Japan Tourism NFT Awards 2024 レポート|インバウンド1億人時代に向けたWeb3の第一歩
NFTと観光の可能性を探るイベント「Japan Tourism NFT Awards 2024」が、2025年3月13日(木)にGMOインターネットグループ本社で開催されました。
オンラインとオフラインのハイブリッド形式で開催された今回は、ユニーク申込者180名、現地+懇親会の参加者合計266名を記録。Web3に関心のある地方自治体・観光事業者・企業担当者が一堂に集まり、熱量あふれるプレゼンと交流が行われました。
本レポートでは、イベント全体の様子とともに、各部門のグランプリ・ゴールド受賞プロジェクトをご紹介します。
今年で2回目の開催となった「Japan Tourism NFT Awards」

「Japan Tourism NFT Awards」は、観光分野におけるNFTの実用性や可能性を示すことを目的としたアワードイベントです。
本アワードは、NFTの社会実装を推進する一般社団法人日本NFTツーリズム協会の主催により、観光庁後援のもと実施されたものです。
昨年に続き2回目の開催となった今回は、観光業界や地方自治体、Web3関係者など多様なステークホルダーが集結しました。
▼開催概要
開催日 | 2025年3月13日(木) |
会場 | GMOインターネットグループ本社 |
主催 | 一般社団法人日本NFTツーリズム協会 |
後援 | 観光庁 |
形式 | オンライン+オフラインのハイブリッド開催 |
総申込者数 | 180名(ユニーク) |
会場参加+懇親会参加者数 | 266名 |
開会挨拶で語られた「観光DXのその先」

開会挨拶では、主催である日本NFTツーリズム協会の代表理事・岩下拓氏が登壇。
「インバウンド1億人時代」に向けた観光DXの先にある、新しい体験価値創出の可能性について語りました。
NFTを単なる“デジタル証明書”ではなく、地域の魅力を可視化し、参加型の観光体験を提供する手段として提案。参加者からも強い共感が集まりました。
観光×NFTの未来を探るトークセッション

続くトークセッションでは、「ツーリズム業界におけるNFTプロジェクトの始め方やその実態、課題とは」をテーマに、以下3名の登壇者が登場しました。
- (株)エイチ・アイ・エス Web3.0・バーチャルプロジェクト プロジェクトマネージャー 山谷和洋氏
- 九州旅客鉄道(株) JR九州NFTプロジェクト プロジェクトファウンダー牛島卓二氏
- モデレーター:東海大学 観光学部 准教授 小谷恵子氏
山谷氏は、コロナ禍によって打撃を受けた旅行業界の中で新規事業の必要性を感じ、NFTの持つ可能性に着目した背景を語りました。デジタルでも“唯一性”を持たせられるNFTの特性が、旅行体験と高い親和性を持つと考えたとのことです。
一方で、JR九州の牛島氏は、鉄道会社ならではの視点で「乗るだけではない“鉄道体験”の価値をNFTで可視化できる」と語り、デジタルとリアルの融合による観光体験のアップデートに意欲を見せました。
両者は共通して、「NFTによって地域との関係性を深め、持続可能な観光の仕組みづくりに繋げたい」という姿勢を強調。小谷氏のファシリテーションにより、現場ならではの熱量と課題意識が伝わるセッションとなりました。
NFTマーケットの現状を伝える特別プログラムも

特別プログラムでは、私たちNFT Media代表の小林が「数字で見るNFTマーケット」と題して登壇。NFTの市場動向やユーザー動向、今後の成長ポテンシャルについて具体的なデータをもとに分析を行いました。
小林は、「NFTの観光活用はまだ黎明期にあるが、先行事例を見れば着実に成果を生み出している」と指摘。今回のアワードに参加したプロジェクトが、エンゲージメントや認知向上といった面で実績を示していることに言及しました。
さらに、今後の課題として「規制・税制・文化理解」といった壁があることにも触れつつ、事業者や自治体が安心して取り組める環境整備の必要性を訴えました。
熱気に包まれたファイナルピッチ|各部門の受賞事業者を紹介!
特別プログラムの後には、本アワードのメインである、以下の全5部門計10事業者によるファイナルピッチを実施。

審査員によるコメントと採点が行われ、観覧者との一体感に包まれたセッションとなりました。
以下では、各部門で受賞したプロジェクトについてご紹介します。
誘客・プロモーション部門
グランプリ:株式会社エイチ・アイ・エス、株式会社ガルシス「Travel and Snap to Earn」

