によれば、国内のセキュリティトークン(ST)市場は2025年9月時点で残高5,189億円超、発行累計額は2,628億円超、累計案件数は68件に達したという。発行の大半は不動産STが占め、次いで債権STが続く。また、2025年中には発行累計額3,411億円超に拡大する見込みだという。

日本ではSTの取り扱いに第一種金融商品取引業のライセンスが必要なため、既存の証券会社を通じたリテール向けオルタナ投資を中心に市場が発展してきたが、オンチェーン・エコシステムとの連携は限定的だという。

海外市場についても分析が示された。米国では、ブラックロック(BlackRock)が運用するMMFをセキュリタイズ(Securitize)がトークン化した「BUIDL」や、サークル(Circle)社傘下のハッシュノート(Hashnote)が発行する「USYC」など数十種類のトークン化MMFが流通し、総流通残高は72億ドル超と、前年同期比で約313%増加した。なおBUIDLは発行残高約21億ドルで首位に立っている。報告書では、既存の資産運用大手の参入に加え、パブリックチェーン上のマネーマーケットやステーブルコイン発行者との連携が進み、主要プレイヤーが明確化しつつある段階にあると指摘された。

トークン化MMFの利用価値

さらに報告書は、トークン化MMF(マネーマーケットファンド)の新たな利用価値にも触れた。安定的な価値保存手段としての機能に加え、クロスボーダー決済への応用や、スマートコントラクトによる利払いの高頻度化などを挙げ、米国の「GENIUS法」を踏まえたステーブルコインの裏付け資産としての活用や、オンチェーンDVP決済の実現を今後の重要な方向性として示した。

また報告書では、トークン化MMFを中心とするオンチェーン完結型STの導入によって、ブロックチェーン上の投資家層から資金を国債や預金といった安全資産を通じて吸収し、オンチェーン金融の存在感を高める効果が期待されると指摘されている。

一方で、国内における法制度上の課題として、WGは次の3点を挙げた。

第1に、トークン化MMFでは国債を扱うため、従来の不動産STで用いられる「特定受益証券発行信託(特定JS)」では対応できず、公社債投資信託の仕組みが必要である点。

第2に、投資信託の受益権譲渡に券面交付が求められる現行制度がオンチェーン完結を妨げており、償還・設定方式の活用や「トークン化法」による法改正が不可欠である点。

そして第3に、投資家がノンカストディアルウォレットを利用できるようにするには、マネーロンダリング防止や不正利用対策の観点から、ブラックリスト方式や移転停止措置など暗号資産交換業者(VASP)と同等の対応が必要とされる点だ。

WGは、短期的には現行制度の枠内で商品化を進める一方、中長期的にはオンチェーンでの権利移転を認めるための法整備が不可欠だと提言。報告書では、日本版トークン化MMFの商品化に向け、現行制度ではP2P型セカンダリー取引がライセンス要件などの制約を受けるため、「大券発行」、「譲渡時個別発行」、「償還・設定方式」の3つの法的オプションを提示した。

また投信法に基づく券面前提の撤廃、パーミッション型チェーンに対する規制調整、ステーブルコインとの連携による即時決済や税務上の明確化が求められている。さらに米国のGENIUS法を踏まえ、トークン化MMFをステーブルコインの裏付け資産として活用することで資金循環の効率化が期待されるとした。

なお日経新聞の報道によれば、日銀の利上げを背景に約9年ぶりに個人向けMMFが復活する見通しで、早ければ2026年前半に販売が再開される可能性があるという。報告書はこうした国内外の動きを踏まえ、トークン化MMFを活用することで高い透明性と利便性を備えた新たな投資商品の提供が期待されると総括している。

参考:報告書日経
画像:iStock/taa22

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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