20年ぶりの新紙幣、発行開始|デジタル通貨・仮想通貨の普及で「最後の紙幣」に?
20年ぶりの新紙幣発行、銀行では両替も開始
日本では2024年7月3日に新しい紙幣の発行が開始され、日銀から金融機関への引渡しが開始されました。現在は銀行の支店でも新紙幣への両替が開始されており、多くの利用者が集まっていることも報告されています。
新しい紙幣が発行されるのは20年ぶりで、一万円札に渋沢栄一、五千円札に津田梅子、千円札に北里柴三郎の肖像がデザインされています。
新紙幣では、高精細すき入れや3Dホログラムなどの新たな偽造防止技術が採用されており、潜像模様・パールインキ・マイクロ文字・深凹版印刷・識別マーク・すき入れバーパターン・特殊発光インキなどといった従来の偽造防止技術も継続して使用されています。
いよいよ明日発行される #新しいお札 には、現行の伝統的な和紙の技術「すき入れ」に加え、肖像の周囲に緻密な画線で構成した連続模様が施されています!また、すき入れを券種ごとに異なる形状・位置に配置し、券種の違いがわかりやすくなっています♪ pic.twitter.com/r2lhAq4weV
— 独立行政法人国立印刷局 (@NPB_IAA) July 2, 2024
新紙幣発行の目的は「偽造対策の強化」や「誰でも利用しやすいものにするユニバーサルデザインの導入」にあるとされていて、「タンス預金のあぶり出しや預金封鎖などを目的としたものではないということも説明されています。
新紙幣は2025年3月末までに74億8,000万枚が印刷される予定で、日銀の植田和男総裁は新紙幣の発行について『キャッシュレスが進展しつつある世の中ではあるが、依然として現金は誰でもいつでもどこでも安心して使っていただける決済手段いうことで重要だと考えている。日本銀行としては、現金に対する需要がある限り責任を持って供給をしてまいりたい』と語っています。
次の新紙幣発行が再び20年後となった場合は2044年に新しい紙幣が発行されることになりますが、現在はデジタル通貨や仮想通貨など「新しい通貨」が登場してきているため、今回発行された新紙幣は「最後のお札」になるかもしれないとも言われています。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)の準備も進行中
植田総裁は「現金は誰でもいつでもどこでも安心して使える決済手段」と述べており、「現金に対する需要がある限り責任を持って供給していく」という方針を示していますが、その一方ではキャッシュレス化・デジタル化に対応するための準備も進められています。
日本銀行(日銀)は数年前から中央銀行デジタル通貨(CBDC)の研究を進めていて、2021年4月には「CBDCの概念実験」を開始、2023年4月には「CBDCのパイロット実験」を開始しています。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは、その名の通り「中央銀行が発行するデジタル通貨」のことであり、現在は世界各国でCBDCの発行に向けた開発や実証実験が進められています。
なお、日本で進められているCBDCの研究・実証実験は具体的な課題なども含めてより詳しく調査するためのものであり、CBDCの導入が決定しているわけではないものの、将来的には日本でCBDCが本格導入される可能性があるとも予想されます。
CBDCの導入には懸念・反対の声も
CBDCが導入されると、現金を持ち歩く必要がなくなり、安い手数料で素早く送金を行うことができるようになると期待されていますが、その一方では「政府の監視などに関するプライバシー問題」や「ハッキング・金融システムの不安定化・国債市場への悪影響」なども懸念されています。
そのため、CBDCに対しては業界の専門家などから強く反対する意見も出ており、海外の一部地域では「CBDCを禁止する動き」も出てきています。
2024年の米大統領選挙で注目を集めているドナルド・トランプ前大統領もCBDCに反対している人物の1人で、過去にはCBDCについて以下のような発言を行ったとも報告されています。
これは自由に対する危険な脅威であり、私はアメリカへの到来を阻止する。そのような通貨は、連邦政府にあなたのお金を絶対的に管理させることになる。彼らはあなたのお金を奪うことができ、あなたはそれがなくなったことにさえ気づかないだろう。
また、トランプ氏は2024年6月12日に「ビットコインのマイニングは中央銀行デジタル通貨に対する最後の防衛線となるかもしれない」との考えも語っています。
