【前編】日本の強みを活かしたWeb3戦略 — gumi安積侑希が語る「推し活」の新たな形
「VR/ARの募集に応募したら、ブロックチェーン事業の責任者になっていた」
そんな偶然から始まったWeb3への旅が今、推し活の世界に革命を起こそうとしています。
鉄鋼商社から株式会社gumiへと転身した安積侑希氏が率いる「OSHI3」プロジェクトには、KDDIやTOPPANデジタルを含む17社ものアライアンスパートナーが参画。推し活とブロックチェーンが融合する新たな世界が今、動き始めています。
会計処理のルール作りから億単位のゲーム開発まで、上場企業がWeb3の荒波をどう乗り越え、次世代の推し活を実現しようとしているのか。"OSHI3"の名のもとに集う企業群と共に描く未来図に迫ります。
小林 憲人(こばやし けんと) 株式会社NFTMedia 代表取締役
2006年より会社経営。エンジェル投資を行いながら新規事業開発を行う株式会社トレジャーコンテンツを創業。2021年にNFT Mediaを新規事業として立ち上げる。「NFTビジネス活用事例100連発」著者。ジュンク堂池袋本店社会・ビジネス書週間ランキング1位獲得。
安積 侑希(あさか ゆうき) 株式会社gumi ブロックチェーン事業部
株式会社gumiのブロックチェーン部門で推し活×Web3プロジェクト「OSHI3」を統括。新規事業開発の企画からマーケティング、自社トークン「OSHI Token」のマーケット対応まで幅広く担当。鉄鋼商社で10年の勤務経験を持ち、中国・インドでの駐在を経てグローバルな視点を活かした事業開発に取り組む。
︎YouTubeでの視聴はこちら
ガラケー時代から始まったgumiの挑戦

小林:まずは安積さんご自身について、簡単に自己紹介をお願いできますでしょうか。
安積:株式会社gumiの安積と申します。gumiのブロックチェーン部門にて『OSHI3』プロジェクトの統括をしております。具体的な業務内容としては、新規事業開発の企画からマーケティング、『OSHI Token』という自社トークンのマーケット対応などもサポートしています。

小林:結構幅広くやられているんですね。
安積:そうですね!少数精鋭でやっているのもあるのかもしれませんが、割と一気通貫で自分で行っています。というか、自分自身もそれが好きなので、そうやっているという感じです。
小林:では、株式会社gumiがどんな会社か改めてご紹介いただけますでしょうか。
安積:株式会社gumiは2007年に設立された会社で、元々はモバイルゲームを作っていました。創業者の國光さんがWeb3に興味を持ちファンド事業を始めたことをきっかけに、ブロックチェーンのノード運用をしたり、ブロックチェーンのコンテンツ開発も始めたりしました。
そして現在はモバイルゲームとWeb3の2本の柱で、どちらもやっている会社になります。このようになったのが2〜3年前ですね。
小林:ゲームとWeb3の2本軸で事業を展開していて、ゲーム事業が2007年からということは、iPhoneが出る前からですよね。
安積:はい、ガラケー時代からの会社です。

小林:ゲーム会社として起業して成長され、2〜3年前にWeb3という事業の柱ができたと。ブロックチェーン事業の方ではどんなことをされているかをお伺いできますか。
安積:ブロックチェーン事業は大きく分けると三つあります。まずコンテンツ開発、いわゆる現場やプロダクト開発ですね。あとはノード運用、弊社ではアセットマネジメントと言っていますが、ノード運用を通じて収益機会の創出を目指しています。そして最後がファンド事業です。初期のgumi Cryptos CapitalやOpenSea、YGGなどへの出資をしており、この3つが大きな事業になっています。
小林:ファンドはWeb3事業の軸の中に入っているんですね。
安積:はい、そこからの繋がりでノード運用をさせてもらったりとか、それぞれの連携がある感じです。
小林:OpenSeaに投資されたのは、かなり早い段階ですよね。2〜3年前と言いながら、もっと前からキャッチアップされていたということでしょうか。
安積:確かにそうですね。会社としての柱になり始めたのは2〜3年前なんですけど、ファンド事業は黎明期から行っていました。
当時はまだ事業化というほどの規模ではなかったのですが、かなり早い段階から関わっていました。私もまだ入社していなかった頃です。
小林:そうなんですね。OpenSeaに早い段階で投資できたというのはすごいですね。
安積:身内ながら、すごいと思いますね(笑)。

