米SECとトロン創業者ジャスティン・サン、民事詐欺訴訟の和解を模索

米SECがトロン創業者ジャスティン・サンへの民事詐欺訴訟の和解を模索

米証券取引委員会(SEC)は、中国の暗号資産(仮想通貨)起業家であり、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が支援する暗号資産プロジェクトのアドバイザーを務めるジャスティン・サン(Justin Sun)氏に対する民事詐欺訴訟の解決策を検討している。

マンハッタンの米国地方裁判所判事エドガルド・ラモス(Edgardo Ramos)氏に宛てた書簡で、サン氏およびSECの弁護士は、双方および国民の利益を理由に、この訴訟を保留するよう2月27日に要請した。サン氏らは、保留から60日以内に状況報告を提出することを提案した。

サン氏の弁護士はコメントの要請にすぐには応じなかった。SECもコメントを控えた。この訴訟が、和解に至るのか、却下されるのかは不明である。

SECは2023年3月、サン氏および同氏の関連企業であるトロン財団(Tron Foundation)、ビットトレント財団(BitTorrent Foundation)、レインベリー(Rainberry)を提訴した。

同委員会は、サン氏らが暗号資産「トロニクス(Tronix)」および「ビットトレント(BitTorrent)」の違法な流通を企て、取引量を人為的に水増しし、有名人の支持者への報酬支払いを隠蔽したと主張している。

トランプ氏は米国を暗号資産業界の世界的拠点にすることを公約し、デジタル資産に対して好意的とされるワシントンの弁護士ポール・アトキンス(Paul Atkins)氏をSEC委員長に指名した。

一方、サン氏の訴訟が提起された当時のSEC委員長であるゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)氏は、暗号資産規制強化を推進し、業界から強い反発を受けていた。

SECの訴え

SECによると、サン氏の疑惑の計画は2017年8月に始まった。

裁判資料によればサン氏は、自身が管理する2つのアカウント間で数十万回にわたる「トロニクス」の取引を従業員に行うように指示し、取引が活発であるかのような虚偽の印象を与えることで、違法に3,100万ドル(約46億円)の利益を得たとされる。

またサン氏は、女優のリンジー・ローハン(Lindsay Lohan)、歌手のエイコン(Akon)およびニーヨ(Ne-Yo)、ソーシャルメディアのインフルエンサーであるジェイク・ポール(Jake Paul)らに対し、SNS上でトロニクスおよびビットトレントを宣伝させたが、彼らが報酬を受け取っていたことを公表しなかったとし、非難された。

サン氏の取り組み

最近サン氏は、トランプ氏が一部を所有する「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial)」のおそらく最も著名な購入者であり、X上の投稿によれば、少なくとも7,500万ドル(約111億円)を費やしている。またサン氏はワールド・リバティのアドバイザーも務めている。

こうした取引は、トランプ氏が財務的な利益を得る可能性がある企業を通じて行われたことから、利益相反の懸念を招いている。

SECがサン氏に対する訴訟を取り下げる可能性について、元ゲンスラー氏の政策顧問であるコリー・フレイヤー(Corey Frayer)氏は「これは大統領の暗号資産パートナーにとっては良いことかもしれないが、業界のすでに疑問視されている評判にとっては悪いことだ」と述べた。

また、サン氏は2023年11月、サザビーズ(Sotheby’s)のオークションにて、壁にダクトテープで貼られたバナナのアート作品を620万ドル(約9.2億円)で落札し、アート業界でも注目を集めた。

さらに、今月初めには、スイスの芸術家アルベルト・ジャコメッティ(Alberto Giacometti)氏の彫刻作品「ル・ネ(Le Nez)」の返還を求めて、メディア界の大物デイヴィッド・ゲフィン(David Geffen)氏を提訴した。サン氏は2021年にこの作品を7,840万ドル(約117億円)で購入したが、自身のアートアドバイザーが作品を盗み、後に売却したと主張している。

ゲフィン氏の弁護士は、サンの主張には「根拠がない」と公に批判している。

2019年には、サン氏は慈善オークションで当時の記録額である457万ドル(6.8億円)を支払い、投資家ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)氏との昼食会の権利を獲得した。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
US SEC, Tron founder Justin Sun explore resolution of civil fraud case
(Reporting by Jonathan Stempel and Chris Prentice in New York; Editing by Lisa Shumaker and Stephen Coates)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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参照元:ニュース – あたらしい経済

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