アリゾナ州、ビットコイン準備金2法案が下院委員会を通過|初の法制化に向け一歩リード
ビットコイン準備法案成立まであと一歩
アリゾナ州議会上院で提出されたビットコイン(BTC)準備法案に関する2法案が、下院の委員会審査を通過しました。
2025年3月18日、両法案はアリゾナ下院商業委員会で「6対4」の採決により承認され、続いて3月24日には、下院規則委員会でも全会一致の「8対0」で承認されました。
ビットコイン準備法案「SB1373」と「SB1025」はいずれも共和党のマーク・フィンチェム上院議員を主たる提案者とする関連する法案です。SB1373は「仮想通貨戦略準備基金」の創設を目的とし、SB1025は「アリゾナ戦略的ビットコイン準備法」として位置付けられています。
なお、アリゾナ州のニュースメディアArizona Mirrorの記事では、両法案の下院商業委員会公聴会でフィンチェム議員が「今こそXRPとビットコインに投資する好機だ」と冗談を交えつつ発言し、民主党側からは「仮想通貨は”魔法のマネー”だ」と懐疑的な声も上がっていたと報じられています。
「戦略BTC準備金」を恒久的なものに
アリゾナ州知事の署名が焦点に
下院商業委員会と規則委員会を通過したSB1373とSB1025は、下院本会議での最終採決に進むこととなっています。アリゾナ州下院の議席配分は共和党33、民主党27となっており、委員会と同様に党ラインに沿った投票が行われれば下院本会議でも可決する公算が大きいとの見方もあります。
仮想通貨に前向きな共和党議員らは「新たな金融技術に今こそ乗り出すべきだ」と意気込んでおり、法案成立に前向きな声が上がっています。しかし、最終関門となる州知事の署名については予断を許しません。
ケイティ・ホッブス知事(民主党)は仮想通貨に明確な反対表明はしていないものの、2024年には共和党主導の法案の22%を拒否権で差し戻しており、全米の州知事で最も拒否権行使率が高かったと報じられています。ホッブス知事がこれらのビットコイン備蓄法案に署名しない可能性も十分あり、成立の可否は知事次第という状況です。
仮にホッブス知事が拒否権を行使した場合、州議会での拒否権を覆す再採決(3分の2の賛成で成立)が必要ですが、上下両院とも共和党は過半数に留まり3分の2には届かないため、単独で拒否権を覆すのは難しいと見られています。そのため、民主党議員から相当数の賛同を得ない限り「拒否権行使=法案廃案」となる可能性も指摘されています。
ただし、記事執筆時点ではホッブス知事も具体的な方針を明確に示してはいません。共和党側は法案内容にリスク管理策を盛り込んだことや、全米で広がる同様の動きを意識しながら、超党派の支持を呼びかけていく姿勢を示しています。
一方、ホッブス知事が署名すればアリゾナ州は全米初の「州政府版ビットコイン準備基金」を誕生させた州となります。施行時期は一般的な州法の規定に従い2025年後半(90日ルール)になる見通しですが、州政府が公式にビットコインを準備資産として保有・運用する道が開かれることになり、大きな注目を集めています。
米各州をめぐるBTC準備金法制化レース
アリゾナ州以外にも、2023年末から2025年前半にかけて多数の州議会でビットコイン等を州の準備資産に加える法案が提出されています。
こうした「戦略的ビットコイン準備法案」は全米で少なくとも18の州議会に広がっており、提案法案数は33本以上に上ります。
テキサス州
アリゾナと並んで最も積極的にビットコイン準備立法を推進している州です。7本もの関連法案が提出されており、中でもシュベルトナー上院議員が提出したSB21「テキサス戦略的ビットコイン準備・投資法案」が最有力とされています。
SB21は2月18日に上院商務委員会で全会一致可決され、2月28日には上院本会議を「25対5」で通過しました。現在は下院に送られ、委員会審査を経て本会議採決を待っている状況です。
テキサス州では共和党が州議会を支配し、仮想通貨支持派のグレッグ・アボット知事も当該法案に関心を示しているため、成立の可能性は高いと見られています。
シュベルトナー議員は公聴会で「あらゆる法定不換通貨はいずれ紙くず同然になる」と述べ、ビットコインは過去10年で最も実績のある資産であり「テキサスはそれを検討する選択肢を持つべきだ」と強調しました。この発言は、連邦政府の巨額債務や将来のドル価値下落への備えとしてビットコインを州が保有する意義を示したものです。
