2025年2月NFT市場動向レポート|取引高は12月から60%超のダウンを記録
2024年末から続いていたNFT市場の盛り上がりは、1月に続いて2月も大きく失速する結果となりました。
主要チェーンの売上高は軒並み落ち込み、米国の関税措置やByBitのハッキングなどの悪材料も重なって市場全体が弱気ムードに包まれています。
本レポートでは、2025年2月におけるNFT市場のデータを分析し、今後の動向について考察します。
- 2025年2月のNFT取引高は前年12月比で60%以上の大幅ダウンを記録
- 市場全体の売上高は前月比25%、取引量は約50%も減少
- イーサリアムでは売上高が3〜4割下落
- ByBitでのハッキング事件や米国の関税措置などの悪材料が大きく影響
- Baseは1,450万ドル超の売上を維持、AbstractやBerachainなど新興チェーンへの関心が高まる
- OpenSeaは$SEAとOS2ベータ版の導入により、収益・ユーザー数・収益面の3つで首位を奪還
- ロイヤリティ収益ではPolygon上のDewが首位の座を獲得
- 国内サービスのメルカリNFTが約1ヶ月で約3,800万円の取引高を記録
市場概要
2025年2月のNFT市場は、1月に引き続き縮小の傾向にあり、市場全体が再び低迷に陥った印象を受けます。
DappRadarやCryptoSlamによれば、前月に比べて売上高・取引量がそれぞれ25%・50%程度落ち込み、2024年末に見られた「回復の兆し」が急速にしぼんだ模様です。


2月上旬には、トランプ政権が発表した貿易関税の影響や、海外の大手取引所ByBitで起こった推定14億ドル規模のハッキング被害といった悪材料が重なり、ビットコインやイーサリアムの価格下落と連動する形でNFTへの投資マインドが急速に冷え込みました。
イーサリアムを中心とした主要チェーンでは、売上高が全体的に減少し、冬の時代の再来を懸念する声が高まっています。一部のブルーチップNFTはフロア価格を維持しているものの、全体的には高額取引の件数が減少。カテゴリーやチェーンによっては4〜5割もの落ち込みが見られました。
もっとも、AIやスポーツを活用したNFTは相対的に堅調で、BaseやBerachainといった新興チェーンにも引き続き注目が集まっている点は、市場にわずかな明るさをもたらしています。
3月以降の回復を期待する声も根強く、今後は規制やマクロ経済の動向、そして新興チェーンにおける新たなプロジェクトの登場によって、市場の方向性が左右されるでしょう。
チェーン別動向
2025年2月は、イーサリアムやビットコイン、ソラナ等の主要チェーンだけでなく、ポリゴン、Baseなどの新興・拡張チェーンを含め全体的に売上高が大きく落ち込みました。

イーサリアムNFTの売上高は前月比43.21%の減少が報告され、ビットコインもOrdinal系のブームが一巡して25.24%のマイナスとなっています。
ポリゴンは前月に比べて、ユーザー数こそ微増が確認できるものの、金額ベースの取引量は4〜5割近く落ち込んだとのデータもあり、1月までの勢いが足踏み状態になった印象です。


一方で、Baseは1月ほどの急伸こそ見られないものの、月間で1,450万ドル程度の取引高を維持し、一定の注目を集め続けています。さらにAbstractチェーンや2月にメインネットを公開したBerachainなどレイヤー1/2を問わず新興チェーンへの関心が高まっており、ユーザーが分散しつつあることが全体の取引量データからも伺えます。
マーケットプレイス別動向
NFT市場全体の売上が落ち込んだ2月ですが、その中でも主要マーケットプレイス同士の競争は引き続き激しく展開しました。

2025年2月において、最も存在感を放っていたのはOpenSeaです。
市場全体の冷え込みに伴って金額ベースでは下落したものの、ユーザー数や取引高、収益面の3点でトップに躍り出ました。
これは同月13日に発表された$SEAトークンの発表が、大きく影響していることが考えられます。
同時にOS2のオープンβ版ではXPと呼ばれるポイント制度が提供され、ユーザー数・取引高ともに急増したと考えられます。
前年の11〜12月に急伸したBlurは、1月までイーサリアムNFTの取引シェアを独占していたものの、2月は上述した理由でOpenSeaに続く2位となりました。ただし、他のマーケットプレイスに比べて低コストでの取引ができる点で、一定のトレーダーをつなぎ止めているようです。

