金融×オンチェーン実装で“使えるWeb3”へ──Aptos LabsのRyan Zega氏にインタビュー

レイヤー1のAptosは、日本における実用性を軸に存在感を高めています。実際に、Aptosを基盤として構築されたEXPO2025デジタルウォレットでは、新規ユーザー50万人、取引440万件を達成しました。

ステーブルコイン決済やRWAのオンチェーン化、そしてWeb2の感覚に近い使いやすさで、一般層への浸透を狙います。

今回NFT Mediaは、Aptos LabsでStructured Finance責任者を務めるRyan Zega(ライアン・ゼガ)氏に、Aptosの日本戦略とエコシステム拡大の具体策を聞きました。

プロフィール
  • 氏名:Ryan Zega(ライアン・ゼガ)
  • 役職:Aptos Labs Head of Structured Finance(2024年〜)
  • 略歴:以前はブローカーディーラーのtZero(T0)で約5年間、事業開発シニアディレクターを務める。資金調達、トークン化、二次取引、RWA(不動産・ファンド等)に従事。Aptosでは金融商品のオンチェーン展開を統括し、機関/リテール双方の実装を推進。

日本市場で確証を得た「Expo Digital Wallet」の実用性

APTOS
引用:Aptos公式サイト

ーー日本市場をどのように位置づけていますか。

Ryan Zega氏:日本は最も重要な市場のひとつです。EXPO2025デジタルウォレットで新規ユーザー50万人、取引件数440万件という実績を出し、多くの一般ユーザーにも届く体験を実証できました。

現地ではAptos Japanのチームを中心に、HashPortや東宝の「Mofu Mofu」といったパートナーと連携しています。短期的には金融サービスに注力し、ステーブルコイン決済の拡大や、大手金融機関との連携によるプロダクトのオンチェーン化を最優先に進めています。

零細な実証に留まらず、一般消費者が日常的に使える領域まで踏み込むため、日本の大手企業グループともユースケース設計を進めているところです。

ーーより多くの人に使ってもらうため、どのような企業と組んでいますか?

Ryan Zega氏:日本の大手複合企業や大規模な顧客基盤を持つ金融機関と議論を重ね、広範なユーザーに響くユースケースを設計しています。他の地域でも、特定の金融機関のステーブルコイン決済を下支えしてきました。

日本でも同様に、強いローカルパートナーと組み、実需に結び付くプロダクトを展開したいと考えています。

Aptosが描く成長戦略とは

Ryan Zega氏

ーーAptosの戦略上、重点を置いているポイントはどこでしょう。

Ryan Zega氏:主に三つあります。

まず一つ目は資金移動です。複数のステーブルコインやマネーマーケットファンドの発行者と連携し、効率的な決済を実現しています。Aptos上ではUSDC、USDT、USDe、USDyがネイティブ発行され、フランクリン・テンプルトンのベンジーインベストメント(Benji Investments)やブラックロックのファンドといった機関投資家向けの商品にも関与しています。

次に二つ目はオンチェーンの純資産価値、いわゆるTVLの拡大です。RWAやプライベートクレジットを軸に、PACTによるマイクロファイナンス・ローンのオンチェーン発行など、実需ドリブンのストラクチャーを重視しています。流動性は常に“鶏卵問題”ですが、買い手・売り手の属性や市場設計を丁寧に積み上げることが鍵です。

最後がオンチェーンデータです。Jump Cryptoと分散型ファイルストレージ「Shelby」を共同開発しており、高TPS・低遅延・低コストというAptosの特性を生かし、Web2同等の使い勝手を狙います。あわせて、安全で持続可能なDeFiへのアクセス拡大も支援しており、最近は永久型DEX「Decibel」のスポンサーも務めています。

ーーRWAの実績と今後の展望はありますでしょうか。

Ryan Zega氏:AptosはRWA領域で上位チェーンと評価され、概ね7億ドル規模のTVLがあります。下支えするのがPACTのマイクロファイナンスや、機関投資家向けのファンド群です。日本でも規制やパートナーの準備状況を見ながら、機関向け商品の展開に関心があります。

規制と文化を踏まえた「日本型エコシステム」のつくり方

Ryan Zega氏

ーー規制面での課題と、乗り越え方を聞かせてください。

Ryan Zega氏:各国に独自のルールや解釈がありますが、これは日本も同様です。Aptos Japanの現地チームやパートナー企業と密に連携し、準拠・透明性・セキュリティを最優先に進めています。

現地に人がいること自体が大きな強みで、本社の幹部陣と連携しながら、法域のニュアンスに即した実装を進めます。

ーー文化・言語について、障壁を感じたことはありますか。

Ryan Zega氏:言語差などコミュニケーションの負荷はありますが、通訳や現地企業との協業で乗り越えられます。

例えば、WebXのようなイベントも、そうした課題を克服するための素晴らしいプラットフォームです。実際に多くの海外からの参加者に加え、ブロックチェーンやステーブルコインに強い関心を示しているSBIなど、日本の金融リーダーたちも参加しているのを目にしました。

Aptosは倫理と持続可能性を重視し、協働先と長期的に育つ解決策を共創していきます。

Moveと協調で拓く現実志向のWeb3

Aptos Move言語
引用:Medium

ーーAptosは、「Move」と呼ばれるプログラム言語によって構築されています。Move言語の採用と開発者支援は、どのように進めていますか。

Ryan Zega氏:Moveは資産安全性と表現力に優れた新しい言語です。採用を加速するために教材やドキュメントを整備し、必要に応じて共同開発(Co-build)でオンボーディングを支援しています。

Web3エコシステムには熱心なMove開発者が多く、創設期に関わったメンバーもAptosに関与しています。Web2との接続は定義が広いテーマですが、既存のパートナー・ツールや共同開発の枠組みで実用的な統合を前に進めています。

ーー他社との関係性は、どのように捉えていますか。

Ryan Zega氏:セキュリティトークンを扱う企業としてSecuritize、tZERO、Republicが挙げられますが、彼らはAptosにとって競争相手ではなく協力者です。SecuritizeはBlackRockのトークン化ファンドをマルチチェーンで扱っており、Aptosも対象チェーンとなり得ます。Republicが手がけるRWAトークン化も、将来的にAptos上で展開される可能性があります。

目的は勝敗ではなく、協調的にユースケースを広げ、現実で使われるソリューションを増やすことです。

ーー最後に、日本の企業・ビルダーへメッセージをお願いします。

Ryan Zega氏:Web2のように自然に使えるWeb3を、一緒に実現しましょう。Aptosは堅牢なインフラと実用志向のプロダクトで、金融(ステーブルコイン決済やRWA)とデータ基盤(Shelby)を中心に拡張していきます。

興味のある企業はAptos Japan、または私に直接ご連絡ください。現地チームとグローバルBDが連携し、制度順守とセキュリティ最優先で、現実で使われるソリューションの共創を支援します。

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