米SEC、初の仮想通貨円卓会議「擁護派vs懐疑派」激論が交錯
「証券か否か」トークン規制めぐり議論白熱
米SEC(米国証券取引委員会)は2025年3月21日に、ワシントンD.C.の本部で、初の「仮想通貨円卓会議」を開催しました。
この会議は、仮想通貨資産の規制に関する主要課題を議論する新シリーズ「仮想通貨規制の明確化に向けた春のスプリント」の第1回目であり、トークンが「証券に該当するかどうか」という基準の明確化が議題とされました。
ロイターの報道によると、同タスクフォースを率いるヘスター・ピアース委員(共和党)は、SECの仮想通貨(暗号資産)規制に対するアプローチが「再スタートを切った」と述べ、新たな枠組み構築に向けて一般からの知見を積極的に取り入れる姿勢を示しました。
円卓会議には業界寄りの擁護派と、規制強化を主張する懐疑派の双方が参加し、仮想通貨規制の現状と今後をめぐって活発な議論が交わされました。
擁護派「仮想通貨には新たな規制枠組みが必要」
会議で仮想通貨産業の擁護派は、現行の証券規制ではデジタル資産の実態にそぐわないとして、新たなルール策定の必要性を訴えました。
ベンチャーキャピタル大手a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)で法務責任者を務めるマイルズ・ジェニングス氏は「仮想通貨トークンを株式と同じように扱う現状を改めるべきだ」と主張しています。
イーサリアム(ETH)などのトークンはアップル社の株式とは性質が異なり、従来型の証券と同一視できないと指摘し、仮想通貨に適した独自の規制枠組みを整備するよう求めました。他の参加者からも規制の不透明さがイノベーションを阻害しているとの声が上がりました。
規制の不明確さが損害を出した
懐疑派「現行法で十分、投資家保護を優先」
一方、仮想通貨に懐疑的な専門家らは、既存の証券法で仮想通貨市場に十分対応できており、新たな特例は不要と反論しました。
元SECネット取引部門責任者で弁護士のジョン・リード・スターク氏は「仮想通貨の購入者は投資家であり、SECの使命はその投資家を保護することだ」と強調し、仮想通貨企業が規制の網を逃れるため訴訟を長引かせていると批判しました。
さらにスターク氏は、現在の仮想通貨市場の多くは実用性に乏しく「もし明日すべての仮想通貨が消え去ったとして、投機目的で関与していない人々にとっては、仮想通貨が消滅しても実生活に支障はないだろう」と述べ、過度な投機に警鐘を鳴らしました。
懐疑派の参加者からは、既存法の枠内で十分対処できる以上、新規則で市場に特別な例外を設けることには慎重であるべきだとの意見も相次ぎました。
SEC仮想通貨規制の転換点
今回の円卓会議は、SECの仮想通貨規制方針における転換点とも言えます。ゲイリー・ゲンスラー前委員長の下、SECはガイドラインを示さずに訴訟を通じて規制を行う「執行による規制」を展開し、業界からは強硬姿勢だと批判されてきました。
2025年に入りゲンスラー氏が退任すると、共和党のマーク・ウエダ委員が委員長代行に就任し、ピアース委員主導で規制方針の見直しが進んでいます。
ピアース委員は円卓会議の冒頭に「実行可能な規制の枠組みを見出すため真摯に取り組む用意がある」と述べ、多種多様な仮想通貨をどのように分類すべきか議論を深めていく考えを示しました。
ゲンスラー氏退任発表で価格が反応
SEC、証券の定義明確化へ
SECの仮想通貨タスクフォースは、どのデジタル資産が証券に該当し、どれが非該当(証券ではない)かを識別しやすくする指針作りを目指しています。こうしたSECの動きは、2025年の政権交代に伴う米政府全体の仮想通貨政策転換とも連動しています。
ドナルド・トランプ大統領は3月初旬、仮想通貨戦略の策定に関する大統領令に署名し、業界リーダーとの会合をホワイトハウスで開催するなど、前政権による強硬な規制路線を見直す包括的な政策転換に着手しました。
また、2025年2月にSEC企業財務部門が「ミームコインは証券規制の対象外」とする見解を示しており、こうした方針転換に対してはウォーレン上院議員らが公開書簡で説明を求めました。
SECは今後も複数回の円卓会議を重ね、必要に応じてガイダンスの発出やルール整備を進めていく方針です。
ピアース委員はNFT(非代替性トークン)の分野も次の検討対象になり得ると示唆しており、仮想通貨規制の明確化に向けた取り組みはさらに加速していく見通しです。
SEC関連の注目記事はこちら