ブケレ大統領「ビットコイン追加購入」継続を示唆|IMFの要求を拒否か
ブケレ大統領「ビットコイン購入は止まらない」
エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は2025年3月5日に、IMF(国際通貨基金)からのビットコイン購入停止要請を拒否し、今後も購入を続ける意向を明らかにしました。
ブケレ大統領はX(旧Twitter)の投稿で「今も止めないし、今後も止めることはない」と投稿し、ビットコイン(BTC)購入を示唆しています。
“This all stops in April.” “This all stops in June.” “This all stops in December.”
No, it’s not stopping.
If it didn’t stop when the world ostracized us and most “bitcoiners” abandoned us, it won’t stop now, and it won’t stop in the future.
Proof of work > proof of whining https://t.co/9pC0PoY3YQ
— Nayib Bukele (@nayibbukele) March 4, 2025
「4月で終わる」「6月で終わる」「12月で終わる」
いや、終わらない。
世界から孤立し、多くの“ビットコイン支持者”から見放されたときでさえ止まらなかったのだから、今もこれからも止まることはない。
同国政府は、財務戦略の一環として「1日 1BTC」の定期購入を続けており、3月4日にも1 BTCを追加取得しています。現在、エルサルバドル政府が保有するビットコインは約6,101 BTC(5億4,000万ドル/804億円)相当で、国家レベルでのビットコイン保有量では世界6位に位置しています。
1日1BTC購入戦略
IMFが求めるビットコイン購入制限
IMFは3月3日、エルサルバドル向けに14億ドル(約2,100億円)の融資枠に関する延長協定を公表し、その中で同国政府によるビットコインの「自主的な積み増し」を行わないよう求めました。
具体的には、プログラム期間中の公的部門によるビットコインの新規取得上限を”0″とする条件が明記され、政府による追加購入を事実上禁止する内容となっています。
さらに、公共部門によるビットコイン採掘活動の停止や、ビットコイン建てまたは価格に連動する債務やトークン化金融商品の発行を行わないよう制限することも要求されています。
また、国営の仮想通貨ウォレット「Chivo(チボ)」から政府が手を引いて段階的に廃止することや、政府のビットコイン信託基金を2025年7月までに清算すること、政府保有のビットコインアドレスを公開して透明性を高めることなども合意条項に含まれています。
IMFからの融資条件
融資破棄のリスクとビットコインへの執着
IMFは2月末に14億ドルの融資を承認し、エルサルバドルに「約1億1,300万ドル(約170億円)の即時支払いが可能」と声明を出しており、今回、その中での追加購入と購入継続が示唆されたことで話題を呼んでいます。
記事執筆時点でIMFからの動きは見られていませんが、ブケレ大統領がビットコイン購入を続ければ、将来の融資トランシェ(分割払い)の停止や契約そのものの破棄につながる可能性もあると指摘されています。
こうしたリスクがあるにもかかわらず、ブケレ大統領がビットコイン購入に固執する背景には、ビットコインが同国の経済戦略において重要な地位を占めていることがあげられています。
エルサルバドル政府はビットコインを「戦略的な外貨準備」と位置付けており、法定通貨から外すことなく国庫に積み増していく方針を繰り返し表明してきました。
これらのビットコインへの深いコミットメントは、国内外のビットコイン支持層からの支持を取り込み、長期的な経済独立や成長につなげる狙いもあると見られています。
ブケレ大統領に賛否の声
エルサルバドルの「IMF融資 vs ビットコイン戦略」の綱引きに対し、金融業界や仮想通貨業界からさまざまな声が上がっています。
仮想通貨支持派からは、ブケレ大統領の毅然とした態度を称賛する意見も少なくありません。米ストラテジー(旧マイクロストラテジー)社のマイケル・セイラー会長は、ブケレ大統領の投稿に対して「ビットコインの普及は止めることができない」とコメントし、その決断を称えています。
Bitcoin adoption is unstoppable.
— Michael Saylor
(@saylor) March 4, 2025
エルサルバドル政府内からも、国家デジタル資産委員会(CNAD)会長のフアン・カルロス・レジェス氏が「このメッセージは大きな変化のきっかけとなる」とブケレ大統領の発信を支持する旨をX上で表明しています。
一方で、ブケレ大統領の姿勢に懐疑的な見解を示す専門家もいます。ビットコイン債券「ボルケーノ債」の立ち上げに関与したサムソン・マウ氏は、ブケレ大統領に対し「IMF合意に定められた制約の中でどのようにビットコイン備蓄を続けるのか」と説明を求めました。
また、エルサルバドルでビットコイン教育に取り組む非営利団体Mi Primer Bitcoin創設者ジョン・デネヒー氏も「IMFの文書には購入停止と書かれており、政府はそれに同意したはずだ。この文書が誤りなのか、それとも守らないつもりなのか、はっきり示すべきだ」とXに投稿しています。
融資かビットコインか
前述したように、IMF側は今回のビットコイン購入継続宣言に対し、記事執筆時点で公式なコメントを出していませんが、今後もエルサルバドル政府との協議が続くとみられます。
業界内では、エルサルバドルがこのままビットコイン戦略を継続すれば、IMF融資の行方や同国の財政に影響が及ぶ可能性があると注視されています。
一方、ビットコイン価格の上昇や国際的な仮想通貨業界からの関心はエルサルバドル経済にプラスの効果をもたらすとの見方もあり、最終的な成果は今後数か月から一年の動向によって評価されるのかもしれません。
ブケレ大統領が掲げる「ビットコインを積み上げる国家」という大胆な実験は、IMFという後ろ盾を得ながらどこまで継続できるのか、その行方が大きな注目を集めています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=149.40円)
エルサルバドル関連の注目記事はこちら
Souce:IMF発表
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:AIによる生成画像