NFTプロジェクト買収事例4選

「古参PFPプロジェクトのひとつ」とも言えるNFTプロジェクト「0N1 Force」が買収されました。NFTプロジェクトの買収には市場やユーザーにどのような効果や影響があるのでしょうか。今回はNFTコレクションの買収について事例と共にご紹介します。

大型のNFTプロジェクトとなれば「フロアプライス×発行枚数」だけを時価総額と考えても100億円を超えるものも少なくありません。

例えば、人気プロジェクトAZUKIはフロアプライスが約15ETH、発行枚数が1万枚なので時価総額は15万ETH、日本円でいえば約330億円ということになります。NFTプロジェクトと企業を単純比較できませんが、それでも日本で時価総額330億円の企業といえば、はごろもフーズ・四国銀行という名の通った企業が並びます。

つまり、大型NFTプロジェクトはよく名の知られた企業と同じ程の価値を持ち始めている、ということになります。これほどまでにNFTプロジェクトが大型化してくると当然のことながら一般の企業のように吸収合併や買収、いわゆる「M&A」ということも発生します。

本記事では、NFTマーケットにおいて過去に話題となった「プロジェクトのM&A事例」を紹介します。

【海外事例】0N1 Force

0N1 Force

引用:0N1 Force Twitter

買収主:ブロックチェーン投資企業Old Fashion Researchを中心とした投資家グループ
買収金額:非公開
買収時期:2023年2月
HP:https://www.0n1force.com/
Twitter:https://twitter.com/0n1Force
リリース時期:2021年8月

プロジェクト概要:横向きの漫画風キャラクターをモチーフとしたPFPコレクション。7,777枚のNFTがリリースされており、本校執筆時点での総取引量は約7万ETH(約160億円)

(買収を告知する公式ツイート)

もともと0N1Forceは「アニメ風横顔PFP」の元祖とも言える存在でした。しかしその後にリリースされたAZUKI(2022年1月リリース)が人気となり「アニメ風横顔PFP」の代名詞となりました。

AZUKI
引用:OpenSea

しかし、いわゆる横顔系PFPプロジェクトが多数リリースされる過程で、0N1Forceの人気は陰りを見せ、一時期は6ETHほどだった平均取引価格が0.3ETHほどに下降します。しかし元祖であること、また、強いコミュニティがあることなどから根強い人気があるコレクションであり続けました。

こういった点から「もっとよい運営をすればコレクション価値を高めることもできるのでは?以前のような人気NFTに戻るのでは?」と常に言及され続け、そのことから「買収」の噂の絶えないコレクションでもありました。

買収主として噂だったのは「Bored Ape Yacht Club(以下、BAYC)」を運営するYugaLabs(ユガラボ)です。2022年にバーチャルショップ10KTFがリリースしたグッチコレクションでも0N1Forceはコラボレーション相手として選定されました。

グッチコレクション
引用:10KETF GUCCI GRAIL公式サイト 下段左から3枚目が0N1Force

この時に同じグッチのコラボレーション相手として最もネームバリューがあったのはBAYCであったことから「YugaLabsが0N1Forceを買収するのでは?」という噂も発生していました。

買収の噂が強くなり始めた2023年1月以降からフロアプライスが上がり出し、買収直前の2月にはフロアプライスが約2ETHまで跳ね上がります。

0N1Force

0N1Forceはこの買収により、投資家グループのものとなりました。しかし今まで運営をしていたメンバーは引き続きこのコレクションに関わり続けることが発表されています。

一方で、このM&Aの結果として、発表後はフロアプライスが約1ETH程度に落ち着きました。この結果として市場・コレクターとしては「買収主が、多くの人が期待していたYugaLabsではなかった」という気持ちもあることが見受けられます。

市場やコレクターがNFTプロジェクトのM&Aに何を求めているのかが、よくわかる好例と言えそうです。

【海外事例】CryptoPunks

引用:Mirror.xyz

買収主:YugaLabs
買収金額:非公表
買収時期:2022年3月
HP:https://www.larvalabs.com/cryptopunks
Twitter:https://twitter.com/larvalabs
リリース時期:2017年

