米国の現物ビットコインETF、初日出来高は約6686億円、グレースケール・ブラックロック・フィデリティが取引量大半占める
11の発行体が取引開始
ロンドン証券取引所グループ(LSEG)のデータによると、米国上場のビットコイン(BTC)上場投資信託(ETF)は、1月10日(現地時間)に米証券取引委員会(SEC)が承認した画期的な商品に投資家が飛びついたため、1月11日午後の時点で46億ドル(約6,686億円)相当の株式が取引された。
この商品は暗号資産(仮想通貨)業界にとって分岐点となる瞬間であり、多くの専門家がいまだに危険視しているデジタル資産が投資として広く受け入れられるかどうかが試されることになる。
ブラックロック(BlackRock)のiシェアーズ・ビットコイン・トラスト(iShares Bitcoin Trust)、グレースケール・ビットコイン・トラスト(Grayscale Bitcoin Trust)、アーク21シェアーズ・ビットコインETF(ARK 21Shares Bitcoin ETF)など、11の現物ビットコインETFが11日の朝に取引を開始し、市場シェアをめぐる熾烈な競争が始まった。
グレースケール、ブラックロック、フィデリティ(Fidelity)が取引量の大半を占めたことがLSEGのデータで明らかになっている。
米金融コンサルタントのベタファイ(VettaFi)のストラテジスト、トッド・ローゼンブルース(Todd Rosenbluth)氏は「新しいETF商品の取引量は比較的好調だ。しかし、これは1日だけの取引ではなく、長期戦になるであろう」と語った。
SECは、暗号資産業界との10年にわたる争いを経て、10日遅くにようやくETF商品へのゴーサインを出した。
投資信託の最大手であるバンガード(Vanguard)は、ビットコインの現物ETFを同社のプラットフォームで証券会社の顧客に提供する予定はないと述べた。
SECは以前、投資家保護の懸念から全てのビットコインETFの現物を却下していた。SECのゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は10日の声明で、今回の承認はビットコインを推奨するものではなく、ビットコインは「投機的で不安定な資産」であると述べた。
ETFの発売により、ビットコインの価格は2021年12月以来の高値まで上昇した。直近では0.77%高の4万6303ドル(約673万円)で、2番手の暗号資産イーサリアム(ETH)の価格は2.79%高の2597.95ドル(約38万円)だった。
規制当局の承認は、発行体間の激しい市場シェア争いに火をつけ、11日の発売前にもかかわらず、商品の手数料を米国ETF業界の標準よりも大幅に引き下げた発行体もあった。
新しいビットコインETFの手数料は0.2%から1.5%で、多くの会社は一定期間または一定額の資産に対して手数料を全額免除することも提案している。ヴァルキリー(Valkyrie)はETFの取引開始後、手数料を0.25%に再度引き下げ、最初の3ヶ月間は無料とした。
グレースケールは11日に既存のビットコイン信託をETFに転換することが承認され、一夜にして280億ドル(約4兆円)以上の運用資産を持つ世界最大のビットコインETFが誕生した。
ビットコインETFの現物投資額の見積もりは様々だ。リサーチ会社バーンスタイン(Bernstein)社のアナリストは、フローは徐々に蓄積され、2024年には100億ドル(約1.4兆円)を超えると見積もっている。一方、スタンダードチャータード証券のアナリストは今週、ETFは今年だけで500億ドル(約7.2兆円)から1000億ドル(約14.5兆円)の資金を引き寄せる可能性があると述べた。他のアナリストは、5年間で550億ドル(約8兆円)の資金流入があると述べている。
11日にETFの取引が始まると、市場参加者はビッド-アスク・スプレッド(トレーダーがETFを買う価格と売る価格の差)を注視した。スプレッドが狭いETFは通常、より魅力的と見なされる。
ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)とのETFが11日にデビューしたインベスコ(Invesco)の商品戦略担当ディレクターでるあジェイソン・ストーンバーグ(Jason Stoneberg)氏は、取引量、内部プラミング、参加者の数が「スプレッドを良いところに導くために決定的に重要だ」と述べた。
アナリストの中には、今回の承認は時期尚早だと警告する者もいる。2022年の暗号資産取引所FTXの破綻などのスキャンダルが投資家の警戒心を高めているためだ。
バンガードの広報担当者は、同社は独自の暗号資産投資商品を発売する計画はなく、株式、債券、現金などのコア資産クラスに重点を置いていると述べた。
11日ののウェビナーで、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)の投資戦略グループ長兼ウェルス・マネジメントの最高投資責任者であるシャルミン・モサバー・ラーマニ(Sharmin Mossavar-Rahmani)氏は、暗号資産は投資ポートフォリオにふさわしくないと述べた。
「ビットコインのようなものに価値があるのでしょうか?投資する資産クラスではないと思います」。
暗号資産株は上昇
それでも、現物ビットコインETFがイーサリアムの現物商品など、さらに革新的な暗号資産ETFへの道を開くと期待する向きもある。
グレースケールのマイケル・ソネンシャイン(Michael Sonnenshein)最高経営責任者(CEO)は11日のインタビューで、投資家がビットコインの現物商品のオプションから収入を得られるようにするため、カバード・コールETFを申請する予定だと述べた。
なおカバード・コールとは、オプション取引を利用した投資手法のひとつで、原資産を保有しながら、その原資産のコールオプションの売りポジションをとる戦略のことだ。
暗号資産関連株は11日、当初は上昇したが、ビットコインのマイニング業者であるライオット・プラットフォームズ(Riot Platforms)が15.8%、マラソン・デジタル( Marathon Digital )が12.6%それぞれ下落し、1日を終えた。
企業としてビットコイン投資を行うマイクロストラテジー(Microstrategy)は5.2%、暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)は6.7%下落した。ビットコイン先物に連動するプロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジーETF(ProShares Bitcoin Strategy ETF)は0.44%上昇した。
また11日、ステーブルコインUSDCを発行する米サークル(Circle Internet Financial)は、米国での新規株式公開を秘密裏に申請したと発表。サークルは米ドルにペッグされた暗号資産USDCの発行とガバナンスをコントロールしている。
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※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
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Reporting by Manya Saini in Bengaluru, Hannah Lang in Washington and Suzanne McGee; Additional reporting by Niket Nishant in Bengaluru, Medha Singh, Davide Barbuscia and Noel Randewich; Editing by Arun Koyyur and Nick Zieminski
翻訳:髙橋知里(あたらしい経済)
images:Reuters
参照元:ニュース – あたらしい経済