小林:私にも教えて欲しかったです...(笑)。今その3つの事業は何人くらいで対応されているのですか。
安積:Web3を専業でやっているメンバーという意味だと、全体700名のうち20名から30名、業務委託の方を入れても30名以内という感じですね。
小林:他の事業プラスWeb3をされている会社さんに多いのは、専業としてはこういう人数だけど、マーケティング面のときに助けてもらうとか、企画のときに入ってくるパターンが多いですが、御社の場合もそんな感じですか。
安積:そうですね。ブロックチェーンゲームを開発する際は、その30名だけでは到底作れません。ゲームを開発しているスタジオ側のエンジニアやプランナーの方を入れて開発するので、1ゲームごとにプラス30〜40人ほど加わります。今だと50〜60人体制でいるということになります。
小林:ゲーム制作については無知なのですが、最低でも既存メンバーの他に30〜40人くらいが追加で必要なのですね。
安積:はい、開発するゲームの規模感にもよりますが、数億円規模のものを作るとなると、1プロジェクトで20〜30人くらい追加になることが多いです。
小林:力の入れ方もあると思いますが、人の配置の面でも、コンテンツ開発、ノード運用、ファンド事業の中で特に力を入れているところはどこでしょうか。
安積:全般的に力を入れていますが、私個人としてはコンテンツ開発がメインになっています。うちの部署にいるエンジニアの多くはノード運用やアセットの運用に集中していますし、アメリカにいるチームはクリプトファンドに注力しています。クリプト事業の中で3つの部門があって、それぞれが全力で取り組んでいる感じですね。
小林:なるほどですね。投資部門の方はアメリカにいらっしゃるんですね。
安積:そうですね。オンラインで連携はしますが、基本的にアメリカにいることが多いです。
元鉄鋼商社マンがWeb3業界に飛び込んだ理由
小林:株式会社gumiに参画されるまで、安積さんがどんなことをされていたか教えていただけますか。
安積:就活のときはgumiのような業界は見ていませんでした。海外に住んで仕事してみたいという思いがあり、商社やメーカーで就職先を探していましたね。
結果的に鉄鋼関係の商社に入り、「駐在して海外で働く経験を積みたい」という思いから、それができるまでは働こうと思って10年くらい鉄鋼商社にいました。
小林:10年は国内だったということですか。
安積:5〜6年目に一度中国に行き、中国で2年くらい働きました。その後また国内に戻ってきて、コロナになったときにインドに行くという...(笑)。

小林:え、コロナ禍はインドにいらっしゃったんですか。
安積:はい、2020年の10月くらいですね。インドが世界で一番コロナが流行っている時期がありましたが、その頃もインドにいました。
小林:確か2020年の1月ごろからコロナが広がりましたよね。
安積:そうですね、ちょうどその頃に行きました。リモート勤務でみんなフルリモートになっている中、なぜか私は駐在が決まり、「どこですか?」と聞いたら「インドです。」と言われて、「え、インドですか。」と若干動揺しました。
小林:周りがオンラインの中、逆行してオフラインに行かれたんですね(笑)。
安積:当時は送別会もしてもらえず、「いつの間にか安積はインドにいた」という感じでした(笑)。みんながオフィスに戻っていくころには、僕はインドにいるという状況です。
小林:海外で働きたかったという思いがあって駐在も2カ国行って、その後gumiに移られたわけですが、鉄鋼とWeb3って全然違う世界だと思います。その辺はどういった背景があったのでしょうか。
安積:タイミングとしては、インドでの勤務が終わり、そろそろ帰るかというのが見えてきた頃でした。帰国するにあたり、このまま今の会社で働くか、それとも違う業界に行くかを考えたのです。仕事をしている途中から、世の中のブームもあって、スタートアップや先端IT技術に興味を持ち始めていました。目的だった海外駐在を2回経験できたので、転職して違う世界を見てみたいという思いがあり、帰国のタイミングで転職活動を始めました。
ブロックチェーン業界を選んだのは偶然で、当時はまだブロックチェーンのポジションの募集はあまりなかったイメージでした。当時、gumiはVR/ARの事業で募集していて、私はそこに興味があったので応募したという流れになります。
小林:そうだったんですね。

