国税庁、暗号資産の脱税防止対策で2027年から海外税務当局と情報共有=税金関連の報告資料

国税庁、暗号資産の脱税防止で2027年から海外税務当局と情報共有(National Tax Agency to share cryptocurrency tax information with overseas authorities starting in 2027)

税金関連の情報交換に関する報告資料公開

日本の国税庁が暗号資産(仮想通貨)の脱税防止に向けて2027年から海外の税務当局と取引情報などの共有を開始する予定であることが明らかになりました。

今回の内容は国税庁が2025年1月に公開した「令和5事務年度 租税条約等に基づく情報交換事績の概要」の中に記載されているもので、税金関連の情報交換の概要・実施状況・最新動向などに関する内容がまとめられています。

日本では、仮想通貨取引などで得られた利益は原則「雑所得」に分類される仕組みで、必要に応じて確定申告や納税などを行う必要がありますが、一部では「海外の暗号資産取引所が脱税や申告漏れの温床になっている」という指摘がありました。

海外税務当局との情報共有はそのような脱税・申告漏れに対処するためのもので、今回の資料では以下のような内容が報告されています。

租税条約等に基づく情報交換事績の概要

国税庁は、適正・公平な課税・徴収を実現し、国際的な脱税・租税回避に対処するために、租税条約等の規定に基づく外国税務当局との情報交換を積極的に実施している。

情報共有には「自動的情報交換・自発的情報交換・要請に基づく情報交換」の3種類があり、海外から情報提供を受けつつ、日本からも海外に情報提供を行っている。

2022年・2023年の情報交換事績(画像:国税庁)2022年・2023年の情報交換事績(画像:国税庁)

自動的情報交換の実施状況

自動的情報交換では、国際的な脱税や租税回避⾏為に対処するために、共通報告基準(CRS)に基づく⾮居住者の⾦融⼝座情報(CRS情報)や多国籍企業グループの国ごとの活動状況に関する国別報告書(CbCR)、法定調書により把握した⾮居住者への支払についての情報(法定調書情報)を定期的に交換している。

共通報告基準(CRS)は国際的な脱税や租税回避に対処するために、⾮居住者の⾦融⼝座情報(氏名・住所・⼝座残高など)を税務当局間で定期的に交換するための国際基準としてOECDが策定・公表したもの。日本もこの枠組みに基づいて外国の税務当局と情報交換を行っている。

諸外国の税務当局から受領するCRS情報や法定調書情報などは「課税上問題があると⾒込まれる資産や所得の把握」などに有効。また、徴収の分野においても、受領した情報を活用し、外国税務当局への徴収共助の要請等を⾏っている。

CRS情報の地域別 受領・提供口座数(画像:国税庁)CRS情報の地域別 受領・提供口座数(画像:国税庁)

自発的情報交換の実施状況

自発的情報交換では、国際協⼒の観点から自国の納税者に対する調査等の際に入手した情報で、外国税務当局にとって有益と認められる情報を、自発的に提供している。

要請に基づく情報交換の実施状況

要請に基づく情報交換では、個別納税者に対する調査を実施している際に「国内で入手できる情報だけでは事実関係を十分に解明できない」といった状況に陥った場合に、必要な情報の収集・提供を外国税務当局に要請している。この情報交換手段は、国際的な取引の実態や海外資産の保有・運用の状況を解明する有効な手段となっている。

具体的には、外国税務当局から「海外法人の決算書、契約書、インボイス、銀⾏預⾦⼝座取引明細書」などのほか「外国税務当局の調査担当者が取引担当者に直接ヒアリングして得た情報」を入手している。

要請に基づく情報交換については「暗号資産取引を行う個人投資家が仮想通貨取引に関するデータを紛失した場合に、対象国の税務当局に情報提供を要請することによって多額の申告漏れがある事実を把握できた」などの活用例がある。

要請に基づく情報交換の活⽤例(画像:国税庁)要請に基づく情報交換の活⽤例(画像:国税庁)

自動的情報交換に関する最近の動向

暗号資産を利⽤した脱税などのリスクが顕在化したことを受けて、2022年にはOECDにおいて、各国の税務当局が⾃国の暗号資産交換業者等から報告される⾮居住者の暗号資産等取引情報を租税条約等に基づいて税務当局間で⾃動的に交換するための国際基準として「暗号資産等報告枠組み(CARF)」が策定され、承認・公表された。

2023年のG20ニューデリー首脳宣言では「税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム(171か国・地域が参加するOECDの関連組織)」に対して、2027年の情報交換開始を原則とするCARF実施スケジュールの検討が要請された。

このような経緯を経て、各国はCARFを実施するための国内法制を整備する段階に移⾏することとなり、日本では令和6年度の税制改正で、CARFに従った情報交換を実施する観点から「⾮居住者に係る暗号資産等取引情報の⾃動的情報交換のための報告制度」が整備された。

日本におけるこの制度の施⾏については、暗号資産交換業者等の準備期間を考慮して、2026年から制度を施⾏し、2027年に2026年分の報告を暗号資産交換業者等から受け、税務当局間の情報交換を開始することとしている。

日本から外国への情報提供のイメージ(画像:国税庁)日本から外国への情報提供のイメージ(画像:国税庁)

2025年1月1日時点における日本の租税条約ネットワーク(画像:国税庁)2025年1月1日時点における日本の租税条約ネットワーク(画像:国税庁)

なお、今回公開された資料の詳細は「国税庁の公式サイト」で確認することができます。

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Souce:国税庁公式発表
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
サムネイル:Freepikのライセンス許諾により使用

参照元:ニュース – 仮想通貨ニュースメディア ビットタイムズ

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