暗号資産税制の大改革案「申告分離課税20%」などを提言|自民党web3WG

自民党Web3WG、暗号資産税制の大改革案「申告分離課税20%」などを提言(LDP Web3WG proposes major crypto tax reform, including 20% separate taxation)

暗号資産税制の改革案を発表

自民党のデジタル社会推進本部が設置するWeb3ワーキンググループ(web3WG)は2025年3月6日、暗号資産の利益に対し一律20%の申告分離課税を適用するなどの税制改正案を発表しました。

暗号資産を金融商品取引法(金商法)上の新たな資産カテゴリーとして位置づける制度整備も提案しており、現行の雑所得扱い(最大55%課税)から金融所得扱い(20%課税)への移行を目指し、投資家保護と市場発展の両立を図るものとしています。

なお、今回の制度改正案については、3月31日まで広く国民からの意見・提案を募集し、4月に自民党本部として金融庁へ提言を行う予定とされています。

今回示された提案の柱は大きく5つあり、詳細は以下の通りです。

暗号資産の利益に対する20%の申告分離課税の導入

web3WGの画像自民党web3WG資料

現状、個人が暗号資産の売買で得た利益は雑所得として総合課税され、他の収入と合算して課税されます。累進税率の下で税負担は「最大55%(所得税45%+住民税10%)」にも達し、株式やFX取引の20%分離課税と比べ”極めて重い負担”となっています​。

これを金融所得課税に改め、株式投資など他の金融商品と同様に20%の定率課税とすることで、暗号資産投資に公平な税制環境を整えることを目指しています​。

併せて、暗号資産取引の損失繰越控除を3年間認めることや、デリバティブ取引(先物取引等)にも同様の課税方式を適用することも提案に含まれています​。

暗号資産による寄附に係る所得税の見直し

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現行では、個人が保有する暗号資産を他者や団体に寄附した際、その時点の時価が譲渡所得(雑所得)として寄附者の課税所得に算入されます(所得税法40条1項1号、施行令87条)​。

取得時より値上がりしていた暗号資産を寄附した場合に、その含み益に対して課税されてしまい、寄附行為自体が税負担を生む仕組みが問題視されていました。この取り扱いが暗号資産による寄附を阻害しているとの指摘から、提言では現行法40条・施行令87条の一律適用を見直すよう求めています​。

具体的には、他の資産と同様に所得税法59条を適用し、法人等への寄附など一定の場合のみ時価課税とすること、また時価課税とならないケースでは租税特別措置法40条の適用を明確にすることなどにより、暗号資産による寄附に課税上の障害が生じないよう制度を整備すべきと提案されています​。

暗号資産に関わる資産税(相続税・贈与税)の負担軽減策

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現行制度では、被相続人が保有していた暗号資産は相続時点の時価で評価され相続税が課されますが、取得費(元の購入価格)は被相続人のものを引き継ぐため、後に相続資産を売却して得た利益には取得費加算の特例(相続税相当額を取得費に加算できる措置)が使えず、二重に重い課税となる可能性が問題視されています。

また、暗号資産は価格変動が大きく、相続直後に価値が下落した場合でも相続税評価は高値のまま固定されるため、相続した暗号資産の価値を超える過大な税負担が生じるリスクも指摘されています​。

今回の提案では、相続した暗号資産を売却した際の所得計算について、取得費加算の特例の適用対象に加えるよう求めています​。これが認められれば、相続時に支払った相続税相当額を譲渡所得の取得費に加算でき、後日売却時の課税所得を圧縮することが可能になります。

加えて、相続税評価においては評価時点の柔軟化を提案しています。具体的には、上場株式の評価方法に倣い、相続日の終値だけでなく相続月以前3ヶ月の平均時価のうち最も低い価格を選んで評価額とすることを可能にする案となっています​。

暗号資産同士の交換取引の非課税化(課税繰延べ措置)

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現行制度では、暗号資産同士のトレードも一度資産を譲渡したものとみなされ、その都度含み益に課税されます。

今回の提案では、暗号資産から別の暗号資産への交換時には課税せず、保有する暗号資産を法定通貨(円など)に換金した時点でまとめて課税対象とすることを検討すべきとしています​。

暗号資産間の取引による利益は一旦課税を繰り延べ、最終的に法定通貨に換えたときに課税する方式です​。提言書では、こうした仕組みの導入には新たな計算方法の検討が必要になるため課題は残るものの、まずは前述の他項目(分離課税や寄附・相続の見直し)を優先すべきであるとも記されています。

金商法上の新たな区分としての位置づけ

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現在、ビットコイン(BTC)などは主に資金決済法で「暗号資産(仮想通貨)」として規定されており、証券やデリバティブなどを扱う金商法上は「金融商品」に含まれていません。

しかしweb3WGは、暗号資産が既に1,100万以上の口座で取引され約2.9兆円の預かり資産がある現状を踏まえ「金商法の枠組みに暗号資産を組み入れるべき」と提言しました​。