テキサス州上院委員会が全会一致で承認
オクラホマ州
オクラホマでも州政府のビットコイン備蓄に向けた法整備が急速に進んでいます。下院法案HB1203「戦略的ビットコイン準備法」は2025年1月に提出され、2月下旬に政府監視委員会で「12対2」という圧倒的賛成多数で可決されました。
その後、3月上旬に下院本会議を77対15で通過しており、現在は上院での審議待ちとなっています。下院本会議での可決票77票には一部民主党議員も含まれており、超党派の支持も得た形です。
オクラホマ州上院・知事府も共和党支配のため、本法案が最終成立する公算は大きいと報じられています。
提案者のコーディ・メイナード下院議員は「ビットコインは官僚が我々の購買力を刷り減らすのから自由をもたらすものだ。分散型のお金であり、政府に操作・増刷されることがない。健全なマネーを信奉する人々にとって究極の価値の貯蔵手段だ」と強い支持を表明しています。
オクラホマ州下院委員会で賛成多数
フロリダ州
フロリダ州でも公的資金のビットコイン投資を認める法案が上下両院に提出されています。上院法案SB550/下院法案HB487「公的資金のビットコイン投資法案」は、州の一般収入基金や年金基金、災害準備基金など巨額の州資金の最大10%までをビットコイン等の「デジタル資産」に投資可能とする内容です。
ジミー・パトロニスCFO(共和党)は「消防士や教師、警官の年金を運用する上で最優先すべきは収益性の確保だ。ビットコインはポートフォリオの多様化と他資産のボラティリティに対する安全なヘッジ手段となり得る」と述べ、ビットコイン投資の潜在的メリットを強調しています。
ただしフロリダの法案は2025年2月に提出されたばかりで委員会審査が始まった段階であり、3月25日時点で上下院とも委員会採決には至っていません。セッション期間内に可決を目指す動きはありますが、立法進捗としてはテキサスやオクラホマに後れを取っている状況です。
フロリダ州法案
アリゾナ・オクラホマ・テキサスの3州がリード
こうした状況を踏まえると、アリゾナ州は全米の中で立法段階が最も進んでいる州の一つです。他州がまず1本の法案で公的資金の投資許可を目指す中、アリゾナは押収資産の活用と積立金の新規投資という二方面からアプローチしている点でも特徴的です。
デジタル政策情報サイトDigital Watch Observatoryの分析でも「アリゾナ州は米国の仮想通貨立法推進において先導的な地位にある」と評価されており、その積極性が際立っています。
Bitcoin Lawsによると、アリゾナ州がビットコイン準備レースの先頭に立ち、オクラホマとテキサスがそれに続いており、この3州が他州をリードする形で競い合っている構図となっています。
上からアリゾナ2本、オクラホマ、テキサス(画像:Bitcoin Laws)
アリゾナ州がBTC準備金立法を牽引
ビットコイン支持派コミュニティでも「アリゾナがテキサスより先に州版ビットコイン準備基金を実現するか?」と話題になっており、州政府によるビットコイン保有レースが一種の盛り上がりを見せています。
仮想通貨メディアのディグウォッチは「アリゾナ州は正式な仮想通貨準備投資政策を採用する態勢に入った」と報じ、業界団体Turning Point Actionも各議員の採決行動をスコアカードで公表しつつ法案支持を表明しています。
他方で伝統的な金融メディアや公共政策シンクタンクからは慎重論もあり、テキサス州の動きについて「黄金(ゴールド)の次はビットコインを州準備にするとは財政的な愚行だ」と批判的に報じたニュースもあります。とはいえ、州政府が仮想通貨を公式に保有・運用することへの関心は確実に高まっています。
州政府が連邦政府に先駆けてビットコイン準備資産を持とうとする動きは、2025年に入ってより一層顕著になっています。今回のSB1373およびSB1025の進展は、アリゾナ州が仮想通貨政策の最前線に立ったことを強く印象づける出来事となりました。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=150.61円)
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