ビットコイン価格「FRBの金融緩和・トランプ大統領の関税緩和」で底を打つ|10xリサーチ創設者
ビットコイン相場転換の可能性
仮想通貨調査会社10xリサーチの創設者マルクス・シーレン氏は2025年3月23日に、ビットコイン(BTC)価格が米連邦準備制度理事会(FRB)の金融緩和姿勢とトランプ米大統領の関税政策の軟化によって底を打つ可能性が高いとの見解を示しました。
シーレン氏は、FRBがインフレに対し強硬策を取らず、将来の金融緩和に向けた姿勢を示していること、そしてトランプ大統領が4月2日発動予定の追加関税について態度を柔軟にしたことが市場に安心感を与え「ビットコインは底値形成を試みている」との見解を示しています。
FRB、利上げ停止で緩和転換を示唆
3月19日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、市場予想通り政策金利の据え置きが決定されました。
パウエルFRB議長は記者会見で「足元のインフレ率は依然高水準だが徐々にペースが緩んでいる」と述べ、短期的な物価上昇圧力に目を配りつつも、利上げを急がない姿勢を明確にしました。
FRBは量的引き締め(QT)の縮小も発表しており、市場では「想定よりハト派(緩和的)」との受け止めが広がりました。シーレン氏もFRBの姿勢について「短期的なインフレ圧力を乗り越え、将来的な緩和の余地を残す内容だ」と評価しています。
一方で、FRB内の経済見通しでは今年のインフレ率が2.7%と上振れする予測が示されており、トランプ政権による輸入関税の引き上げが一時的に物価を押し上げる要因になるとの見解も示されました。
パウエルFRB議長の発言
トランプ大統領の関税柔軟化で市場に安心感
トランプ米大統領がカナダ・メキシコ・中国への高関税方針を打ち出し、世界的な貿易摩擦への懸念が強まっていました。
1月末には「メキシコとカナダに25%、中国に10%の関税を課す」と発表しましたが、その後一部関税措置を停止・延期する対応も取られています。3月に入り、自動車部品に対する関税適用を1ヶ月先送りすると発表したことで、株式・暗号資産市場は急速に反発しました。
ビットコイン価格もこの「関税猶予」報道を受けて一時90,000ドル台まで回復し、投資家心理の改善が見られました。
シーレン氏は「トランプ氏が強硬だった関税姿勢を軟化させたことがビットコインの底入れを支えた」と分析しており、関税リスク緩和による景気後退懸念の後退がリスク資産全般の下支え材料になったと指摘しています。
ビットコイン底値シグナルと強気相場の比較
今回の下落局面でビットコインは約2年ぶりに複数のテクニカル指標が売られ過ぎの水準に達しました。10xリサーチによれば、ビットコインの21日移動平均線は現在85,200ドル付近に位置しており、短期トレンドが好転し始めているといいます。
また、週次ベースのリバーサル指標も過去の強気相場が再開したタイミングと同程度まで低下しており、テクニカル的には、調整局面が終息に向かっているとの見方が強まっています。
下のチャートはビットコインの日次RSI(相対力指数)が直近で急低下した様子を示したものです。青色のラインがRSI、白色のラインがビットコイン価格の推移を示しています。
RSI値が30%台前半まで低下した局面(グラフ中の丸印)は、過去にも2023年7月や2024年8月に見られ、その後ビットコイン価格はいずれも反発に転じました。今回も3月中旬にRSIが35%付近まで低下した後、ビットコイン市場は回復の兆しを見せ始めました。
BTC価格の下落は一時的な調整か?
ビットコイン価格は直近の2ヶ月で約30%下落しており、一時は7万6,000ドル(約1,140万円)付近まで調整しました。
このような値動きについて、BitMEX元CEOのアーサー・ヘイズ氏は「過去最高値から36%の調整は強気市場でよくあるパターンだ」と指摘し、弱気相場入りではなく典型的なブルマーケット(強気相場)の調整に過ぎないとの見解を示しています。
ヘイズ氏は自身のX(Twitter)に「焦らずに待つことが大事です。BTCはおそらく70,000ドルあたりで底を打つでしょう」と投稿し、約11万ドルの最高値から3割強の下落幅で下げ止まるとの予測を述べました。
さらに「経済状況が悪化すれば各国中央銀行が金融緩和に転じ、再び暗号資産市場に資金が流入するだろう」として、金融当局の方針転換が次の強力な上昇トリガーになるとの見通しを示しています。
一方、著名アナリストのPlanB氏も強気姿勢を崩していません。同氏はオンチェーン指標から現在もビットコインは強気相場の途上にあると判断しており「強気相場では-20〜30%の調整は珍しくない」と指摘しています。
PlanB氏の予測では、ビットコイン価格は2025年末までに16万ドル(約2,400万円)に達し、その後も2026年に32万ドル(約4,800万円)、2027年に64万ドル(約9,600万円)と倍々で成長しうると述べています。
アーサー・ヘイズ氏「一般的な調整パターン」
関税・FRBの動きがBTCの鍵握る
現在、ビットコイン価格は86,000ドル前後(約1,280万円)まで回復し、直近安値から反発局面に入っています。
市場では4月2日に予定される米国の「相互関税」発動の行方に注目が集まっており、市場は最終的な決定を見極めようとしています。
仮に大統領が関税発動を見送るようであれば、企業業績や景気への悪影響懸念が後退し、ビットコインを含むリスク資産にとって追い風となる可能性があります。
また、金融政策面ではFRB高官の発言や経済指標に引き続き注意が必要です。トランプ大統領自身は「関税の影響が経済に浸透し始めている今、利下げに踏み切るべきだ」とFRBに圧力をかけており、今後インフレ指標が落ち着けば年後半にも利下げに転じるとの観測もあります。
総じて、FRBの金融政策転換への期待と、トランプ政権による貿易政策の柔軟化が重なり、ビットコイン市場は底入れの兆しを見せています。
ただし、10xリサーチのシーレン氏は「直ちにパラボリック(放物線的)な急騰が起こる明確な材料があるわけではない」とも述べており、90,000ドル付近には依然として強いレジスタンス(上値抵抗)が存在すると見られます。
長期的な強気シナリオに変化はないものの、目先は経済指標や政策動向に神経質な展開が続くと予想されています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=149.56円)
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Souce:10xリサーチレポート
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像