
ビットコイン準備基金設立へ前進
アリゾナ州議会上院は2025年6月19日、犯罪捜査で押収した仮想通貨を活用する「ビットコイン及びデジタル資産準備基金」設立法案(HB-2324)を、賛成16票・反対14票で可決しました。
この共和党主導の法案は、かつて下院で否決されたものの再提出され、今回の上院可決を受けて再度下院での審議に入る見通しです。
法案が成立すれば、州政府は犯罪収益として没収した仮想通貨(暗号資産)を、新設される「ビットコイン及びデジタル資産準備基金」のもとで管理・運用できるようになります。
今回の上院本会議での可決により、アリゾナ州はビットコイン(BTC)を準備資産として制度的に位置付ける方向性を一段と明確にした形となりました。
前仮想通貨活用法案に拒否権を行使
アリゾナ州の仮想通貨準備基金とは
押収資産の仮想通貨保管方法
HB-2324法案は、州政府が押収・没収したデジタル資産を体系的に管理するための制度整備を目的としています。
具体的には、州財務長官の管轄下に「ビットコイン及びデジタル資産準備基金」を新設し、犯罪捜査を通じて没収された仮想通貨を、この基金で安全に保管・運用する体制が整えられる見通しです。
法案文書では、押収したデジタル資産を州承認の安全なデジタルウォレットに保管し、紛失・盗難を防止することを義務づけています。また、必要に応じて秘密鍵やパスフレーズを取得・管理するための具体的な差押手続きについても定めています。
売却による現金化についても厳格な手順を定めており、仮想通貨は州が承認した取引所を通じて、透明性を確保しながら売却し、その評価額を適正に算出することが義務付けられています。
売却せずに保有する方針は、将来的な価格上昇に加え、ネットワーク報酬(ステーキングやエアドロップなど)による資産拡大の可能性も見据えたものです。
州政府が仮想通貨を直接保有・運用する法的基盤を整える取り組みは、全米でも先進的な事例の一つと評価されています。
州資産への反映と配分の仕組み
押収された仮想通貨の配分方法についても、法案内で具体的に定められています。
犯罪収益の没収によって得られた仮想通貨は、まず最初の30万ドル(約4,360万円)まではアリゾナ州司法長官局へ割り当てられます。
その上で、没収資産額が30万ドルを超える分については「50%を司法長官局、25%を州一般基金、残る25%を新設される準備基金にそれぞれ配分する」と明文化されています。
この仕組みによって、没収資産の額が30万ドルを超える場合、超過分の50%が司法長官局、25%が州の一般基金、残り25%が新設される準備基金へと割り当てられる構造になっています。
この基金の運用については、州議会の管理下に置かれ、一般会計とは切り離された別枠として扱われる規定となっています。
対象となる「デジタル資産」の定義には、ビットコインなどの仮想通貨に加え、デジタル権利を伴うトークンなど幅広い資産が含まれています。
HB-2324への賛否とその根拠
法案の狙いは、押収された仮想通貨をこれまでのように活用せず保管し続けたり、即座に売却したりするのではなく、州の資産として有効活用する点にあります。
法案共同提案者の一人であるマーク・フィンチェム上院議員(共和党)は、州政府が差し押さえた仮想通貨を放置せず公共の利益に資するよう運用する意義を強調しており、同議員はこの法案を、経済のデジタル化に対応する新たな財政運用モデルと位置付けています。
今回のHB-2324は、州民の税金を用いることなく、既存のデジタル資産を財源として州財政に活用する枠組みとして位置付けられています。
基金の原資は犯罪収益として没収された資産であり、税金が投入されていないため、市場変動によるリスクが州民に直接波及しない構造となっています。
このように「新たな予算投入なしで収益を生み出す」アプローチは、インフレや財政制約に直面する自治体にとって有効な選択肢の一つと評価されています。
賛成派は「仮想通貨を準備金に組み入れることで州の財政基盤を強化し、将来的な経済変動にも備える戦略になる」と評価しています。
一方、慎重派や民主党議員からは、価格変動リスクなどへの懸念が示されています。
反対論の主なポイントは、ビットコインをはじめとする仮想通貨市場の価格変動が激しく、州が保有する資産の価値が急落した場合に財政的な損失や混乱を招くリスクです。
