2025年8月のNFT市場は、7月の力強い回復から一転、Web3市場が夏枯れと呼ばれる活動の鈍化を見せる中で、月間取引高は約6億ドルと前月から微増に留まりました。暗号資産市場全体が調整局面に入る中、NFT市場もその影響を色濃く受けた形です。
しかし、市場全体の数字が横ばいであった裏では、トレンドの主役が大きく入れ替わっています。7月の市場回復を牽引したイーサリアム基盤のブルーチップNFTは取引高を軒並み落とし、代わりに実物資産に紐づくRWAコレクション「Courtyard」が市場全体の取引高でトップに躍り出ました。
本レポートでは、NFT市場の全体動向と内部の構造変化を、チェーン別・マーケットプレイス別・主要コレクション別に分解し、国内の動きも交えながら多角的に整理していきます。
- 月間取引高は約6億ドルと横ばい、市場は夏枯れ相場に
- Courtyardが取引高で再びNFTコレクションの首位に
- 7月に市場を牽引したブルーチップNFTは取引が沈静化
- 市場全体が停滞する中、ゲーム関連NFTは底堅く推移
- イーサリアムは取引高の優位性を維持するも、シェアは低下
- マーケットプレイス市場では依然としてOpenSeaが独走状態
- BaseチェーンのNFT取引高が急増
市場概要
2025年8月のNFT市場は、7月の力強い回復から一転、夏枯れ相場を迎えました。米国の生産者物価指数(PPI)が予想を上回るなどマクロ経済の不透明感を背景に、月間取引高は約6億ドル(前月比+4%)と横ばいに留まっています。

月間取引件数が減少する中で取引高が微増したのは、一点あたりの取引単価が上昇したことを示しており、市場の関心がどこへ向かったのかが今月の焦点です。
その中身を見ると、7月を牽引したブルーチップNFTの取引がやや落ち着きを見せ、代わりに実物資産に紐づくRWAコレクション「Courtyard」が市場全体の取引高でトップに躍り出ました。
市場の飽和感やデジタルコレクティブルの長期的な価値への懐疑的な見方が広がる中、投機的なPFPから、より具体的な価値を持つRWAへと関心と資金がシフトしたことが8月の大きな特徴です。
チェーン別動向
イーサリアムは月間取引高の約61%を占め首位を維持しましたが、7月の熱狂は落ち着きを見せ、売上は19.6%減少しました(DappRadar参照)。2位はCourtyard率いるポリゴンが維持しています。

そして、今月最も注目すべきはBaseの躍進です。クリエイターエコシステムの拡大を背景に取引高を急増させ、Solanaを上回りポリゴンに迫る第3位のチェーンへと成長しました。
この成長を牽引しているのが、Zoraのようなクリエイター向けプラットフォームです。Zoraでは7月以降だけで160万点以上のトークンがBase上で発行されており、低コストな取引環境が多くのクリエイターとユーザーを惹きつけています。

ユーザー数でもBaseは31.5万人と他を圧倒しており、単なるユーザー数の多さだけでなく、取引を伴う活発な経済圏へと急速に成熟していることを示しました。
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マーケットプレイス別動向
8月のマーケットプレイス市場は、OpenSeaが取引高で2.4億ドル(市場シェア45.9%)、ユーザー数で41.9万人(同74.0%)と、両指標で首位を維持しました。7月にBlurの猛追を受けたものの、8月はブルーチップNFTの取引が沈静化したことでBlurの勢いが鈍化し、OpenSeaが再び差を広げる結果となりました。

7月にイーサリアムの取引増でOpenSeaを上回ったBlurですが、8月の取引高は約1.4億ドルと7月からほぼ横ばいでした]。高額なPFPコレクションの取引に強みを持つ同プラットフォームは、市場の関心がRWAへと移った影響を直接受けた形です。
3位のMagic Edenは、SolanaとBitcoinで引き続き高いシェアを確保しています。収益面ではMagic EdenとOpenSeaが市場全体の9割以上を占めるなど、大手への寡占化がさらに進んでいます。
そして、特筆すべきはロイヤリティ収益です。OpenSeaは前月比140%超の増加となる360万ドルを記録し、長らく首位を維持してきたDew(120万ドル)に3倍の差をつけトップに立ちました。これは、OpenSeaが公式に独自トークン「$SEA」のローンチを示唆したことで、将来のエアドロップを期待したユーザーによる取引が活発化したことが一因と考えられます。
主要NFTコレクションの動向
8月のコレクション動向は、市場の主役が明確に入れ替わったことを示しました。実物資産(RWA)に紐づくPolygon基盤のCourtyardが、月間取引高で約6,177万ドル(前月比+15.87%)を記録し、7月のブルーチップ勢を抑えて市場全体のトップに立ちました。

