
自由か規制か—Core v30リリース候補が招く議論
2025年9月中旬、Bitcoin Core開発チームは次期メジャーアップデート「Core v30.0」のリリース候補版(RC1)を公開しました。
リリース候補(RC)とは、正式リリースに先立ち、開発者やノード運営者が互換性や安定性を検証するための最終テスト段階のソフトウェアです。
RC1に深刻な不具合がなければ、正式版として採用され、2025年10月3日にリリースされる予定となっています。
今回のCore v30では、従来80バイトに制限されていたOP_RETURN出力の容量が大幅に緩和されます。1つのトランザクション内に複数の非支払いデータ(OP_RETURN出力)を含められるようになる見込みです。
この仕様変更をめぐり、開発者や関係者の間では意見が分かれています。自由な利用を支持する声がある一方、規制強化を求める声と真っ向から対立しています。
一部の開発者がOP_RETURN出力の使用に制限を設けるべきだと主張するのに対し、Adam Back(アダム・バック)氏らは「過度な検閲はビットコインの分散性を損なう」と警鐘を鳴らし、自由な利用を擁護しています。
これらの論争は、単なる仕様変更にとどまらず、Core v30の技術的変更がビットコインの分散性や利用自由度に影響を与える問題として注目を集めています。
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Core v30がもたらす技術的変更と新機能
OP_RETURN拡張で広がる新たな活用可能性
Core v30では、OP_RETURNを含むデータキャリア出力の扱いが根本的に見直されます。
GitHubのリリースノート案によると、「-datacarriersize」オプションのデフォルト値が100,000バイトに引き上げられ、事実上の容量上限が撤廃される見込みです。
さらに、1つのトランザクションに複数のOP_RETURN出力を含めることが可能となり、合計容量がデフォルト制限の対象となります。
従来のdatacarrierオプションは廃止される予定で、旧来の制限(80バイト)に戻すには明示的な指定が必要です。
この拡張により、大量のデータを扱いやすくなりますが、OP_RETURN出力はUTXOセットに残らない剪定可能データとして扱われるため、ノードへの恒久的な負荷は比較的軽いとされています。
Taproot資産化を含むCore v30の新機能
前述のOP_RETURN容量拡大に加え、v30ではTaprootの資産化(マルチアセット化)関連機能も実装される予定です。
開発者ドキュメントでは、これらの新機能が分散型市場の活性化を支援することを意図していると説明しています。
従来のBitcoin Coreでは、OP_RETURN出力は1取引あたり1出力・80バイトに制限されていましたが、v30ではこの制限が大幅に緩和される見込みです。
取引データで用いるOP_RETURNとは
OP_RETURNはビットコイン取引に用いられるスクリプト機能で、取引データに任意のメッセージを格納できます。
従来は1つのトランザクションにつき1出力・80バイトまでに制限されており、この制限により大量のデータ格納は事実上抑制されていました。
Ledger社CTOのシャルル・ギユメ氏は、休眠ウォレットへの送金数日前から特殊なOP_RETURNメッセージが書き込まれていたと明かしており、OP_RETURNを用いた所有権主張の事例として注目を集めました。
Core v30では、このルールが大幅に変更され、より柔軟なデータ利用が可能となる見込みです。
OP_RETURN容量撤廃が開く新たなユースケース
今回の見直しにより、デフォルトで大規模なデータを含むOP_RETURN出力がノードでリレーされ、複数の出力を含むトランザクションも許可されます。
仮想通貨ニュースメディアBitcoinistによれば、v30では複数のOP_RETURN出力を含む総容量の大きいトランザクションもリレー・マイニング対象となり、旧来の-datacarriersize設定は総容量の上限値に再設定されるとのことです。
この結果、OP_RETURN出力の上限は実質的に撤廃され、データキャリア機能が大幅に拡張されることになります。
「ビットコインは究極の準備通貨」
Bitcoin Core v30を巡る開発者間の「自由vs規制」対立
Core v30のOP_RETURN緩和を巡って、開発者や関係者の間で賛否が分かれています。
賛成派:自由な利用と技術的可能性の重視
賛成派は、OP_RETURNのような剪定可能領域に非金融データを集約することで、ウォレットや署名など取引の他の部分にデータを埋め込むよりも、システム全体への影響が小さくなると主張しています。
具体的には、OP_RETURNに限ってデータを扱う場合、ノードのUTXO負荷は増えないため、既存データ量の増加による影響は比較的軽減されると指摘されています。
BlockstreamのCEOであるAdam Back(アダム・バック)氏は、この立場を支持し「不完全なスパム対策よりもビットコインの分散性を優先すべきだ」と述べています。
反対派:検閲リスクと違法データの懸念
一方、反対派は、緩和されたルールにより大量かつ継続的なデータが消費者向けアプリで表示されやすくなり、違法データの存在を示す証拠が明確になりやすくなると警告しています。
Bitcoin Knotsの開発者で、ハンドルネーム「Dashjr」として知られるルーク・ダッシュジュニア氏は「非金融データはスパムだ」と述べ、データ書き込みを厳格にフィルタリングすべきだと主張しています。
さらに、Fractalの開発者でハンドルネーム「Leonidas(レオニダス)」として活動する人物も「ビットコインノード上でOrdinalsやRunesを検閲する意図がある」と指摘しています。
これに対して、インスクリプション支持者であるRedwing(レッドウィング)氏は「一度書き込まれたデータは削除できない」と反論し、既存データのフィルタリングは技術的に不可能だと強調しています。
これらの議論は、技術的・法的な観点からビットコインノード運用への影響を巡って、現在も活発に交わされています。
2030年までに脆弱化の恐れ
ビットコインの未来を左右するCore v30論争
Core v30のOP_RETURN緩和を巡る論争は、技術的な選択が単なる仕様変更にとどまらず、ビットコインの分散性や利用の自由度に直接影響することを浮き彫りにしています。
開発者や関係者の意見対立は激しいものの、その根底には「分散型通貨としての価値をいかに守りながら新たなユースケースを受け入れるか」という共通の課題があります。
10月3日に予定されている正式リリースに向けた検証期間で得られる知見は、ビットコインの健全な発展を見極める試金石となり、長期的な方向性を左右するとみられています。
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Source:Github「Core v30.0」RC1
サムネイル:AIによる生成画像





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