IDA、ステーブルコインで香港・日本間の貿易を簡素化へ|Progmat、Datachain、TOKIと提携
ステーブルコイン決済による貿易革命
香港に拠点を置くデジタル資産プラットフォーム企業IDAは2025年3月21日、Progmat(プログマ)、Datachain(データチェーン)、TOKI(トキ)との協業により、香港と日本間の貿易取引決済にステーブルコインを活用する共同実証実験(PoC)を開始することを発表しました
公式発表によると、今回の実証実験では、香港ドルおよび日本円に連動するステーブルコインを活用し、従来の銀行送金よりも低コストかつ迅速な国際送金手段の確立を目的としています。
また、IDAは香港ドル連動のステーブルコインを提供し、Progmatは日本円連動のステーブルコインを発行・管理、Datachainは異なるブロックチェーン間の相互運用を担います。そして、Tokiはクロスチェーンのインフラ基盤を提供し、送金フローを支援する役割を担うと説明されています。
香港で仮想通貨規制が進む
高額な国際送金手数料の現実
香港と日本間の貿易は、年間約3,000億香港ドル(約5兆8,000億円)に及びますが、現状の銀行を経由した国際送金では、着金に数日を要することがあります。
また、世界銀行の調査によると、国際送金手数料は平均6.35%と高止まりしており、企業にとって大きな負担となっています。
今回IDAが推進するステーブルコインを用いた貿易決済は、従来の高コスト・時間のかかる送金に代わる手段として、コストとタイムラグの大幅な削減が期待されています。日本では2023年6月に改正資金決済法が施行され、ステーブルコインを用いた送金が法的に認められるようになりました。
香港でも同様に規制整備が進んでおり、両国間でのデジタル通貨活用の機運が高まっています。
広がるステーブルコイン活用
今回のIDAによる取り組みは、国際貿易の分野でブロックチェーン技術とデジタル通貨を活用する潮流の一例と見られています。海外では既に大手金融機関や決済ネットワークがステーブルコイン等を用いたクロスボーダー送金の実験を進めています。
米Visa社は2023年、ステーブルコイン「USDC」をイーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)上で活用し、決済ネットワークの一部清算に使用するパイロットプログラムを開始しました。Visaのカイ・シェフィールド氏は、国境を越えた決済の迅速化と利便性向上を目指すと述べており、既に数百万ドル規模のUSDC決済が処理されています。
香港でも金融機関によるステーブルコイン活用が進んでいます。2025年2月にはスタンダードチャータード香港やアニモカ・ブランズなどが、香港ドル連動型ステーブルコインの発行に向けた合弁会社を設立すると発表しました。香港金融管理局(HKMA)のサンドボックスを経て、規制に準拠したステーブルコインの提供を目指しています。
また、米ペイパルは2023年に独自のステーブルコイン「PayPal USD(PYUSD)」を発行しました。ステーブルコインを活用したこれらの取り組みは、国際貿易決済のあり方そのものを変革する可能性を秘めているとして注目を集めています。
貿易決済は次世代へ進化
今回発表されたIDAと各社の実証実験は、以上のような世界的潮流の中で、日本と香港という二つの市場を結ぶ具体的なユースケースとして位置付けられます。
国際貿易とブロックチェーン技術の融合は始まったばかりですが、もし実用化に至れば輸出入代金の受け渡しがよりシームレスになり、企業にとっても新たな選択肢となるのかもしれません。
今回のPoCの成果は、今後の貿易決済の在り方に一石を投じるものとして、国内外の関係者から注目を集めています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1香港ドル=19.205円)
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Souce:IDA公式発表
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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