「ステーブルコインは脅威ではなくチャンス」米送金大手ウエスタン・ユニオンCEO

国際送金の未来を変えるステーブルコイン

2025年7月22日、米大手送金企業ウエスタン・ユニオンのデビン・マクグラナハン最高経営責任者(CEO)は、ステーブルコインについて「脅威ではなくチャンスだ」との見解を示し、今後の事業展開に積極的に活用していく姿勢を明らかにしました。

この発言は、同日公開された米経済番組「Bloomberg: The Close」のインタビューの中で語られたもので、自社事業におけるステーブルコインの活用余地にも言及しています。

具体的には、ステーブルコインが国際送金の効率化に加え、通貨不安のある新興国における価値保存手段として機能する可能性があり、これらの活用が同社のサービス改善につながるとの見解を示しました。

ウエスタン・ユニオンは現在、南米やアフリカなどで新たな決済手段の実証実験を進めています。同社は、ステーブルコイン技術の導入により送金スピードの向上やコスト削減を図る方針も明らかにしました。

ウエスタン・ユニオンCEOが語るステーブルコイン活用戦略

送金・交換・価値保存の3領域に注目

マクグラナハンCEOは今回のインタビューで、ウエスタン・ユニオンがステーブルコインを活用できる分野として「送金スピードの向上」「ステーブルコインと各国法定通貨の円滑な交換」「自国通貨が不安定な地域での価値保全手段の提供」の3つを挙げました。

同氏は「ステーブルコインはイノベーションのための新たな機会である」と述べ、175年の歴史を持つ同社にもなお技術革新の余地があるとの認識を示しました。また「私たちにとってステーブルコインは本当に脅威ではなくチャンスだ」との考えを改めて強調しています。

新興国で進むステーブルコイン決済の実証実験

ウエスタン・ユニオンは、複数の新興国においてステーブルコインを活用した新たな試みを開始しており、南米やアフリカの一部地域では、決済インフラのテスト運用も段階的に展開されています。

同社は現在、即時決済や現地通貨との迅速な両替を可能にする仕組みの導入を進めています。さらに、仮想通貨インフラ企業との連携により、ユーザーがプラットフォーム上でステーブルコインを売買・保有できる環境の構築を目指しています。

マクグラナハン氏は「世界各地のデジタルウォレットでステーブルコイン製品を提供する方法を模索している」と述べ、オンランプ・オフランプの整備も含めた実装計画があることも明らかにしました。

ステーブルコインの台頭で変わる業界勢力図

マクグラナハン氏がステーブルコインに対して前向きな姿勢を示すのは、送金業界全体における技術革新の流れが背景にあると見られています。

特に近年では、ステーブルコインが従来の送金手段よりも迅速かつ低コストである点が評価されており、その実用性の高さに関心が高まっています。

各国の金融機関や送金サービス企業は、競争力を維持するために変革を迫られています。仮想通貨ウォレット企業UpholdのCEO、サイモン・マクラフリン氏は「ステーブルコイン時価総額が2,000億ドルを超える一方で、ウエスタン・ユニオンやマネーグラムのアプリダウンロード数は直近数ヶ月で最大27%減少している」と指摘しました。

こうした現状を踏まえ、マクグラナハン氏はステーブルコインを国際送金事業における重要な要素と位置付け、共存すべき技術として積極的に取り入れる姿勢を示しています。

ステーブルコイン市場が迎える転換期

GENIUS法案が仮想通貨業界に与えた影響

2025年7月時点で、ステーブルコインを取り巻く制度環境は大きく前進しています。米国では18日、規制法案「GENIUS法案」が成立し、連邦レベルで初となる包括的な法整備が確立されました。

同法の成立により、ステーブルコイン発行体には、米ドルや米国債など流動性資産による100%の準備金の保有が義務付けられました。また、毎月の準備金内訳を開示することも求められ、利用者保護や金融システムの安定化が図られています。

トランプ大統領は署名式で「この法整備は仮想通貨業界にとって画期的な前進であり、米ドルと国家に有益だ」と述べており、明確なルールの下でステーブルコインの本格的な普及が期待されています。

標準規格の策定が進んだことで、銀行や小売企業なども参入しやすい環境が整いつつあります。こうした動きを背景に、ステーブルコインは従来型の金融機関にとっても無視できない存在へと変化しています。

米大手銀行が独自ステーブルコイン発行を検討

米国の大手金融機関もステーブルコインへの取り組みを本格化させています。

バンク・オブ・アメリカやシティバンク、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴなどの主要銀行は、共同で独自ステーブルコインを発行する構想を進めていることが明らかになりました。

さらに、シティグループのジェーン・フレーザーCEOも、自社によるステーブルコイン発行の可能性を正式に検討していると明かしており、金融界全体での動きも一層活発になっています。

ステーブルコイン市場は39兆円規模に拡大

現在、世界のステーブルコイン市場規模は約2,672.1億ドル(約39兆円)に達しています。中でも、テザー(USDT)は約1,617.1億ドル(約24兆円)の流通額を誇り、市場全体をけん引する存在となっています。

こうした一連の動きにより、ステーブルコインは国際送金や決済インフラの次世代基盤としての位置づけを強めていることが明確になりつつあります。

制度整備と導入拡大を背景に、ステーブルコインは仮想通貨と伝統的金融の垣根を越え、新たなグローバル金融エコシステムの中核として存在感を強めています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.46 円)

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Source:Bloombergインタビュー動画
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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