プロジェクト概要:「Ethereumにおける最も古いPFPコレクション」と呼ばれるNFTコレクション。EthereumNFTの代名詞ともなっている。現在の総取引量は約110万ETH(約2,600億円)

NFTコレクションの買収劇として最も大型で有名なものはYugaLabsによるCryptoPunksの買収です。史上最も有名といっていいNFTコレクションがこのCryptoPunksです。どこにでもありそうなドット絵で表現された顔のアートですが、10,000枚がEthereumブロックチェーンにフルオンチェーンアートとして書き込まれています。Openseaのコレクションでは暫く「リスト数ゼロ」、つまり誰も売ろうとしない状態が続き、その希少性が高まり続けています。

過去には、レアな特性「エイリアン」持つ、CryptoPunk #5822が8,000ETHで取引されたことで話題にもなりました。

引用:OpenSea CryptoPunk #5822

このコレクションはLarvaLabs(ラーバラボ)というスタジオにより創造されました。このLarvaLabs、常にもうひとつの有名コレクションBAYCを運営するYugaLabs(ユガラボ)と比較されてきました。特にLarvaLabsの弱点として挙げられていたのが「マーケティング力」です。これほどの歴史と知名度があればしっかりとマーケティングを行えば更に価値を高められると考えられていたのです。これはマーケティング力によって後発の、そしていわば「おかしな猿の画像」を超高級ブランドに押し上げたYugaLabsとは対象的です。

古い歴史を持ちながらマーケット力に課題があると考えられていたLarvaLabsとマーケティング力が高くい評価されているYugaLabs、この両者の合意により、CryptoPunksというコレクションをYugaLabsが買収するに至ったのです。

この買収は企業買収ではなくあくまで「CryptoPunksというブランド」の買収です。ですからLarvaLabsは依然として独立したスタジオとして存在しています。LarvaLabsとしては自分たちのコレクションを自分たちで運営するよりもマーケティング力に優れたYugaLabsが運営したほうが更に価値が高められると考えたのだと思われます。

※ちなみにこの際にLarvaLabsが創造し運営していたMeebitsというコレクションもCryptoPunksと合わせてYugaLabsが買収しています。

【海外事例】Pudgy Penguins

Pudgy Penguins
引用:OpenSea

買収主:NFTホルダーグループ
買収金額:750ETH
買収時期:2022年4月
HP:https://pudgypenguins.com/
Twitter:https://twitter.com/pudgypenguins
リリース時期:2021年7月

プロジェクト概要:ずんぐりとした(Pudgy=パジー)なペンギンをモチーフとした8,888枚のNFTコレクション。現在の総取引量は約13万ETH(約300億円)

Pudgy Penguinsコレクションの買収例は今までの0N1Force、CryptoPunksの事例とは少し毛色が変わります。このコレクションは2021年7月にリリースされ、そのキャラクターの可愛らしさが人気でした。発売後の2021年8月には平均取引価格が約4ETHほどで取引されていました。2021年9月には8,888枚のうち唯一、左を向いているレアなNFTが225ETHで取引されたことでも話題となりました。

しかし、このコレクションは2021年末から人気が低迷します。NFTの市況的な問題もありますが、人気低迷の理由は運営側が効果的なNFTコレクション運営をできていなかったことが要因と言われています。具体的にはロードマップとしてゲーム開発などを発表していましたが、開発がまったく進んでいないことが判明したことや、運営側による資金の着服疑惑などが影響しました。

結果としてNFTの取引価格は下がり、2021年12月には平均取引価格が0.8ETH程度となってしまいます。

pudgy penwuinsの取引量グラフ
引用:OpenSea

これに対してこのコレクションのホルダーたちの中で過去にNFT運営経験のあるメンバーが中心となり、NFTコレクションの買収が提案されます。結果として750ETHでこのコレクションの運営権限はそれらメンバーに譲渡されました。

この買収の結果、コレクションに対しての期待は高まり、フロアプライスが上昇します。旧運営においては取引価格が最高でも約3.4ETHほどだったのに対して、運営交代後は約7ETH、買収から約9ヶ月が経過した現在ではフロアプライスが約5ETHと安定した人気を保ち続けています。

こちらはあえて言えば「旧運営側の怠慢に耐えかねてNFTホルダー側が旧運営を追い出した形での買収」と言えます。今回、取り上げた他の事例と違い「敵対的買収」と言って差し支えないでしょう。

