エアドロップで得たトークンの確定申告はどうする?利益・税金の計算方法を紹介
2024年12月にDEXの「Hyperliquid」から一部のユーザー向けにトークンが配布され、エアドロップによるキャンペーンが大きな注目を集めました。このようなエアドロップによって一定の利益を得た場合、課税の対象となり確定申告が必要です。しかし、エアドロップによるマーケティング自体が最近登場した手法であり、どのように申請すべきか悩ましいのが実情です。
国税庁から発信されたトークンに関する記述として、2024年12月20日に公表された『暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)』が挙げられます。この指針に基づいて税務上の判断を行わなければなりません。
本記事では国税庁の文書に基づき、エアドロップで得られたトークンの所得の分類や計算方法、確定申告での取り扱いについて解説します。エアドロップでトークンを入手した際に必要となる知識なので、ぜひ最後までご覧ください。
エアドロップで確定申告が必要になる条件
エアドロップで得たトークンのすべてが課税対象となるわけではありません。確定申告が必要となるのは、以下に挙げる3つの条件をすべて満たした時です。
- 日本国内に居住していること
- 所得税の申告義務があること
- エアドロップされたトークンに市場価値があること
各条件について深掘りしていきます。
日本国内に居住していること
まず、「日本国内に住所を有する者」あるいは「日本国内に現在まで引き続き1年以上居所を有する者」が対象です。
日本国籍を有していない外国人であっても、「過去10年以内において、日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である者」や「転勤命令、出向命令が1年以上ある者」の場合は、日本国内で支払われたり、海外から送金されたものが課税所得の範囲となります。
所得税の申告義務があること
エアドロップや株式、不動産投資など給与以外による所得の合計が20万円を超える場合(給与所得者限定。給与所得がない者は金額にかかわらず申告が必要)は、確定申告の対象になります。この他に、給与が2000万円を超えている場合は確定申告が必要です。
エアドロップされたトークンに市場価値があること
エアドロップで配布されたトークンに市場価値がある点も条件となります。どのマーケットでも売買実績がないなどトークンの価値が付かない場合は、その年におけるエアドロップ分の申告は不要です。
ただし、エアドロップでトークンを獲得した後、価値が付いた状態で売却すると税金がかかるので注意が必要です。
確定申告の会計期間
確定申告の対象となるのは、前年の1月1日から12月31日までにエアドロップによって入手したトークンです。この1年分の実績を集計し、原則として2月16日から3月15日までの間に管轄の税務署へ申告しなければなりません。
エアドロップで得た利益の課税区分
エアドロップにより利益を得た場合は所得税の課税対象であり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。雑所得とは、事業所得や給与所得、利子所得など、他のどの所得区分にも該当しない所得です。
ただし、会計期間における暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合は、原則として以下の所得として扱われます。
- 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合・・・事業所得
- 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合・・・雑所得(業務に係る雑所得)
いずれに計上するかなどは納税者の実態に応じた判断が必要です。課税区分が明確でない場合は、税理士に確定申告の手続きを依頼しましょう。
エアドロップで得たトークンの計算方法
エアドロップを受けた時、トークンに市場価格がついているか否かによって以下2通りの対応に分かれます。
トークンに市場価格がつかない場合
流動性がなく暗号資産取引所で売買できない銘柄を受け取った際には、価値が無いトークンとして扱います。このケースでは所得額がゼロとなり、確定申告において計上する必要はありません。
ただし、エアドロップ後に時間が経過してトークンの価値が上がった場合には、売却した時点で得た所得額を計上する必要があります。
例)1年後、価値のなかったトークンに2,000円の市場価格がつき、100枚のトークンを売却した場合
売却したトークンの数量×売却時の市場価格=所得額
100枚×2,000円=200,000円(所得額)