安積:はい。ただ入社後に「ブロックチェーンに今後力を入れるから、君にはブロックチェーン事業をやってほしい」と言われたので、そこからブロックチェーンの勉強を始めて、キャッチアップしたという感じです。元々はVRなどに興味があってgumiに入ったんです。
小林:けど気づいたら…。
安積:気づいたらブロックチェーンの責任者になっていましたね(笑)。
小林:違うことに挑戦しようというのがきっかけで、スタートアップなどの面白さを感じられていたということですか。
安積:おっしゃる通りです。前職の会社は業界ではそれなりの大手で、安定して今のポジションを守るような業務が多かったのですが、当時の私は市場を取りに行くというか、一発逆転みたいなことができる仕事にもかかわってみたいという思いがありました。
そんな思いがあった中、インドや中国では日本のIPが結構人気で、日本人というと知っているアニメを言われることがあったので、エンタメ系とスタートアップとIPをうまく掛け合わせられないかなと考えていました。
小林:いわゆるヒット、二塁打を打った後、フルスイングのホームランを狙うんだ、というイメージで、新しいところにチャレンジしたかったわけですね。
安積:結果三振に終わるかもしれないですけど、そっちの方がやってみたいなという気持ちでした。
ゼロから構築したブロックチェーン事業の基盤

小林:そんなこんなでブロックチェーンの事業部に力を入れて入ったわけですが、入社当時と現在の業務内容をお伺いできますか。
安積:入社時のポジションとしては、出資の検討や投資管理(デューデリジェンス)が多い部署でした。Web3やWeb2に関わらず、出資案件を精査したり、既に出資しているところの企業価値を上げるとか、gumiとの連携を探るというのが最初の仕事でした。
ブロックチェーンに関わり始めてから一番最初にしっかりやったのは、暗号資産事業における会計処理や法律の整理です。gumiは上場企業なので、会計監査の方などに説明ができないと事業として進められません。
会計処理上、こういう行為はこう見なせるとか、法律的にもOKだということを「100本ノック」のように整理しました。こういうことをしたいと言うと赤ペンが入って返ってくるので、それにまた対応する、というのを2〜3ヶ月ずっと続け、ようやくOKをもらったのが最初の大きな仕事でした。
小林:元々、法務とか税務は前職でされていたわけではなかったんですか。

安積:法務はやっていませんでしたが、前職では営業というよりもCFO系の財務経理、投資系を長く見てきたので基礎はあったのだと思います。ただ経理をやったことがあるわけではなかったので、見よう見まねでちょっとずつやっていきました。
小林:下地は若干あったかもしれないけど、それでもWeb3の、しかも上場企業の会計基準に合わせてルールを揃えていくというのが最初の仕事だったんですね。
安積:そうですね。OpenSeaに作品を出したり、2次流通手数料が入ってくるといった場合、当初はそれがどういう会計上の整理になるのかという問題がありました。今までない概念で日本にはなかったものですから。
小林:勘定科目はどこになるんだろう...みたいなことですよね(笑)。
安積:そうです(笑)。他の似た商品もなくて。これはどうなのか、著作権に近いのかなど、手探りでした。自分の知識というよりは社内の経理の方や弁護士の先生、会計監査の方たちに教えてもらいながら整理していきました。
小林:やりたい方向が見えていたから、周りを巻き込んで力を借りながら進めていったということですね。最初にしては、かなりデカい仕事じゃないですか。
安積:そうですね(笑)。最初はブロックチェーンにそこまで詳しくなかったので、自分でやっぱり実際に体験してみないと説明もできないと思いました。NFTを買ったり、トークンを買ったり、ゲームをやったりして、セルフGOXしたりもしながら、こういうことに気をつけるべきだと実際に体験して学んでいきました。

