仮想通貨に関する内容も「2025年度の税制改正提言」公表:新経済連盟
税率が低くても経済成長すれば税収は上がる
新経済連盟は2024年9月13日に、暗号資産(仮想通貨)の税制改正要望などを含む「2025年度の税制改正提言」を公表しました。
今回の税制改正提言は「税率を引き下げて日本経済の活性化を促し、税収を増やして再び国内投資に繋げる」という目標を実現するためのもので、この目標を「税と成長の好循環」を表現した上でこれを実現する以下3つの柱が掲げられています。
- 国内投資の促進
国内外から日本への投資を呼び込んで経済を活性化するほか、AIや暗号資産など、新たな産業の構築を促すために税制面から支援する - 人への投資
賃上げ促進税制を強化しつつ労働市場の流動性を高めるほか、国内外の高度な人材を確保する - スタートアップ支援・生産性向上
研究開発・スタートアップの促進、DX化等を通じ、イノベーションの促進と経済全体の生産性の底上げを図る
新経済連盟は今回公開した資料の中で「税率が低くても経済が成長すれば税収は上がる」と述べており、税率55%の日本の税収が横ばいであるのに対して、税率37%の米国は税収が増加していると説明しています。
税と成長の好循環を実現するための具体策としては以下のようなものが挙げられており、暗号資産の税制改正はその中の1つとして盛り込まれています。
- 法人税・所得税・相続税の税率引下げ
- 地方の財源を強化する見直し
- AIの開発強化・利活用促進に向けた税制の創設
- 海外から人、知、金を呼び込む税制見直し
- 越境経済への適応
- 研究開発税制の見直しとイノベーションの実装
- 賃上げ促進税制の強化
- 新しい働き方などに対応した税制見直し
- GX加速化のための税制
- 暗号資産税制
- 社会的投資減税の創設、寄附税制の見直し
- スタートアップ投資の促進や報酬制度の見直し
- 企業からの教育投資を促す税制の拡充
- ソフトウェア経済に対応した税制見直し
- 中小企業・小規模事業者の経営力強化のための納税環境整備
- デジタルインボイスの普及
仮想通貨の税制に関する提言内容
暗号資産(仮想通貨)の税制に関する項目では「Web3市場が急速に拡大している中で、現行の規制や税制は足枷となっており、有望なWeb3企業が国外流出している」と説明した上で「このまま企業流出が続けば日本がWeb3市場から取り残される恐れがある」と指摘されています。
新経済連盟はこのような状況に対して「スタートアップ支援を含むWeb3ビジネス振興の観点からも、トークンエコノミーの市場形成・発展を促進するための対応を急ぐべき」と提言していて、具体的には以下のような税制改正を実施すべきと主張しています。
- 暗号資産取引で生じる利益を申告分離課税(一律20%)の対象とすべき
- 暗号資産取引で生じる損失の繰越控除も認めるべき
- 暗号資産デリバティブ取引についても、申告分離課税を認めるべき
- 納税計算の煩雑さを回避するために、暗号資産取引で生じる損益への課税は保有する暗号資産を法定通貨に交換する際に一括で実施すべき
- 相続した暗号資産の課税のあり方を見直すべき(相続税評価額の計算方法の見直し、譲渡時には「取得費の特例」の対象とする)
また、その他の項目には「暗号資産ETFの取り扱いを可能にすべき」というものや「一律2倍とされている暗号資産のレバレッジ倍率は、リスクに柔軟に対応できるよう、暗号資産の種類ごとに設定等が可能な制度にすべき」というものもの記載されています。
新経済連盟が挙げている暗号資産の税制改正要望は、仮想通貨業界で数年前から強く望まれていたもので、これらの税制改正が実現すれば、個人投資家の税負担が減り、確定申告や損益計算などの作業もより簡単になるため、「Web3業界の活性化」や「仮想通貨取引の増加による税収増」などにつながる可能性があると期待されています。
日本政府のこれまでの対応を考慮すると、これらの要望全てがすぐに認められる可能性は低いと考えられますが、同じような税制改正要望は複数の業界団体からも提出されているため、将来的には一連の要望が徐々に認められていく可能性もあると予想されます。
税金のまとめ記事とその他の要望
Souce:新経済連盟 2025年度税制改正提言
執筆・翻訳:BITTIMES 編集部
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