HISとガルシスが共同で開発した本プロジェクトは、撮影した写真をNFT化し、報酬が得られる「Snap to Earn」モデルを採用。
旅の思い出をデジタル資産に変えるだけでなく、地域との新たな接点を創出する点が評価されました。ユーザーが能動的に観光地に関わる設計が、持続可能な誘客施策として注目されています。
ゴールド賞:東京電力パワーグリッド、Greenway Grid Global、Digital Entertainment Asset「Pictr'ee」

電柱を舞台にした参加型ゲームコンテンツ「PicTr’ee(ピクトレ)」は、地域とエンタメを融合させたユニークなプロジェクト。地域の人たちが送電柱の写真を撮影しNFTとして収集することで、地域の景観に自然と興味を持たせる工夫が光りました。社会性と遊び心のバランスがとれた設計となっています。
関係人口・第2のふるさと・DAO部門
グランプリ:NOT A HOTEL DAO株式会社「NOT A HOTEL NFT/NOT A HOTEL DAO」

NOT A HOTELは、ラグジュアリーホテルの宿泊権をNFTとして提供し、保有者が共同オーナーのように全国のホテルを利用できる画期的なプロジェクトです。NFT保有により、年に1〜3泊分の宿泊権を得られるほか、会員限定イベントやプライベート施設の利用といった特典も用意。宿泊施設は宮崎・栃木・福岡・北軽井沢など全国に拡大中で、将来的にはDAOとしての意思決定参加も可能になる予定です。
NFTによる「資産性×体験価値×コミュニティ」の融合を実現しており、Web3型ホスピタリティの新境地として高く評価されました。宿泊しない年は、宿泊権を二次流通させることも可能です。
ゴールド賞:富山県、Web3 Times合同会社「寿司といえば富山DAO」

「寿司といえば、富山」のブランド化を目指し設立されたオンラインDAOコミュニティ。参加者はDiscord上で企画や交流を行い、富山の寿司文化を全国・世界へ発信しています。
貢献度に応じて「お寿司マイル」が付与され、地元特産品と交換できる仕組みも好評。Web3による地方創生の実証実験「Digi-PoC TOYAMA」の一環として取り組まれており、オンラインとオフラインを融合した関係人口づくりの好事例として評価されました。
体験価値・フィジタル部門
グランプリ:KDDI株式会社、株式会社SAGOJO「すごい地域NFT「KIN-TOWN」

「KIN-TOWN」は、住民と“バーチャルなご近所さん”が共創する新しい地域づくりを目指すDAO型プロジェクトです。NFT保有者が「KIN-TOWN DAO」に参加し、地域課題の解決やプロジェクトの立ち上げに関われる仕組みを整備。
体験価値の提供だけでなく、SAGOJOコインによるインセンティブ設計や地域間の関係人口シェアといった構想も評価されました。地方と都市をつなぐWeb3型エコシステムの可能性を示した事例です。
ゴールド賞:株式会社Weblit、合同会社nom、長野県飯田市役所 湯澤英俊氏、松尾智美氏「ねやねや天龍峡 デジタル住民部」

長野県飯田市・天龍峡の観光地を舞台に、NFTを活用して“デジタル住民”を募集する地域参加型プロジェクト。デジタル住民票の発行を通じ、地域の歴史や自然と関わる新しい関係人口モデルを創出しています。
地域と来訪者が共に未来をつくる観光地を目指す実践的な取り組みとして、高い評価を得ました。
地域資源部門
グランプリ:Mikosea株式会社、オートレース宇部レーシングチーム「オートレース宇部 Racing Team 応援DAOプロジェクト」

オートレース宇部レーシングチームが展開する本プロジェクトは、DAOとNFTを活用した次世代型ファンクラブのモデルを提示しました。クラウドファンディングと連動し、デジタル会員権(NFT)を発行。保有者は限定コミュニティへの参加やPITウォーク、サーキットイベントなど、ファンとチームの関係性を深める特典を享受できます。
特に注目されたのは「ブロックチェーン上に応援メッセージを刻む」という取り組みや、電⼦スタンプラリーを通じたエンゲージメント設計。さらに、地元山口県から国内最高峰JSB1000クラスや世界耐久選手権への参戦実績も評価され、地域×モータースポーツ×Web3の好例としてグランプリを獲得しました。
ゴールド賞:九州旅客鉄道株式会社「JR九州NFTプロジェクト」

九州各地の駅や列車を題材にしたNFTを発行し、乗車や訪問と連動した「思い出」のデジタル化を推進する本プロジェクト。NFTはスマホや専用の「ウォレットカード」に保管でき、今後はNFT保有者への限定特典なども検討されています。地域ごとの限定発行や取得条件の変化を通じて、旅行の新たな動機づけにもつなげており、JR九州の持つ鉄道網と観光資源を活かした体験型NFT施策として注目を集めました。
オープンカテゴリー部門
グランプリ:株式会社Fosun Real World Asset「THE GRAND HOTEL COLLECTION」