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仮想通貨ビットコインは「新しい地球通貨」となるか
新紙幣を含む法定通貨は現在最も一般的なお金の形で、中央銀行デジタル通貨は将来的に普及する可能性のある新しいお金の形となっていますが、現在は法定通貨や中央銀行デジタル通貨とは根本的に異なる仕組みで構築された暗号資産(仮想通貨)が世界的に注目されています。
暗号資産(仮想通貨)は、ブロックチェーン技術を用いて発行されるデジタル通貨の総称であり、一般的な仮想通貨は政府や中央銀行のような中央集権的な管理者が存在しない「分散型」の仕組みで運営されています。
ビットコイン(BTC)は最も有名な仮想通貨の1つで「最大発行枚数が2,100万枚に定められていること、取引履歴の改ざんが極めて困難なこと、分散型管理されていること、透明性が確保されていること」などを特徴としています。
法定通貨やCBDCは発行上限が定められていないため、発行枚数が増えれば増えるほど通貨の価値が下がることになりますが、ビットコインは発行上限が定められているため、需要が高まるほど価値が上昇していく仕組みになっています。
また、ビットコインは取引履歴の記録・新しい通貨の発行作業がマイナーと呼ばれる世界中の個人や企業によって行われる仕組みになっており、取引履歴の改ざんはほぼ不可能で、世界中の人々が取引履歴を確認できる透明性も確保されています。
このような仕組みからビットコインのような仮想通貨は「世界中で広く利用される地球通貨」になる可能性があるとも言われていて、もしもBTCが地球全体で一般的に使用されるようになれば、旅行時に現地通貨に両替する必要がなくなり、世界中の誰にでも簡単に送金でき、ゲームなどのデジタルコンテンツでも共通のお金を使えるようになる可能性があると期待されています。
ビットコインは送金手数料・送金時間・拡張性などの問題も抱えていて、仮想通貨が増えすぎている問題なども存在しますが、BTCでは安い手数料で瞬時に送金できる技術が普及してきており、仮想通貨プロジェクトの統合なども増えてきているため、時間が経つにつれて現在の問題は解決に向かう可能性があります。
エルサルバドルでは既にビットコインが法定通貨として採用されており、BTCを財務戦略に組み込む企業も増えてきているため、ビットコインが地球通貨になる可能性はあると考えられます。
ビットコインの詳細はこちら
未来のお金はデジタル通貨?
お金や通貨の歴史に関しては、石・貝殻・家畜・毛皮・穀物・塩・金属など様々なものが通貨として使用されてきたと伝えられています。
現在一般的に使用されている法定通貨は金属と紙で発行されているもので、その本質は「信用」にありますが、一部の国では法定通貨に対する信用が崩壊してお金が紙屑になってしまった事例もあります。
現在は「硬貨・紙幣・貴金属・デジタル通貨・仮想通貨・CBDC」などといった様々な資産が存在するため、最終的には”世界中の人々がどのようなお金を支持するか”が重要になると考えられますが、将来的には紙幣の発行が終了し、デジタル通貨や仮想通貨が一般的になるかもしれません。
今回新たに発行された新紙幣が本当に「日本最後の紙幣」になるかはわかりませんが、もしそうなるのであれば記念として各紙幣を一枚づつ大切に保管しておきたいところです。
新紙幣の発行は日本の金融システムにおける重要な節目であり、仮想通貨の台頭とCBDCの導入はデジタル経済の未来を形作る鍵になると考えられます。
紙幣・CBDC・仮想通貨にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。
紙幣は使い慣れたお金ですが、追跡や監視が困難で汚職や脱税などが問題視されています。
CBDCは追跡・監視が容易で利便性も向上しますが、管理者次第で国全体が深刻な問題に直面する可能性があります。
仮想通貨はシステム的に管理された全く新しいお金の形ですが、現状の仮想通貨は誰でも簡単に使えると言えるものではなく、誤送金・違法取引・ハッキング・安定性など様々な課題が残されています。
人工知能(AI)などのテクノロジーの急速な発展や世界情勢などの影響もあり、現在の金融市場は重要な節目に到達しているため、現在社会ではこれらの動向を注視し、持続可能な経済発展を目指すことが求められています。
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