
金融庁、暗号資産専任の新ポスト設置
金融庁は2025年7月8日、総合政策局内に「暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官」という新たな役職を新設し、今泉宣親氏が初代参事官に就任したことを発表しました。
今泉氏はこれまで、金融庁において市場企画室長や資産運用改革室長などの要職を歴任し、金融市場および資産運用政策の企画・立案に長年携わってきた経歴を有しています。
役職名に「イノベーション」が含まれていることから、従来の規制重視の姿勢から技術革新を支援する方針への転換を図る狙いがあると受け止められています。
また、暗号資産およびブロックチェーンに関する政策を総合政策局の直轄としたことは、金融庁がこれらの分野を戦略の中核に据えている姿勢の表れといえます。
金融庁、暗号資産の金商法移行を正式検討へ
新ポスト設立で暗号資産・ブロックチェーン政策を強化
暗号資産を「金融商品・分離課税」に
今回の新ポスト創設の背景には、日本政府が推進するWeb3政策の方針があるとみられています。
政府は「新しい資本主義」の実現に向け、暗号資産(仮想通貨)分野の成長支援を重要な政策課題に据えています。
2025年6月に閣議決定された実行計画では、暗号資産を「国民の資産形成に資する金融商品」と定義しています。そのうえで、投資家保護を前提とした制度整備を進め、分離課税の導入を含めた税制の見直しと早期の法案提出を目指す方針が明示されました。
こうした政府の方針を受け、金融庁も暗号資産に関する規制の抜本的な見直しに着手しています。
金融庁では現在、現行の資金決済法に基づく規制枠組みの妥当性について数ヶ月にわたり内部検証が行われており、暗号資産を金融商品取引法の対象に含める法改正の是非についても検討が進められています。
これにより暗号資産ETF(上場投資信託)の承認が現実味を帯びるほか、現行で最大55%となっている個人の暗号資産取引益に対する課税が、金融商品と同様に一律20%へ引き下げられる可能性に期待が寄せられています。
含み益課税撤廃を含む税制改革
規制や税制の見直しを求める声は業界内でも高まっており、金融庁はそうした要望を踏まえたうえで制度改正の検討を進めています。
日本ブロックチェーン協会(JBA)代表理事の加納裕三氏(株式会社bitFlyer CEO)は「ETFに20%の分離課税が導入される一方で、現物取引が総合課税のままであれば、市場に歪みが生じ、現物資産の流動性に悪影響を及ぼす可能性がある」と指摘しています。
こうした業界からの要望を踏まえ、与党は2024年末の税制改正大綱で、法人が保有する暗号資産に対する含み益課税の撤廃や分離課税の導入に向けた方針を明記しました。
金融庁は今後もイノベーション促進と利用者保護の両立を図りつつ、国際競争力の強化に向けた戦略を推進する方針であり、今回の参事官新設はその一環とみられています。
暗号資産規制の見直しを承認
金融庁による暗号資産制度改革に向けた動き
暗号資産規制に関する意見公募
2025年4月10日、金融庁は暗号資産に関する制度の現状や課題をまとめ、今後の規制の方向性を提示するディスカッション・ペーパーを公表しました。
この報告書とあわせて、金融庁は一般からの意見募集も実施しており、暗号資産取引の実態と問題点を踏まえた上で今後の規制の方向性が示されています。
金融庁は寄せられた意見を分析し、6月までに規制の具体的な方向性と残された課題を取りまとめるとしていました。
続く6月25日には、金融審議会において暗号資産制度の見直しに向けたワーキンググループの設置が正式に承認され、法改正に向けた動きが本格化しています。
ステーブルコイン規制の見直し
このほか、国内でもステーブルコインや暗号資産関連制度の整備が段階的に進められています。
2023年には改正資金決済法が施行され、銀行や信託会社によるステーブルコインの発行が可能となりました。あわせて、市場の流動性を向上させるための規制緩和も進められています。
2025年2月19日には、金融審議会総会において暗号資産に関する新たな規制パッケージが承認され、その柱の一つとして「ステーブルコイン運用の柔軟化」が明記されました。
具体的には、これまで日本国債に限定されていたステーブルコインの担保資産について、満期3か月以内の日本国債や米ドル建て米国債、一定の預金も組み入れ可能となりました。
ただし、これらの資産の合計比率は50%までに制限されており、市場の流動性を確保しつつ担保資産としての安定性が維持されるよう設計されています。
さらに、暗号資産交換業者の破綻時に備えた顧客資産の保護強化や、マネーロンダリング対策として「トラベルルール」の適用範囲を拡大する措置も正式に承認されました。
こうした取り組みを通じて、金融庁は健全な市場の構築と利用者保護の両立を図りながら、規制環境の継続的な改善を進めています。
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Source:金融庁人事異動「金融庁幹部名簿」
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