高級ホテルの宿泊権や特典をNFT化する、RWA(Real World Asset)型の注目プロジェクト。国内外の宿泊施設と連携し、所有権・利用権・先行予約など多様な特典を提供。ホテル業界の課題解決や観光需要の平準化にも寄与する先進事例です。
ゴールド賞:東急不動産「もりからの手紙」

東急リゾートタウン蓼科を舞台に、自然体験をNFTという“デジタル切手”として記録・共有できるプロジェクトです。環境に優しい行動やスタンプラリーへの参加でNFTを取得し、地域産品と交換できる仕組みを導入。今後はDAO化も見据えた拡張性があり、「観光×NFT×環境」の新たなモデルとして高く評価されました。
本アワードをおえて
本アワードを終えて、主催者である一般社団法人日本NFTツーリズム協会 代表理事の岩下拓氏より、総括が述べられました。
岩下氏は、今回のアワード開催にあたって協力いただいた関係者すべてに深く感謝を表明した上で、「ツーリズム×Web3という領域が、まだ黎明期であるにもかかわらず、これほど多様な事例が集まったことに希望を感じた」と語りました。
NFTやWeb3を取り巻く法制度や市場の未整備さ、認知度の課題は依然として大きいものの、参加者たちの熱量や事業への真剣な取り組みから、この分野が着実に前進していると実感できたといいます。
また「今後、ステーブルコインやDAOといったWeb3の基盤技術が浸透していくことで、観光産業においてもWeb3がインフラの一部として定着していくはずだ」と語り、観光業に携わるすべての人が、Web3を“自分ごと”として捉えることの重要性を訴えました。
一方で現地観覧者からは、以下のような感想が寄せられています。
「プレゼンコンペ形式であることにより、会場全体の熱気、本気度が高く、聴講する側も身の引き締まる思いでした。NFTという比較的新しい分野で奮闘する『同士』のような雰囲気が醸成されたかと思っており、とても有意義な体験をさせていただきました。是非また別の機会にも参加させていただけますと幸いです」
SNS上でも下記のような声が見られ、イベント全体に込められた想いや熱量が確かに伝わったことがうかがえます。
だが、情熱はある。継続されているみなさんに感謝と尊敬を。受賞されたみなさん、おめでとうございます。一人、この情熱に感動しています。#JapanTourismNFTAwards2024 #なんかふしぎなテクノロジー https://t.co/v5y0f52BXA pic.twitter.com/SBEWEn9ZHW
— 佐々木要【GMO NIKKO NFT】Knm bySSK (@sasakikaname) March 13, 2025
<blockquote class="twitter-tweet"><p lang="ja" dir="ltr">だが、情熱はある。継続されているみなさんに感謝と尊敬を。受賞されたみなさん、おめでとうございます。一人、この情熱に感動しています。<a href="https://twitter.com/hashtag/JapanTourismNFTAwards2024?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#JapanTourismNFTAwards2024</a> <a href="https://twitter.com/hashtag/%E3%81%AA%E3%82%93%E3%81%8B%E3%81%B5%E3%81%97%E3%81%8E%E3%81%AA%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%8E%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%BC?src=hash&ref_src=twsrc%5Etfw">#なんかふしぎなテクノロジー</a> <a href="https://t.co/v5y0f52BXA">https://t.co/v5y0f52BXA</a> <a href="https://t.co/SBEWEn9ZHW">pic.twitter.com/SBEWEn9ZHW</a></p>— 佐々木要【GMO NIKKO NFT】Knm bySSK (@sasakikaname) <a href="https://twitter.com/sasakikaname/status/1900192174119281100?ref_src=twsrc%5Etfw">March 13, 2025</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script>
来場者や出場者の交流の場として設けられた懇親会にも約50名が参加し、分野を超えた新たなつながりが数多く生まれました。観光業界とWeb3業界の橋渡しとなるこのような場が、今後のプロジェクト創出にもつながっていくことが期待されます。
最後に
Web3やNFTの社会実装は、まだまだ「黎明期」と言われています。しかし、今回のアワードで取り上げられたような先進事例が増えていくことで、「観光とNFTが当たり前に結びつく世界」が現実になっていくことでしょう。

そして、NFTという可能性を“観光”という身近なフィールドに落とし込んだ今回のアワードが、次なるプロジェクト創出のきっかけとなることを願ってやみません。
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参照元:NFT Media