また、マルチチェーン対応を強化するMagic Edenは、1月のAbstractチェーンに続けてBerachainでの取引を取り込みながらユーザー数を増やし、2月の収益でも上位に位置しています。
ちなみに、Magic Edenの公式Xによると、メインネットリリース1日目におけるNFT取引量の95%がMagic Edenにて行われたと発表しています。
Day 1 on Berachain is a wrap
— Magic Eden
95% of all Bera NFT trading volume is on Magic Eden. pic.twitter.com/mKTQtCDA3u(@MagicEden) February 7, 2025
しかしながら、市場全体の売上が減少傾向にあったことで、同プラットフォームの取引金額も前月比で50%近くの下落を記録。ただし、新規ユーザーの獲得に成功しているという見方もあります。
一方で手数料収益やロイヤリティについては、OpenSeaとMagic Edenを差し置いてDewが首位を記録しました。
DewはPolygon上で展開されるNFTアグリゲーター兼マーケットプレイスです。PolygonやUSDCの発行体であるCircle社から1,000万ドルもの出資を受けたことで知られています。
ロイヤリティで首位となった背景としては、Polygon上で注目を集めているCourtyardの「Tokenized Collectibles」が一因と考えられます(参照:DappRadar)。このプロジェクトは、Brinkによる保管体制のもとで実物のコレクションカードをNFT化し、Polygon上でトークンを発行することで、従来のコレクターとWeb3ユーザーの双方にアピールしている点が特徴です。こうした実物資産とデジタル資産の融合がDewの活況に貢献し、結果として高いロイヤリティ収入をもたらしているとみられます。
実際に、DuneでCourtyardに関するデータを見てみても、カードをトークン化した回数・二次取引量ともに1月中旬から2月にかけて増加傾向にあることがわかります。

総じて、2月は市場全体の縮小が大きく響きましたが、各マーケットプレイスともに新たなユーザー獲得や対応チェーンの拡大などを通じてシェア拡大を図っており、3月以降に再び大きく盛り上がるきっかけを模索している段階だといえるでしょう。
主要NFTコレクションの動向
2025年2月は市場全体の取引高が落ち込んだことで、多くのコレクションが高額取引の減少やフロアプライスの下落を余儀なくされました。

とりわけ、1月に勢いを見せたコレクションの一部は、2月に入ってから明確な調整局面を迎えています。ただし、CryptoPunksやBAYCのようなブルーチップは依然として比較的高値圏を維持しており、ベアマーケットの中でも一定の需要を集めているようです。
CryptoPunksは数十万ドル規模の売買が複数確認され、取引数自体は前月比で50%も減少したものの、唯一無二の地位を支える安定したコミュニティが引き続き存在感を放っています。

Azukiもアニメ関連の取り組みやコミュニティ活動を通じて、コレクターや投資家の興味をつなぎとめることに成功しており、フロアプライスの下落幅は比較的小さかったと報告されています。
一方、Doodlesは2月に入りやや落ち着きを取り戻し、取引高は前月比で122.22%の増加を記録しました。同プロジェクトは独自トークン$DOODの発行を発表したり、新コレクションをリリースしたりと低迷する市場の中で活発な動きを見せており、それが今回の結果につながったと考えられます。
また、3位の「Kaito Genesis」は、イーサリアム上のWeb3情報プラットフォーム「Kaito」によるコレクションで、2025年2月にはNFT保有者向け投票権の拡大と$KAITOトークンの発行を実施しました。その結果、取引高は前月比+268%と急増する一方、フロア価格は一時11.28ETHまで上昇。AI技術による情報収集という独自性が注目され、弱気相場下でも投資家の関心を集めています。
国内のNFT市場動向
2025年2月における国内のNFT市場は、グローバル市場とは打って変わって、全体的に盛り上がっていたように感じられます。
下記は、国内発のNFTプロジェクトを扱うランキングサイト「NFTRanking」のデータを引用したものです。

前月にもトップ10入りを果たしていたコレクションの取引高を比較すると下記の通り。
コレクション名 | 前月比 |
Murakami.Flowers Official | +100.06%(49.43→98.89ETH) |
CNP/CryptoNinja Partners | +64.78%(15.02→24.75ETH) |
SnpitCameraNFT | +28.57%(14.98→19.26ETH) |
MEGAMI_NFT | +41.02%(8.02→11.31ETH) |
San FranTokyo Visions | -50.89%(12.38→6.08ETH) |
上記以外のコレクションについては、前月ランク外であったため、かなりの増加率になると予想できます。
この盛り上がりの背景には、メルカリNFTの存在が大きく影響している可能性が高いと言えるでしょう。
メルカリNFTは1月29日にリリースされたNFTマーケットプレイスで、メルカリポイントやメルペイ残高でNFTを取引できます。
暗号資産やウォレットの準備が不要なため、既存のメルカリユーザーであれば、普段のお買い物と同じ感覚でNFTを買えるのが特長です。
リリース当初は賛否両論の分かれたサービスですが、3月1日時点におけるオンチェーンデータを見ると約3,800万円の取引高を記録していました。