小林:いや、素晴らしいなと思います。少し話が逸れるのですが、弊社もいろいろな企業からご相談をいただいて、ブロックチェーンやNFTをやってみたいという新規事業の担当者と話すことがあります。ですが、「NFT買ったことありますか。」と聞くと、「事業をやりたいんですけど、まだ買ったことないんです」という人が9割以上なんです。
安積:そんなに多いんですね...。
小林:はい、やっぱり実際に体験してみることから始めるというのは大事ですよね。
安積:逆に言うと、Web3の世界は難しいことが多く、読んでいるだけだとわからないことだらけだと思います。『電子署名』って何でしなきゃいけないのかもよくわからなかったのですが、実際にやってみて少しずつわかってくるイメージです。
小林:おっしゃる通りですね!すみません、ちょっと話が逸れてしまいました。話を戻しましょう。
最初は金融周りや法律周りの整備をされていたということですが、そこがgumiの下地になっていると思います。それが整ったあとはどんなことをされていたのですか。
安積:最初は投資の比率が高かったのですが、次第にブロックチェーン事業の割合が増えていきました。下地ができたところで「コンテンツを作ろう」ということになって、当時ブロックチェーンゲームが流行っていたこともあり、我々もゲーム会社なのでブロックチェーンゲームを作ることにしました。
自社開発のプロジェクトを進める一方で、ちょうどそのときさまざまな会社からお声掛けいただいて、他社もブロックチェーンゲームなどを出そうとしていたので、そういったところの企画やエコシステムの整理など、「こういうのだったらいけるんじゃないですか」といった提案の仕事が徐々に増えていきました。
小林:自社内のプロダクトに限らず、他社のプロジェクトもマーケットとして広めるという意味でサポートされていたんですね。

安積:そうなんです。具体的なことは言えないのですが、当時はさまざまな会社がWeb3に取り組もうとしていたので、いろいろな関係からお手伝いすることもありました。
小林:安積さんから見て、VR/ARの流れもあって今この場にいらっしゃると思いますが、ブロックチェーンやNFT、Web3についてどういう可能性を感じていますか。
安積:NFTやWeb3は、個人的にとても好きです。社会的に今、必須なのかと言われると、そうではないかもしれません。ただそれでも、NFTやWeb3を使うことで今の体験をもっと面白くできるという可能性はいろんなところに見出せますし、皆さんも試されています。
今ある価値体験をアップデートできるポテンシャルがあるので、引き続き伸びていくと思います。みんなが極めてどんどんいつかマーケットフィットするものを磨き続けていくんじゃないかと見ています。なので私も末席ながらこの世界にいるという感じですね。
持続可能なトークン経済を目指すOSHI3の構想

小林:OSHI3について詳しくお話を伺いたいのですが、そもそもOSHI3とは何なのかを皆さんにご説明いただけますか。
安積:OSHI3は名前の通り、推し活×ブロックチェーンで「新しい推し活体験を作ろう」というプロジェクトです。既存の推し活というのは、コンサートに行ったり、グッズを買ったりとリアル(フィジカル)寄りです。
それはそれで楽しいと自分自身も理解していますが、通信速度が上がったり、iPhoneがより高性能化したり、メタバースが進んでいくと、デジタル寄りの推し活(デジタルグッズやオンラインライブなど)がもう少し進んでいくと思います。そこの部分とブロックチェーンは相性が良さそうなので、今までにない体験ができないかということで作られたのがOSHI3です。

小林:好きなものを応援するというところにリアルだけではなく、トークンを使って応援していこうということですね。
安積:そうですね、トークンだったりNFTを使って。
小林:なるほど!ありがとうございます。なぜこの領域に取り組もうと思ったのか、「ここで行こう」と思ったところを聞かせていただきたいです。
安積:gumiでクリプトの知見が貯まってきて、他社さんもトークンを出したりしていたこともあり、自分たちでもトークンを出して経済圏を作ろうと考えました。
ゲーム会社ですので、最初はゲームトークンを出そうという話も出ていました。
ですが、周りのゲームトークンは一つのゲームに紐づいているため、そのゲームの人気が下がるとトークンも下落してしまうという課題があります。そういうトークンだと、言い方が悪いかもしれませんが少し「ポンジ的」になってしまいがちです。そうならないようなトークンにしたいということで、一つのプロダクトに紐づかない概念的、プラットフォーム的なトークンにしたいという思いがありました。
その中で自社がやれるエンタメという分野と、ゲームでIPをよく使っていたことから、日本の強みなどを総合的に含有できるテーマは何かと考えたときに、「推し」がいいのではないかという結論に至ったのです。推しをテーマにしてトークン経済圏を作れないかと考えるようになりました。

