
みんなの銀行、Web3事業に本格参入
デジタルバンクのみんなの銀行(株式会社ふくおかフィナンシャルグループ傘下)は2025年7月4日、Solana Japan(合同会社)、Fireblocks、TIS株式会社と共同で、ソラナ(SOL)を基盤とするステーブルコインおよびWeb3ウォレットの事業化に向けた共同検討を開始したと発表しました。
この共同検討では、ソラナチェーン上でのステーブルコイン発行に向けた技術的な実証を行い、個人向け(B2C)および法人向け(B2B)を含む
多様なユースケースにおける実用性の確認を進めていく方針です。
同社の発表によると、特にRWA(現実資産)を裏付けとしたトークンの売買やデジタル決済におけるステーブルコインの活用、さらに新たな金融体験の創出を見据え、Web3ウォレットの実現可能性についても検討を進めるとしています。
この取り組みは、2023年6月に日本国内でステーブルコインの法的位置付けが明確になったことを受け、高まる実用化の機運に応えるものです。ブロックチェーン技術と金融サービスを融合させ、新たな価値を創出する動きの一環として位置づけられています。
ステーブルコインとは?
みんなの銀行、ステーブルコイン事業化の背景
2023年6月の改正資金決済法の施行により、法定通貨に連動するステーブルコインの国内での位置付けが明確になりました。これを契機に、ステーブルコインを活用した新たな金融サービスへの期待が金融業界全体で広がっています。
デジタルネイティブ世代を中心とした顧客基盤を持つみんなの銀行にとっても、ブロックチェーン技術と金融サービスを融合した革新的なサービスの創出は重要な課題となっています。今回の共同検討の開始は、こうした背景を踏まえたものとなります。
みんなの銀行は、TIS、Solana Japan、Fireblocksの3社の先進的な知見と技術力を活用しながら、安定したデジタル通貨基盤の実現可能性を探ることで、新たなユーザー体験の提供につなげる計画です。
4社連携で進める金融体験
発表によると、この共同検討ではTISが金融システム分野に関する知見を提供し、みんなの銀行がステーブルコイン発行に向けた技術検証を担当します。
また、Solana Japanはブロックチェーン技術の支援を担当し、FireblocksはWeb3ウォレットやトークン発行基盤に関連する技術面を提供します。
各社の役割を明確に分担することで、ユーザーが多様な暗号資産を安全に管理し、国内外で安全に取引できる新たな金融サービスの実現を目指すとしています。
同社は将来的に、自社スマホアプリ上でWeb3ウォレットやステーブルコイン機能をシームレスに提供し、Web2(従来の金融サービス)とWeb3の架け橋となることで、トークンエコノミーの拡大に貢献する方針です。
同社は今回の共同検討で得た知見を、自社のBaaS(Banking as a Service)ラインナップに将来的に組み込む計画です。パートナー企業との連携を通じて、ユーザビリティと利便性を兼ね備えた金融サービスの提供を目指しています。
みんなの銀行が進める事業化の動き
Fireblocksの戦略責任者であるスティーブン・リチャードソン氏は、日本の銀行業の特性について次のようにコメントしました。
日本では企業間取引やトレードファイナンスなど、国際的な銀行業務が重視されています。
貿易取引が多いため、迅速かつ低コストな資金移動が求められています。
みんなの銀行は2023年3月、東京きらぼしフィナンシャルグループや四国銀行とともに、イーサリアム(ETH)互換チェーン「Japan Open Chain」上で、法令に準拠したステーブルコイン発行の実証実験を実施しました。国内銀行として、いち早く暗号資産の技術検証に取り組んできた実績があります。
なお、今回開始されたソラナ(Solana)を基盤とする共同検討の成果次第では、今後、国内でのステーブルコイン発行や関連サービスの具体的な計画が示される可能性があります。
日本初の預金型ステーブルコイン「トチカ」
国内メガバンクが本格参入するステーブルコイン事業
ステーブルコインが電子決済手段として正式に認められて以降、国内のメガバンクを中心にステーブルコイン事業への参入が加速しています。
銀行間決済の効率化や国際送金におけるコスト削減へのニーズが高まる中、各銀行は独自性のあるプロジェクトの立ち上げを進めています。
三井住友・三菱UFJが描く暗号資産戦略
2025年4月、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)および三井住友銀行は、米Avalanche(アバランチ)の開発企業Ava Labs、Fireblocks、TISと共同で、ステーブルコインの事業化を見据えた検討を開始したと発表しました。
この共同プロジェクトでは、銀行間および企業間における大口決済に対応できる円建てステーブルコインの発行要件を定義するとともに、RWA(現実資産)のトークン化に対応した決済手段の導入可能性についても検討が進められています。
また、三菱UFJ信託銀行は、改正法に基づく国内初の円建てステーブルコイン発行に向け、準備を最終段階まで進めています。
2024年からは、自社のデジタル基盤「Progmat(プログマ)」上で、カーボンクレジット取引市場における決済手段としての実用化を開始しており、将来的には貿易決済などの大口取引への展開も視野に入れていると伝えられています。
三菱UFJ信託の窪田啓二社長は「コストが安く、決済も早い。ステーブルコインは画期的で社会課題の解決に役立つ」と述べ、既存の銀行を介した越境送金と比べて、手数料を大幅に削減できる利点を強調しました。
SWIFT連携で進むデジタル送金実証
さらに2024年9月には、データチェーン社とProgmatが提携する国際送金基盤プロジェクトに、三菱UFJ・みずほ・三井住友の3メガバンクが参画しました。
このプロジェクトでは、SWIFTのインフラとステーブルコインを組み合わせた国際送金ネットワークの構築に向けた実証実験が開始されており、2025年の商用化を視野に入れた取り組みが進行中です。
メガバンク以外では、あおぞら銀行が2024年10月に、ブロックチェーン企業のGu社と円預金を裏付けとする信託型ステーブルコイン発行の検討に関する基本合意を締結しました。
国内の銀行各社は、暗号資産(仮想通貨)やデジタル資産分野への取り組みを本格化させています。特に、ステーブルコインを含む次世代金融インフラの構築を巡る競争が活発化しています。
規制緩和を受けて、大手銀行に加え非銀行系企業の市場参入も相次いでいます。銀行の積極的な動きにより、ステーブルコイン市場のさらなる拡大が期待されています。
国内の注目記事はこちら
Source:みんなの銀行公式発表
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用






コメント