
ハイリキUSDHティッカー争奪戦、Native Marketsが勝利
2025年9月15日、分散型取引所Hyperliquid(ハイパーリキッド)で実施されたステーブルコイン「USDH」のティッカー選定投票の結果、Native Markets(ネイティブ・マーケッツ)がUSDHティッカーを獲得したことが明らかになりました。
今回のコミュニティ主導の投票は約1週間にわたる激戦となり、Paxos(パクソス)やFrax Finance(フラックス・ファイナンス)など複数の有力プロジェクトを退けて、最終的にネイティブ・マーケッツが勝利しています。
Native Markets has been awarded the USDH ticker on Hyperliquid.
Thank you to all HYPE stakers and network validators for their time and effort in reviewing the proposals put forward.
— max.hl (@fiege_max) September 14, 2025
ネイティブマーケッツは、Hyperliquidの「USDH」ティッカーを獲得しました。
ご提案内容の精査にご尽力いただいたHYPEステーカーの皆さま、ならびにネットワークバリデーターの皆さまに心より感謝申し上げます。
同社CEOのマックス・フィーゲ氏によると、近日中にイーサリアム上でERC-20規格のUSDHトークンを展開する予定で、その後USDHの初期発行テストフェーズに移行する計画です。
USDHはハイパーリキッド初の米ドル連動型ステーブルコインであり、同取引所のユーザーに安定した会計単位および担保オプションを提供することが期待されています。
分散型取引所「Hyperliquid」とは
ハイパーリキッド「USDH」を巡る競争と選定結果
ネイティブ・マーケッツが描く初期発行プロセス
ネイティブ・マーケッツの共同創設者でCEOを務めるフィーゲ氏は、USDH発行に向けたハイパーリキッド改善提案第1号(HIP-1)と対応するERC-20コントラクトを数日以内に公開する予定であることを明らかにしました。
同氏によると、まずは1回の取引当たり800ドル(約11万8,000円)を上限とする限定グループでのミント(発行)および償還テストを開始し、その後USDHとUSDCの現物取引板を開設した上で、ミント(発行)と償還の制限を撤廃する計画です。
We will be deploying both the USDH HIP-1 and corresponding ERC-20 within days.
We will then start with a testing phase for mints and redeems of up to $800/tx with an initial group, to be followed by the opening of the USDH/USDC spot order book as well as uncapped mints &…
— max.hl (@fiege_max) September 14, 2025
私たちは、数日以内にUSDHのHIP-1および対応するERC-20を展開する予定です。
その後、まずは限られたグループを対象に、1取引あたり最大800ドルまでのミントおよび償還のテストフェーズを開始します。続いて、USDH/USDCのスポット注文板を公開するとともに、発行・償還の上限を撤廃します。
同プロジェクト「ネイティブ・マーケッツ」はハイパーリキッドのエコシステム支持者であるフィーゲ氏を中心に、元Uniswap Labs(ユニスワップ・ラボ)幹部のMCラダー氏や、ブロックチェーン研究者アニッシュ・アグニホトリ氏らが共同で立ち上げた新興チームでもあります。
大手企業が参戦したUSDH発行者レース
USDH発行チームの選定はハイパーリキッド初の試みであり、複数の著名プロジェクトによる激しい競争が繰り広げられました。
ステーブルコイン企業のPaxosやFrax Finance、MakerDAO(メイカーダオ)の後継プロジェクトであるSky(スカイ)、Ethena(イセナ)、BitGo(ビットゴー)、Curve(カーブ)、OpenEden(オープンエデン)などが提案を出しました。
一方、このレースの過程で米資産運用大手BlackRock(ブラックロック)などから出資を受けるEthenaは9月中旬に争いから撤退し、新興のNative Markets(ネイティブ・マーケッツ)支持を表明しています。
こうした流れを受けて、予測市場Polymarket(ポリマーケット)におけるネイティブ・マーケッツ勝利予想確率は99%超まで跳ね上がり、当選が確実視されていました。
最終的なオンチェーン投票は9月14日に1時間にわたって実施され、バリデーターの賛成投票によってネイティブ・マーケッツのUSDH提案が可決されています。
USDH公募を巡る「茶番」批判とその背景
こうした経緯を背景に、仮想通貨業界内では今回の選考過程に対する議論も生じています。
仮想通貨ファンドDragonfly(ドラゴンフライ)のハシブ・クレシ氏は「USDHの発行者公募は茶番だったのではないか」と指摘し、複数の候補者から「バリデーターは最初からネイティブ・マーケッツ以外眼中になかった」といった声があると伝えました。
一方、RPCノードサービス企業Helius(ヘリウス)のマート・ムムターズ氏は「この選定レースを通じて米ドル連動型ステーブルコインが既にコモディティ化している実態が浮き彫りになった」と述べています。
また同氏は、将来的に複数のステーブルコインが自動換算され、単一の「USD」として表示される可能性に言及しました。
ネイティブ・マーケッツが示した独自提案
ネイティブ・マーケッツの提案内容にも注目が集まっています。
同チームはUSDH準備金の管理にStripe(ストライプ)社のトークン化プラットフォーム「Bridge」を活用し、準備金から生じる利息収入の50%をハイパーリキッドのネイティブトークンHYPEの買い戻しやエコシステム成長に充当する計画を示しました。
こうした方針は一部バリデーターから支持を集める一方で、競合プロジェクトのAgora(アゴラ)共同創業者ニック・ヴァン・エック氏は「ハイパーリキッドの基軸ステーブルコインをStripeのような外部企業のブロックチェーンに委ねてしまって良いのか」と警鐘を鳴らしました。
一方、ネイティブ・マーケッツ側は、ハイパーリキッド特有の高速DEX基盤に最適化された形でUSDHを運用し、HyperEVM(同取引所が独自に実装するEVM互換チェーン)上で直接USDHを発行する設計を打ち出しました。こうした戦略が評価され、今回の勝利につながったと見られています。
ライオングループ、HYPE集中で成長戦略加速
ハイパーリキッドと大手企業参入が示すUSDHの可能性
PayPalが主導するハイパーリキッド拡大戦略
今回USDHティッカーを獲得したネイティブ・マーケッツは新興プロジェクトとされていますが、その背景にはハイパーリキッドのエコシステム拡大に対する大手企業の関与も見られます。
米決済大手PayPal(ペイパル)は9月12日、4億以上の自社およびVenmo(ベンモ)のアカウントを活用してハイパーリキッドのコミュニティ拡大に取り組む方針を表明しました。
この動きは、PayPalのステーブルコイン発行パートナーであるPaxosがUSDH提案者の一社として名乗りを上げる中で示されたものであり、ハイパーリキッドのエコシステムがメインストリームからも注目を集めていることを裏付けています。
CircleによるHYPE取得とUSDCテスト運用
さらに米ドル連動型ステーブルコイン「USDコイン(USDC)」の発行元であるCircle(サークル)社関連のウォレットアドレスが、ハイパーリキッドのブロックチェーン上でネイティブトークンHYPEを8万枚取得したことが明らかになりました。
加えて、USDCのテスト運用を行った形跡があることも伝えられており、外部企業からの関心の高まりやステーブルコイン導入への期待がうかがえます。
こうした動きが広がるなか、USDH発行のテスト開始と正式導入が実現すれば、ハイパーリキッドの取引環境や流動性にさらなる拡大がもたらされる可能性があります。
これらの動向を踏まえ、市場関係者の期待も一段と高まっており、今後の展開に注目が集まっています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.67 円)
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Source:マックス・フィーゲ氏X投稿
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