【国内事例】OhayaStudio/Cool Collection

NFTコレクションについてはすでに日本国内でも事例が誕生しています。代表的なものは2022年6月に実施された、Skyland VenturesによるOhayaStudio/Cool Collectionの買収です。

OhayaStudio/Cool Collection
引用:PRTimes

OhayaStudio/Cool Collection(現:OhayaStudio/Skyland Collection)はNFTクリエイターおはや氏が個人で運営していたコレクションです。このコレクションを国内のベンチャーキャピタルであるSkyland Venturesが15ETHで買収をしています。この買収については当メディアでも特集をしていますのでぜひ該当記事をご参照ください。

Skyland Ventures、NFTコレクション OhayaStudio/Cool Collection を買収し、クリエイターOhayaと共同運営体制によりNFTコレクション運営を開始

個人で作り出し運営していたコレクションが15ETHで買収され、更にその後の収益も70%がクリエイターが受け取る契約になっていることが話題となりました。

※ちなみに、両者間で取り交わされた合意書はネット上に公開されており誰でも確認が出来ます。

基本合意書:https://docsend.com/view/q8upziyy53dh6dpx

このようなコレクション買収の実情が公開されていることは今後のNFTコレクション運営、買収売却にとって大変によいサンプルになると思われます。

今まで、個人のNFTクリエイターは自身で作品を作り、宣伝し、自身で運営した結果、コレクションから収益を得る、という方法しかありませんでした。しかしこの事例のように「自分で作り出したコレクションを売却し収益を得る、場合によってはその後もそのコレクションからの収益を得続ける」という収益モデルが可能になった、とも言えます。

NFTのM&Aを整理する

今まで述べてきた事例のように、一言で「NFTのM&A」といっても様々なパターンがあります。これは現実の企業のM&Aと同様です。

運営企業、メンバーごと買収する=いわば「吸収合併」

今回紹介した事例でいえば0N1Forceがこれにあたります。場合によっては元運営メンバーにとっては売却資金を手にする事ができ、また安定的な運営主のもとで運営が行える、ということになりえます。

運営しているコレクションのみを買収する=いわば「事業買収」

YugaLabsによるCryptoPunksの買収がこれにあたります。可能性があるコレクションを保有しながらある種の機能(今回で言えばマーケティング機能)を保有していない場合、その機能を保有する企業に運営を委託することが考えれますし、それ以上にそのコレクションをその企業に売却してしまうことも考えられます。

買収し、運営メンバーはすべて交代する=いわば「敵対的買収」

運営側の運営方法に不満を持ったグループが買収により運営側を追放することになったPudgy Penguinsの事例は現実社会でいえば「敵対的買収」にあたると言えます。国内でも、無償での譲渡となったため買収にはあたりませんが、ホルダーがコレクション運営を引き受け、その後、創設者が離れた事例として「PixelHeroes」が存在します。

このように、一言で「NFTの買収。M&A」といっても様々な目的とパターンが存在します。もちろんその結果が好ましいものになるのかどうかについても、それぞれのパターンがどう受け入れられるかに左右されると言えるでしょう。

まとめ

一般的にあまりいいイメージがないこともある「買収、M&A」ですが、企業経営においては通常に行われていることでもあります。今後、NFT市場が成長するにつれて企業経営のように一般的に行われることが予想されます。

企業経営において、何度も会社を立ち上げ成長させ、それを売却しその資金で更にまた起業をする、「シリアルアントレプレナー=連続起業家」が存在するのと同様、NFTにおいてもそのような方が出てくる可能性もあります。つまり個人でNFTコレクションを立ち上げ成功させ、それを他者に売却し、また新たなNFTコレクションを立ち上げる、というような方々です。

NFTプロジェクトのM&Aについてはマーケット(ホルダー・コレクター)の期待に沿ったものであればそのコレクションの価値が大きく向上することが予想されます。特にその期待感に基づいたフロアプライスの向上、取引の活発化はNFTマーケットによい刺激を与えます。そのような可能性のあるコレクションを探し、予想してみることも楽しみ方のひとつでしょう。

参照元:NFT Media

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