小林:確かに「推し」というテーマにすると、アイドルもスポーツ選手もゲームキャラクターも、それぞれみんなの好きなものになりますよね。それを全部横串でトークンやNFTとして活用できるようにするというのがOSHI3なのですね。
安積:そうですね!そこを目指して作られたプロジェクトだと思っていただければと思います。
デジタルグッズがもたらす新たなファン体験

小林:今までOSHI3を使って実際に行ったプロジェクトや代表的な事例を紹介していただけますか。
安積:元々モバイルゲームで人気だった「ファントム オブ キル」というIPがあります。これは美少女キャラクターが登場するシミュレーションゲームなのですが、それをブロックチェーンゲームにしました。
既存のファンの方が自分の好きなキャラクターをトークンを使って推して強化して、さらにそこから当時流行っていた「Earn」の要素も取り入れました。Web2.5くらいのような位置づけのプロダクトで、既存のWeb2ユーザーをWeb3に導けるようなゲームを作りました。
このゲームは無料ゲームランキングで当時1位になり、月間で30万人ユーザーくらいに遊んでもらいました。これまで出た国産のブロックチェーンゲームの中では、割と成功した方だと思います。

小林:Play to Earn要素を含めたからこそ、あれほどの人気を集めたのかもしれませんね。
安積:自分の育てたキャラをNFT化するというような、わかりやすいWeb3体験も入れました。それが一つ目で、もう一つ足元では、TOPPANさんと共同でプロジェクトしている『推し活ショーケース』があります。
今はオープンベータ版ですが、NFTや何かの行動履歴でもらったSBT(ソウルバウンドトークン)を自分の好きなデザインのレイアウトで展示したり、それを他の人が見に行ったりできる、というプロダクトを推し活の文脈で去年の12月くらいに出しました。
小林:それは、デジタルなマイルームのような場所に自分の好きなものをレイアウトして、それをお互いに見に行くことができるという感じですか。
安積:はい、そうですね。
小林:つまり、自分が持っているものを自分で楽しむだけじゃなく、他の人にも見てもらえるということですね。
安積:そうですね!そういうことを気軽にできるようになってほしいという思いと、まだ実現はしていませんが、公式のアイドルやアニメなどの運営側がユーザーの展示を検索して見に行けるようにしたいと考えています。
「この人はこんなに応援してくれている。だから何か特典をあげよう」というような、いわゆるブロックチェーンのトークングラフマーケティングをSBTやNFTで実現し、運営とファンが繋がりやすくするという世界を目指しています。これが今後の拡大方針です。
小林:なるほど、今お伝えいただいた二つに限らず、全体的に運営と購入者・ファンを近づけていこうと考えられているということですね。
先ほどの一つ目のゲームの例では、元々人気タイトルをWeb3のブロックチェーンゲームにしたということですが、既存のゲームユーザーとWeb3ゲーマーでは、まだまだ人数に差がありますよね。
そういう意味で、やはりWeb2側の今までのファンの方に遊んでいただきたいというのが、焦点として狙われていたところだったのですか。

安積:おっしゃる通りでして、ゲームを作る以上、ある程度の売上や事業計画を立てる必要があります。そのなかで、日本のWeb3ユーザーの方々、さらにその中でゲームをプレイする方々の人数を考えると、億円単位でかけたゲームが成り立つほどのユーザーボリュームを集めるのは難しいと思いました。
既存のIPのファンの方々も抵抗なく遊べるレベルのゲームを作れば、両立が多少はできるのではないかと考えて、その一作目のゲームを企画したのです。
小林:先ほど人数をお伺いしたように、ゲーム開発にもかなりコストがかかると思うのですが、今回の開発費はいくらくらいかかったのか公開されているんですか。
安積:公開はしていませんが、億は超えているというレベルです。
小林:ですよね(笑)。ビジネスとして先に回収していくことを考えると、マーケットサイズの広いところからスタートして、次のフェーズに進むという考え方があったわけですね。
地道にコツコツ。複数の大手とアライアンスを組むまで