ただし、従来の株式などの有価証券とは異なる特性があるため、”暗号資産”として独自のカテゴリを新設し、情報開示や取引ルールを暗号資産の実態に即した形で整備する方針です​。

発行元に対しては証券ほど厳しい開示義務は課さず、代わりに「交換業者(暗号資産取引所)に必要な情報提供義務を負わせる」といった仕組みが想定されています​。

現行税制の問題点:55%の重税と不公平に募る不満

暗号資産を取り巻く現在の税制には、ユーザーや業界から以前より不満の声が上がっていました。その最大の要因が税負担の重さです。広く知られている通り、暗号資産の利益は「最大55%」の税率が課されます。

これは株や投資信託の売却益(20%)と比べても過剰で「利益の半分以上が税金で消える」と揶揄される状況でした。実際、強気相場で大きな利益を得ても、その翌年の確定申告で半分以上を納税しなければならず、手元に残る利益が大幅に目減りします。

「税金のために利確を躊躇してしまう」「これでは日本で稼いでも報われない」といった声も投資家からあがっています。また損益通算や損失繰越が認められないために生じる不公平も指摘されてきました​。

Astar Network創業者でStartale Labs CEOでもある渡辺創太氏は、自身の経験として「アスターをローンチした際、自分の保有トークンの期末評価額が約2,000億円になり、そのままだと300億円の税金を支払う状況だった」と語っています​。

実際には「評価益」という現金収入がない状態で巨額の納税義務が生じるため、「税金を支払うためにプロジェクト自体を売却せざるを得ない」という本末転倒なリスクがあったことが明かされています。

この問題は、渡辺氏が拠点をシンガポールへ移したことから、業界内では「渡辺創太問題」とも呼ばれ、スタートアップ企業が日本から流出する一因ともなっていました​。こうした事例も象徴するように、現行税制は革新的なWeb3ビジネスの育成を阻害しかねないとの危機感が広がっています​。

加えて、国外との税制格差も無視できるものではありません。米国をはじめ主要国では、暗号資産の利益に対して日本より低い税率での課税(キャピタルゲイン課税)が主流であり、この点でも日本の投資家・企業はハンデを負っているのが現状です​。

日本の税改正における業界の反応

今回の自民党web3WGによる提案に対し、国内外の関係者から様々な反応が出ています。渡辺氏は、以前から日本の暗号資産税制の問題点を指摘し改革を求めてきた一人です。

同氏は税制要望の政府提出に携わった2024年7月、自身のX(旧Twitter)で「要望を提出させていただきました。世論が大事なので応援よろしくお願いします」と投稿し、税制改正には世論の後押しが不可欠だと強調していました​。

今回の提案公表を受け、同氏は「政府は日本の業界リーダーと対話を重ねており、これはその協力関係が生んだ素晴らしい成果と言える」と述べ、税制整備への期待感をにじませています。

日本では、仮想通貨は証券としてではなく、新たな資産クラスとして金融商品取引法の新たな枠組みで規制される可能性が高い。この法案が成立すれば、業界にとって大きな追い風となるだろう。

政府は日本の業界リーダーと対話を重ねており、これはその協力関係が生んだ素晴らしい成果と言える。

一方、海外からも日本の動きに注目が集まっています。最大手仮想通貨取引所Binance(バイナンス)のCEOであるリチャード・テン氏は、先日都内で開催されたフォーラムにおいて日本の規制環境を賞賛しました。

テン氏は「日本では昨年時点で1,100万人もの人々が暗号資産取引口座を持っている」と具体的な普及ぶりに言及しつつ「健全で長期的な産業発展のためには明確で透明性の高いルールが必要だ」と指摘しています​。

また、著名な仮想通貨アナリストであるスコット・メルカー氏は、自身のX(Twitter)で「この法案が成立すれば、日本は暗号通貨に最も友好的な主要経済国の1つになる」と述べています。

🚨 日本が仮想通貨の税制大幅見直しへ-与党が株と同じ一律20%課税を提案 🚨

仮想通貨の普及を阻む最大の要因の一つは、高い税負担です。
この法案が成立すれば、日本は主要経済国の中でもトップクラスの仮想通貨に友好的な国となります。

他の国も見習うべきではないでしょうか?

税制改正が日本復活の鍵

金融庁はすでに、有識者による非公開の勉強会で制度設計の検討を進めており、2025年6月中に方針を公表する見通しとされています​。この方針には税制改正の具体案や関連法改正の方向性が示される見込みで、そこで政府としての最終判断材料が揃うことになります。

総じて、暗号資産を巡る税制は2025年に大きな転換点を迎える可能性があるものと見られています。ユーザーから長年求められてきた20%分離課税が実現すれば、日本の暗号資産市場にとって画期的な追い風となり得ます。

今後数ヶ月の動向によっては、投資家が来年以降に支払う税金の計算方法が大幅に変わるかもしれません。

かつて”仮想通貨先進国”とも言われていた日本ですが、各国に大きく差をつけられている現状を打破できるかどうか、その命運を握る税制改革の行方に大きな注目が集まっています。

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Souce:塩崎彰久議員note
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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