「暗号資産に金商法適用を」分離課税の実現を目指す:塩崎議員

塩崎議員、「暗号資産に金商法適用を」分離課税の実現を目指す(Shiozaki proposes applying Financial Instruments and Exchange Act to crypto and introducing separate taxation)

政府内で進む「暗号資産への金商法適用」議論

2025年2月27日の衆議院予算委員会第一分科会で、自民党デジタル社会推進本部Web3担当の塩崎彰久議員が、暗号資産(仮想通貨)の法的位置づけについて質問しました。

暗号資産を金商法に位置づける提案

塩崎議員は「暗号資産を金融商品取引法(金商法)の中に位置づけるのが適切ではないか」と提起し、従来の有価証券とは異なる新たなアセットクラス(投資対象となる資産分類)として扱うことで、投資家保護や市場育成、そして暗号資産の分離課税(20%課税)実現の観点から「バランスがいいのではないか」と述べました。

この質問に対し、西野太亮政務官は「現段階では全く方針は固まっていない状況」とした上で、決済手段と位置づけられている暗号資産を”投資対象”として扱う議論を進めていると答弁しました。

さらに、西野政務官は「いずれにしても暗号資産取引市場がいかにして健全に発展していくのかが重要」と強調し、検討を進めていく政府の考えを示しました。

この答弁は、暗号資産を証券とみなす可能性も含めて検討する意向を示唆するものと見られています。ただし、有価証券と見なすことで様々な制約が生じる可能性があるとも指摘し、慎重な検討が必要との姿勢も示しています。

塩崎議員は自民党Web3ワーキンググループとしての考えを早ければ来週にも公表したい考えも示し、党内で議論を進める意向を述べています。

暗号資産制度の見直しスケジュール

この議論に先立ち、政府は暗号資産の制度見直しに向けた検討スケジュールを明確にしています。加藤勝信財務相は1月31日の予算委員会で、暗号資産について金融庁では「2025年6月末を目処に制度の検証を進める方針」を示しました。

これは与党の2025年度税制改正大綱に「暗号資産の税制見直し検討」を明記したことを踏まえた動きであり、暗号資産を投資対象となる金融資産として取り扱うのが適切かどうか、幅広い意見を踏まえて結論を導く方針です。

また日本経済新聞の報道によれば、金融庁は2025年6月に規制見直しの方針を公表し、秋以降の金融審議会で議論を経て、2026年の通常国会に関連法改正案を提出することを目指しているとされています。

非公開の有識者勉強会では「暗号資産を投資対象として位置づけつつある」との認識で概ね一致しているとも伝えられており、政府内で暗号資産を有価証券並みの金融商品と位置づける方向で制度設計に着手したものと見られています。

今後、主要論点としてどの暗号資産を規制対象に含めるか(ビットコインやイーサリアムなど主要銘柄に限定するか、すべてを対象にするか)が議論される見通しです。

投資家の懸念:税制・競争力・取引自由度への影響

現在の暗号資産にまつわる規制に対し、暗号資産ユーザーや投資家からは次のような懸念が指摘されています。

税制への不安

分離課税への期待はあるものの、税制改正については不透明な状況が続いています。現行では「利益に対して最大55%の課税」となっているため、投資で得た利益の半分以上が税で消える可能性があり、個人投資家の不満は根強くあります。

塩崎議員も「日本の暗号資産税制(雑所得扱い)は競争力を阻害しているのではないか」という意見があると国会で代弁しており、税負担の軽減は急務です。仮に金商法適用が見送られれば税制優遇も遠のく可能性があるため、大きな注目を集めています。

市場競争力の低下

規制強化により日本市場の競争力が低下し、海外に人材や企業が流出する懸念も指摘されます。米国では以前、SEC(米国証券取引委員会)が訴訟を通じた厳格な規制を進めていましたが、トランプ新政権の下で「米国を暗号資産の首都にする」方針へ転換しつつあります。

SEC委員ヘスター・パース氏も「ここ数年は異例な訴訟による規制だったが、方針を改める」趣旨を発言し、実際にここ最近で大手仮想通貨取引所Binance(バイナンス)への訴訟一時停止申請や、Coinbase(コインベース)への訴訟を取り下げるなど、前政権で起きていた訴訟問題を終結させる動きを見せています。

このように米国が規制緩和に舵を切る中で、日本だけが規制強化を進めれば相対的な魅力低下につながりかねません。

野村総研の木内登英氏は「米国の方針転換が市場に与える影響を慎重に見極めた上で日本の新たな規制に取り組むことが求められる」と指摘しており、グローバルな動向を踏まえたバランスの取れた対応が求められています。

取引の自由度・多様性

金商法の枠組みが適用される範囲によっては、国内で取引できる暗号資産の種類やサービスが制限される可能性があります。

金融庁も、主要通貨のみに限定するのか、それともすべての暗号資産を対象とするのか議論を進めていますが、仮に対象がビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)など一部の主要銘柄のみとなれば、アルトコイン投資の機会が損なわれるおそれがあります。

また、証券扱いとなれば、新規トークンの発行・上場に現在以上の開示や手続きが求められる可能性もあり、国内プロジェクトの負担増につながりかねません。ユーザーからは「海外では買える銘柄が日本では全く買えない」という不満も多く、規制による取引自由度の低下が起きないよう望む声が上がっています。

こうした懸念に対し、政府・金融庁も認識を示しており、育成と規制を同時に進める姿勢で制度設計を行うことが求められています。

暗号資産業界からは不満の声

慎重な姿勢を見せ続けている金融庁の動きに対し、仮想通貨業界の著名人や投資家からも不満の声が相次いでいます。

X(旧Twitter)などのSNSでも、以下のような意見が多く見られ、金融庁の方針に対する批判が高まっています。

日本の規制が厳しすぎるため、海外取引所を利用するしかない

税制面でも不利だから、海外に拠点を移すことを考えている

日本の暗号資産市場の未来は?

金融庁は、投資家保護のために規制を強化しつつも、Web3ブロックチェーン技術の発展を促進する姿勢を示しはじめています。

しかし、雑所得として最大55%にもなる税制やDeFi規制の整備が遅れている点については、業界からの不満が根強く、今後の政策次第で国内の暗号資産市場の方向性が大きく変わることになります。

世界では仮想通貨市場の発展を支える法整備が進んでいますが、日本は変わらず慎重な姿勢を取り続けています。このままでは、暗号資産に関する技術革新の中心が海外に流出し、日本の競争力が低下するリスクも十分に考えられます。

一方で、投資家保護を強化しつつも技術革新を取り込もうとする日本のアプローチは、EUなどの制度設計と比べても「独自の進化を遂げつつある」とも報じられています。

今後1年を見据えると「税制の抜本的改革」や「ETF上場の実現」といった展開次第で、市場環境は大きく好転する可能性はあります。

暗号資産が”投機的な対象”から”健全な金融商品の一つ”へと昇華できるか

政府の舵取りと業界の対応次第で、日本の暗号資産市場はさらなる発展も停滞もあり得る岐路に立っていると言えるのかもしれません。

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Souce:塩崎 あきひさ氏公式YouTube
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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