対照的に、7月に市場を牽引したCryptoPunksの取引高は前月比で約23%減の約4,875万ドルに、Pudgy Penguinsも約30%減の約1,881万ドルとなるなど、主要なPFPコレクションは軒並み取引を落とす形となっています。
一方で、市場が停滞する中でも、スポーツ系NFTゲームのSorareやゲームアセットを扱うDMarketが再びトップ10にランクイン、加えてImmutableチェーン上の「Guilg of Guardians Heroes」と「Gods Unchained Cards」もそれぞれ取引高を伸ばすなどゲーム・スポーツ関連NFTの根強い需要を示しました。
夏枯れ相場の中、投機的な側面が強いPFPから、具体的な価値に裏付けられたRWAや、ユーティリティを持つゲーム・スポーツ系コレクションへと投資家の関心がシフトしたことが、今月のランキングから鮮明に読み取れます。
国内のNFT市場動向
8月の国内NFT市場は、主要コレクションの取引が落ち着きを見せる一方、グローバル市場のトレンドを反映した新たな動きが活発化した一ヶ月でした。
注目すべきは、海外のRWAトレンドが国内にも波及した点です。ポケモンカードをNFTを介して取引するサービス「PACKS」がNFTガチャ機能をリリースしたほか、「TCG STORE」が発行するトレーディングカードNFTも累計発行枚数を伸ばすなど、RWAとNFTを結びつけたプロジェクトが注目を集めました。
同時に、海外の有力なNFTプロジェクトによる日本市場への本格参入も加速しています。「Azuki」が飲料メーカー「チェリオ」とコラボしたデザイン缶を限定発売したり、「Pudgy Penguins」が全国のコンビニでコレクティブルフォトカードを展開するなど、NFTを起点としたIPがリアルな商品を介して日本の消費者にリーチする事例が相次ぎました。
これらの動きは、国内市場において投機的な取引から、実物資産との連携や、大手企業を巻き込んだビジネス活用へと、関心の軸足が明確に移っていることを示しています。
2025年8月のNFTニュース5選
ここでは、2025年8月に話題になったNFT系ニュースの中から、特にインパクトのあったものを5つに厳選してご紹介します。
- 東武トップツアーズ、「やまがた舞子プレミアムカードNFT」を発行
- Rakuten NFT、プロスポーツの公式チケットリセールにNFTチケットを導入
- 元素騎士オンライン×アフラックがコラボを発表
- メルカリとソニーグループ、NFTやデジタルコンテンツ普及促進に向けて基本合意を締結
- X-PLANET、人気ゲーム『パズルスカイガレオン』のNFTを販売開始
各ニュースの概要を見ていきましょう。
東武トップツアーズ、「やまがた舞子プレミアムカードNFT」を発行

東武トップツアーズは、チェリーランドさがえと日本のNFTマーケット「HEXA」を運営するメディアエクイティと連携し、山形の伝統芸能「やまがた舞子」を題材に、道の駅・寒河江チェリーランドで販売する銘菓「さくらんぼのたまご」にNFT特典を付与することを発表しました。
購入者は同梱のQRから全11種のいずれかを受け取り、土産購入を来訪証明や継続的な情報接点へ拡張する設計とし、観光のファン化を狙います。
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東武トップツアーズ、「やまがた舞子プレミアムカードNFT」を発行開始
Rakuten NFT、プロスポーツの公式チケットリセールにNFTチケットを導入

楽天グループが運営するNFTマーケットプレイス「Rakuten NFT」より、プロ野球「東北楽天ゴールデンイーグルス」とサッカー・明治安田J1リーグ「ヴィッセル神戸」の公式チケットリセールに「NFTチケット」を導入したことが発表されました。
ブロックチェーンで所有履歴の透明性を確保しつつ、出品者は自由な価格設定が可能になります。
対象は楽天が9月開催分以降のQR引取分、ヴィッセルは2025シーズンシートの一部試合で、安心安全な二次流通を促進します。
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Rakuten NFT、プロスポーツの公式チケットリセールにNFTチケットを導入
元素騎士オンライン×アフラックがコラボを発表

メタバース内「ツミタス」情報発信ブースのリニューアル記念として、元素騎士オンラインがアフラックとコラボキャンペーンを実施することを発表しました。
アンケート回答者に限定アイテムを配布し、保険ブランドとWeb3ゲームの接点を生活者体験に埋め込む設計です。
参加行動の可視化を通じて来場・回答の誘導効果を高めます。
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元素騎士オンライン×アフラックがコラボを発表
メルカリとソニーグループ、NFTやデジタルコンテンツ普及促進に向けて基本合意を締結

メルカリ、ソニーグループ、Sony Block Solutions Labsの3社は、NFT・デジタルコンテンツ普及に向け基本合意を締結しました。
Soneiumを用いたNFT販売を8月21日から開始し、第一弾として@JAM EXPO 2025連携のアイドル関連NFTを展開し。
大手同士の連携により、一般層への導線整備が進みます。
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メルカリとソニーグループ、NFTやデジタルコンテンツ普及促進に向けて基本合意を締結
X-PLANET、人気ゲーム『パズルスカイガレオン』のNFTを販売開始

Com2uSのWeb3マーケットプレイス「X-PLANET」が、『パズルスカイガレオン』のキャラクターNFT販売を開始しました。
XPLAチェーン上でミステリーボックス形式を採用し、入手したNFTはゲーム内でも利用可能です。
グローバル連携の初案件として、日本市場で“遊べるNFT”の浸透を図ります。
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X-PLANET、人気ゲーム『パズルスカイガレオン』のNFTを販売開始
まとめ
8月のNFT市場は、総量は横ばいながら主役が交代しました。
ブルーチップNFTの取引は落ち着き、Courtyardを筆頭にRWA・ゲーム関連のコレクションが上位を占める結果となりました。
チェーンではBaseがユーザー・取引を伸ばし、国内はAzukiやPudgyのリアル展開、トレカRWAやメルカリ×ソニー、Rakuten NFTの実装が進展しました。投機から実需・事業基盤への移行が鮮明です。
過去の市場レポートはこちらから
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参照元:NFT Media
鑑定済みトレカを裏付け資産としたRWA NFTを発行

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