このケースではトークンを入手した会計年度での所得額が発生しないものの、売却した翌年の会計年度で計上しなければなりません。
トークンに市場価格がついている場合
受け取ったトークンに流動性があり市場価値がついている時は、取引価格に基づいて所得額を算出します。なお、エアドロップを得る目的でガス代や手数料が発生した際には、その費用を経費として計上できます。
会計期間の間にトークンを売却せず、保有し続けた場合の会計処理は以下の通りです。
例)1,000円の市場価格がついているトークンを100枚分受け取り、売却せずに保有し続けた場合
保有しているトークンの数量×入手時の市場価格=所得額
100枚×1,000円=100,000円(所得額)
さらに会計期間の間に売却した場合は、入手時と売却時の時価の差が所得額となります。
例)1,000円の市場価格がついているトークンを100枚分受け取り、会計期間内に全量を2,000円で売却した場合
(売却した数量×売却時の価格)-(入手した数量×入手時の市場価格)=所得額
100枚×2,000円-100枚×1,000円=100,000円(所得額)
これによりトークン取得時の100,000円と売却時の100,000円が合計され、200,000円が所得額として計上されます。
エアドロップで得たトークンにかかる税率
雑所得として計上された暗号資産の利益には、5%から最大45%が累進課税で適用されます。国税庁がNo.2260 所得税の税率によって公表している平成27年分以後の税率は、以下の表の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
株式投資と異なり暗号資産は分離課税の対象ではないため、最大45%と高い税率が適用されます。これに加え、道府県民税4%、市町村民税6%の合計10%の住民税が課されます。
エアドロップでトークンを得た際の確定申告の手順
エアドロップで受け取ったトークンについて確定申告を行う場合、以下に挙げる4つの作業が必要です。
- 情報の収集と記録
- エアドロップで得たトークンの損益計算
- 確定申告書の作成
- 確定申告書の提出
各手順について詳しく説明します。
1.情報の収集と記録
所得額の算出にあたって、以下の情報が求められます。
- トークンの銘柄
- 入手、売却した時期
- 入手、売却した枚数
- 入手、売却した時の時価
- 取引にかかったコスト(取引所手数料、ガス代など)
市場価格の有無によって申告内容が変わるため、暗号資産取引所に上場されている銘柄なのかを確認する必要があります。情報源として、暗号資産取引所の価格情報やCoinMarketCapが有用です。
なお、税務調査の際に説明を求められる可能性もあるため、作成した記録(期末時点に保有している暗号資産の残高がわかるもの(ウォレットのスクリーンショットなど))は残しておきましょう。
2.エアドロップで得たトークンの損益計算
トークンの取引に関して情報を収集したら、エアドロップによって発生した損益を計算する必要があります。前述の計算方法に従って、それぞれの取引結果を計算してください。
以下に挙げる国税庁のホームページでは、暗号資産の取引に関する計算書が用意されています。暗号資産の取引に特化した書式であり、損益を記録する際に便利です。
暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和6年12月)
3.確定申告書の作成
暗号資産の損益を集計したら、確定申告の雑所得などの欄に計算結果を記入します。なお、確定申告書を提出する際には暗号資産の計算書を添付する必要はありません。
4.確定申告書の提出
作成した確定申告書をe‐Taxまたは郵送によって期限内に管轄の税務署宛てに送付します。確定申告の期限である3月15日までに提出しなければなりません。この確定申告の提出をもって手続きが完了となります。
エアドロップに関する損益を申告し忘れた場合
既に提出済みの確定申告について、エアドロップで得たトークンの損益を記載し忘れた場合には、修正申告をしなければなりません。ただし、過去にさかのぼって修正できる期間は過去5年分までです。
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」から「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」を選択すると、パソコン上で入力データの修正が可能です。データの作成後は、e‐Taxまたは郵送等で税務署へ提出してください。
トークンの損益・税金計算に特化したツール
暗号資産に特化した会計ツールを導入すると、取引データを自動でインポートできるため作業の効率化にに繋がります。暗号資産のための会計ツールとして以下の3つのサービスが挙げられます。
- cryptact(株式会社 pafin)