また、仮想通貨に関する規制整備が不十分な状況での導入は時期尚早であるとの意見も一部の議員や関係者から挙がっています。
しかし今回の法案は、公的資金を追加投入するものではなく、既に州が押収した資産の範囲内で行う取り組みです。従来のように公的資金で仮想通貨を購入する提案と比較すると、リスクが限定的との見方が広がっています。
支持者たちはその点を訴え、州が安心して仮想通貨を管理・運用できる法的基盤を整備することで、財政の健全化と技術革新の両立が可能になると期待されています。
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アリゾナ州で分かれる仮想通貨評価
アリゾナ州では2023年以降、仮想通貨に関連する法案が相次いで提出・審議されており、アリゾナ州政府の対応が業界内外で注視されています。
現職のケイティ・ホッブス州知事(民主党)は、ビットコイン準備金に関連する法案に対して内容によって拒否権を行使するなど、慎重な対応を見せています。
具体的には、州政府が公的資金でビットコインを購入・備蓄することを認める上院法案「SB-1025(アリゾナ戦略的ビットコイン準備法)」が州議会を通過したものの、ホッブス知事は2025年5月2日にこの法案を拒否し「仮想通貨は長期的実績に乏しく、公的年金など重要な基金をこうした未検証の資産に投入すべきではない」との懸念を示しました。
拒否権行使と代替法案の成立経緯
さらに5月12日には、押収・取得した仮想通貨を州の基金で管理することを定めた関連法案「SB-1373(デジタル資産戦略準備基金法案)」にも拒否権を行使し「仮想通貨市場の現在の価格変動性は一般基金の資金運用には適していない」と指摘しています。
ホッブス知事は自らの拒否権行使の理由として、州の一般基金を価格変動の大きい仮想通貨市場に投資することはリスクが高いと述べています。
実際、SB-1025とSB-1373の拒否により、ビットコイン準備金の法制化を阻止した州はアリゾナで10例目となり、仮想通貨財政戦略を巡る各州の動きは困難に直面していました。
しかしホッブス知事は一貫して仮想通貨に否定的というわけではなく、リスクの低い活用策には前向きな姿勢も示しています。
知事は5月7日、州の未請求資産法を改正して休眠状態の仮想通貨を州がそのまま保有・運用できるようにする下院法案「HB-2749(ビットコイン準備基金創設法案)」に署名し、同法案は成立しました。
この新法により、3年間動きのない仮想通貨は「休眠資産」として州が現金化せずに直接保管し、必要に応じてステーキングなどを通じて、運用益を得ることも可能とされています。
こうして得られた報酬や配布資産は、州財務局管理の「ビットコイン及びデジタル資産準備基金」に積み立てられる仕組みで、税金を一切使わない予算中立型の取り組みとして、州議会関係者からも一定の評価を受けています。
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アリゾナ州でビットコイン準備基金成立の可能性
没収資産という既存リソースを用いるこの法案は、ホッブス知事が過去に署名した法案とも理念が近く、政治的妥協点として受け入れられる可能性があるとの指摘もあります。
実際、本法案の成立によって州政府が即時に支出を伴うわけではなく、犯罪収益を起源とする仮想通貨から新たな公的価値を引き出す取り組みであることから、知事が懸念していた納税者への直接的リスクは限定的だとする見方も広がっています。
こうした背景を踏まえ、州議会関係者の間では「ホッブス知事が本法案には前向きな検討をする可能性がある」との期待が高まっています。
知事が署名すれば、アリゾナ州は仮想通貨準備基金の制度化に向けた先進州となる可能性があり、今後の動向は国内外の仮想通貨業界からも注目されています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=145.25 円)
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Source:アリゾナ州上院議会サイト
サムネイル:AIによる生成画像







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