小林:実際にOSHI3には17社が参画していますよね。先ほどTOPPANさんやKDDIさんなどがアライアンスを組まれていると伺いましたが、こうした会社との関わり方や反応、今後どのように進めていくかについてもお聞かせいただけますか。
安積:幸いなことに選んだテーマが「推し活」ということで、各社も関心を持っている分野だったこともあり、アライアンスを組んでいただいている大企業の方々も前向きにプロダクト開発を考えてくれています。既にトークンを出してプロダクトも作っているgumiと組むことに、多くの企業が前向きです。
今後もWeb3企業や海外の企業などとどんどん広げていきますが、日本の大手企業が参入すると市場も盛り上がるので、Web3を検討しているけどまだ踏み出せていないような企業とも、一緒にプロダクトを出してパートナーになってもらえるよう今年も活動していきたいと思っています。

小林:OSHI3に限らず、gumiさんは既に上場されていて事業を拡大している中で、この質問が適切かわかりませんが、この記事を読む方で大企業と連携してプロジェクトをやりたいという会社もあると思います。どうやって大企業と組めばいいのか、きっかけは何だったのかと気になっていると思います。組み方や連携のきっかけ、コツなどがあれば教えていただけると嬉しいのですが。
安積:なるほど(笑)。まず王道になってしまうかもしれませんが、Web3のイベントに来ていてブースを出している企業は、もう既にある程度本気です。彼らは自社プロダクトのマーケティングをメインに来ているわけですが、他にもいい案があれば取り込む余裕があります。
そもそもその分野に取り組もうとしているので、全く興味のない企業に比べたら話を聞いてもらいやすいという面があります。TOPPANさんとKDDIさんもそういう意味では、Web3の文脈が当時からあったので組みやすかったと思います。
また、博報堂さんとアイデアソンをやった例もあります。博報堂さんは推し活を詳しく研究したレポートを出していたので、それを知って自らお問い合わせフォームからメールを送りました。「gumiで推し活のプロジェクトをやっているので、Web3とは関係ないかもしれませんが、一緒に何かできませんか」と連絡して、何度か打ち合わせをしてパートナーになってもらいました。やりたいテーマの企業を見つけて、地道にアプローチするという感じですね。
小林:なるほど!裏技があるわけではなく、泥臭くきちんとやるべきことをやれよ、と。
安積:あと、弊社の場合はSBIさんが大株主として出資してくれていて、彼らは多くの繋がりを持っています。「日本デジタル空間経済連盟」という大きな団体も持っていて、そこでの紹介などもありました。
自社の株主やVCが投資しているところからの紹介を得るというのも、一つの方法かもしれません。
小林:最初のきっかけづくりで悩んでいる会社もあると思うので、とても参考になりました。公開していただきありがとうございます!

安積:いえいえ、とんでもないです!
小林:その中の何社かは、そういう流れで一緒にやるようになったということですね。
安積:そうですね。なかには向こうから「ぜひやりたい」と言ってくださるところもありました。
小林:そういう会社と今後もOSHI3のネットワークやアライアンスを広めていくということですね。(後編に続く)
次回予告
前半では安積氏の異業種からWeb3への転身、gumiのブロックチェーン事業の成り立ち、そして推し活×Web3プロジェクト「OSHI3」の立ち上げについてお伝えしました。後編では、さらに踏み込んだ内容をお届けします。
具体的には、Suiネットワークへの移行や海外展開戦略など「OSHI3」の未来像、Web3導入における苦労話、大企業とスタートアップの連携ノウハウなど。さらに、gumiが新たに立ち上げるコンサルティング事業「NSD」の詳細、そして業界全体の課題と展望まで、安積氏の豊富な経験と鋭い洞察から紐解いていきます。
また、安積氏がWeb3という激動の業界で大切にしている価値観や、これからWeb3に挑戦したい企業や個人へのアドバイスなど、実践的な知見も満載です。gumiと安積さんが描く未来の推し活とWeb3の姿をぜひお楽しみに。
The post 【前編】日本の強みを活かしたWeb3戦略 — gumi安積侑希が語る「推し活」の新たな形 first appeared on NFT Media.
参照元:NFT Media