- Gtax(株式会社Aerial Partners)
- Cryptorch(βテスト中)
それぞれの特徴について以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
【無料】暗号資産の損益・税金計算ツールおすすめ3選|確定申告に便利なツールを紹介
専門家のコメント
エアドロップで得たトークンの確定申告について、専門家の方に注意点やアドバイスを伺いました。
カオーリア会計事務所 所長 税理士 藤本 剛平様
HYPEのような高額(になった)エアドロの処理について考える際にヒントとなるのが、『暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)』12頁にある「暗号資産の分裂(分岐)により暗号資産を取得した場合(令和2年12月更新)」でしょう。
こちらも当時、ハードフォークにより人によっては高額のトークンを無償取得しています。
しかし、
税務署からの回答は取得時点において取引相場が存在しておらず、その時点では価値を有していなかったと考えられる。
従ってその取得時点では所得が生じず、その新たな暗号資産を売却または使用した時点において所得が生ずることとなり、取得価額は0円として処理する。
となっています。
要は結果的にエアドロで取得したトークンにより億り人になろうとも、あくまでも暗号資産の取得価額の考え方は取得時点に時価があったか否かが重要、ということです。
リスクをより低減させたい方は取得タイミングがわかる画面のスクリーンショットを保存しておくことを推奨します。
カオーリア会計事務所の詳細については、下記の記事をぜひご覧ください。
Web3/NFTに強い税理士おすすめ一覧|選び方や費用相場も紹介
村上裕一公認会計士事務所 代表 公認会計士 村上裕一様
エアドロップで価値があるものを獲得した場合は、獲得した時点と売却した時点の2段階で利益計算がされます。
また、獲得時は取引所で売買されておらず時価が付かず、獲得後に取引所で売買され時価が付くようなことがあります。
この場合においては、エアドロップ獲得時点での時価で判断するために、獲得時は利益を認識せず、売却時に利益を認識します。
村上裕一公認会計士事務所の詳細については、下記の記事をぜひご覧ください。
Web3/NFTに強い税理士おすすめ一覧|選び方や費用相場も紹介
株式会社Aerial Partners 取締役 税理士・公認会計士 岡田 佳祐様
仮想通貨は売却時にだけ損益が発生すると勘違いされがちですが、エアドロップの場合でも受け取った時点の時価が利益として課税対象になることがあります。また、エアドロップで得た仮想通貨を売却する場合は、取得時価との差額が損益となるため、その計算も忘れずに行いましょう。気付かないうちに一定以上の利益が出て申告漏れにならないよう注意が必要です。
株式会社Aerial Partnersが運営する暗号資産の損益計算ツール「Gtax」については、下記の記事をぜひご覧ください。
暗号資産の税金計算ツール「Gtax」とは?料金や評判、使い方、対応取引所を紹介!
エアドロップの確定申告に関する注意点
エアドロップでトークンを得た際に留意すべきポイントを紹介します。
まず、エアドロップの条件やプロジェクトごとの状況によって、税務上の取り扱いが異なるケースもあります。特に、ロックアップ期間が設定されているトークンでは注意が必要です。このように特殊なケースでは税理士や税務署への相談をお勧めします。
また、税務に関する法律や制度は頻繁に改正されるため、最新の情報を確認するようにしてください。
エアドロップで得たトークンの確定申告に関するまとめ
エアドロップで受け取ったトークンは原則として「雑所得(その他雑所得)」として扱われ、確定申告が必要となる場合があります。確定申告を行うために、トークンの銘柄や入手時期、入手時の市場価格に関する情報を日頃から記録しておきましょう。
また暗号資産の税務は複雑なため、不明な点がある場合は税理士への相談をお勧めします。本稿で解説した内容を参考に、エアドロップの確定申告を正しく行い、税務リスクを回避しましょう。
【参考資料】
国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和6年12月)
国税庁 No.1525-2 NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係
※本記事の内容は全て記事公開時点のものです。また、本記事は納税に関する助言ではありません。納税については専門家に相談した上で個人の責任において適切に行ってください。
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