
アトキンスSEC委員長、仮想通貨規制明確化を表明
SEC(米国証券取引委員会)のポール・アトキンス委員長は2025年9月10日、パリで開催された第1回OECD世界金融市場円卓会議の演説で「仮想通貨の時代が来た」と宣言しました。
この宣言に伴い、アトキンス委員長は過去にSECが続けてきた強硬な取り締まりによる「規制の武器化」を是正し、明確で予測可能なルール作りに注力する方針を打ち出しています。
同氏は、バイデン前政権下の拡大解釈に基づく規制手法がイノベーションの海外流出を招いたと批判し、この時代は「もはや過去のものだ」と強調しました。
その上で、今後は場当たり的な法執行ではなく、事業者が米国内で安心して事業を展開できるよう、あらかじめ定めた明確な規制の枠組みを整備する考えを示しています。
仮想通貨規制計画の方向性を提示
SEC委員長アトキンス氏が示す仮想通貨時代の規制戦略
プロジェクト・クリプトで規制の明確化を推進
アトキンス委員長は7月の公式声明で、新たな包括戦略「プロジェクト・クリプト」を発表し、証券規制をブロックチェーン時代に対応させる取り組みを開始すると明らかにしました。
この構想は、仮想通貨市場に法的確実性をもたらすことを最優先に掲げています。さらに「ほとんどの仮想通貨トークンは証券ではない」との認識に基づき、証券か否かの線引きを明確にする方針です。
これにより、起業家がブロックチェーン上で資金調達を行う際の法的不確実性を解消する狙いとしています。
スーパーアプリ型取引の推進と統合監督体制
さらに、複数の金融サービスを一体で提供する「スーパーアプリ」型の取引プラットフォームのイノベーションを促進する考えも示しました。
仮想通貨の売買に加え、レンディング(貸付)やステーキングを単一の規制の下で提供できる体制を整えることで、ユーザーの利便性と選択肢を大きく広げる狙いとしています。
その実現に向け、SECは他の金融当局とも協力します。さらに、証券か否かにかかわらず、あらゆる仮想通貨取引を包括する統合的な監督体制の構築を目指すとしています。
アトキンス氏は「投資家保護に必要な最小限の効果的な規制」にとどめる方針を示し、過度な重複規制でイノベーターを縛るべきではないと述べています。
こうした方針により、従来は大手事業者しか対応できなかった規制負担を軽減する姿勢を鮮明に示しました。
イノベーション推進で描く米国金融の未来像
同氏は公式声明の中で、米国を「ビルダー(建設者)の国家」と表現しました。起業家精神を阻害するのではなく後押しする規制環境を整え「米国で金融イノベーションの黄金時代を花開かせることを目標としている」と述べています。
その言葉通り、同氏は証券のデジタル化(株式台帳のトークン化)や新たなアセットクラスの創出といった金融のブレイクスルーを米国市場で実現し、米国投資家の利益につなげる考えに意欲を示しました。
若手企業との規制対話を全米で展開
米SECの規制転換が仮想通貨市場に与える影響
今回の声明は、米国の規制姿勢が大きく転換したことを示すものです。仮想通貨市場の健全な成長に向けた明確な方向性が打ち出されたとの評価が広がっています。
アトキンス委員長の発言は国内外の事業者や投資家にとって重要な指針となり、米国市場が金融イノベーションの中心地として再び注目を集める契機となりました。
今後は、議会で進む法制度の整備とSECの包括戦略が相乗効果を生み、仮想通貨をめぐる規制と市場環境の透明性が国際的に広がることが期待されています。
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Source:SEC公式声明
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