リリース当初の反応を見る限り、既存のWeb3ユーザーからは批判的な意見が少なくなかったため、メルカリNFTで取引を行う人の多くは今までNFTを取引した経験のないWeb2ユーザーだと考えられます。
こうした国内NFT市場の動きを振り返ると、大手企業の参入による新たな需要の呼び込みや、これまでNFTに触れてこなかった層の取り込みが、想像以上に大きな効果を生んでいる様子がうかがえます。特にメルカリNFTのように暗号資産やウォレットを不要とする仕組みは、Web2ユーザーが抵抗感なくNFTを購入できる点で画期的です。
一方で、過去のNFTブーム期と比較すれば、まだまだ取引額が飛躍的に伸びたとは言い難く、今後のさらなる成長は大手企業やクリエイターの継続的な取り組みにかかっているといえるでしょう。全体としては、グローバル市場の冷え込みのなかでも国内ならではのユーザー参加が加速し始めており、ここで築かれた新たな基盤が3月以降のさらなる発展につながるか、引き続き注目が集まります。
2025年3月以降のNFT市場動向予測と期待、リスク要因
2025年2月は、1月に引き続き売上高や取引量が大きく低下し、全体として停滞感が漂いましたが、新興チェーンやスポーツ・AI関連NFTの堅調さなど、依然として明るい材料も見られます。ここでは、3月以降に向けての市場展望と、依然として懸念されるリスク要因について整理します。
期待される動向と展望
2025年2月の下落によって市場が急速に冷え込んだとはいえ、BaseやBerachainといった新興チェーンではユーザー数や取引件数が底堅く推移しており、独自のエコシステムが形成されつつある点は見逃せません。これらのチェーンを中心に、新たなプロジェクトがローンチされる動きが加速すれば、NFT全体が再び盛り上がるきっかけになる可能性があります。
また、スポーツやAI分野のNFTが2月も一定の需要を保持していたように、今後はカテゴリーごとの個性がより際立ち、分散的に市場が伸びる展開が考えられます。
さらに、米国や欧州の規制整備が進み、ステーブルコインやブロックチェーン技術に対する法的基盤が整うことで、投資家がNFTをはじめとする暗号資産に対してより安心して取り組める環境が生まれる可能性もあります。そうした外部要因が好転すれば、NFTマーケットプレイス間の競争も一段と活発化し、新規参入者が増えることで売上や取引量の回復が見込まれるでしょう。
潜在的なリスク
一方で、2月に表面化した複数のリスク要因が引き続き市場の重石となる懸念もあります。暗号資産全般が持つボラティリティや、トランプ政権の貿易政策、各国中央銀行の金融政策など、マクロ環境の変化が投資マインドを大きく左右しやすい点には注意が必要です。
また、セキュリティ面での問題も深刻です。2月に報じられた大手取引所のハッキングによる巨額被害などは、投資家だけでなく一般ユーザーのNFT取引意欲をそぎ、市場の回復を遅らせる可能性があります。ウォッシングトレードや詐欺的なプロジェクトも依然として後を絶たないため、市場全体として透明性や安全性を高める取り組みが求められるでしょう。
まとめ
2025年2月のNFT市場は、グローバル全体で売上高が大きく落ち込むなど厳しい状況が続きましたが、国内市場ではメルカリNFTなど新たなサービスが一般層への浸透を進め、Baseなどの新興チェーンにも活況の兆しが見られるなど、悲観一色とは言えない様相を呈しています。
3月以降は、スポーツ・AI関連のNFTや、大手企業の参入による実需創出、そして複数チェーンへのユーザー分散といったプラス要素が相まって、市場が再度勢いを取り戻す可能性が期待されます。一方で、グローバル経済の先行き不透明感やセキュリティ上のリスクは依然として残っているのも事実です。こうした状況をどう乗り越えていくかが、NFT市場が持続的な成長を実現できるかどうかの分岐点となるでしょう。
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参照元:NFT Media