イーサリアム(ETH)の2023年の開発ロードマップを理解する
どうも墨汁うまい(@bokujyuumai)です。イーサリアムはマイニングを廃止して独自プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake)であるCasper FFGに移行したマージ(The Merge)という超大型アップデートを行いました。
2023年に入りイーサリアムはさらなる開発の加速となるロードマップを考えており、他にない次世代ブロックチェーン技術で全体を牽引していくことになるでしょう。本稿では2023年のイーサリアム最新の開発ロードマップについて投資家向けに分かりやすく解説を行います。
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イーサリアム開発者会議
2023年にはじめて行われたイーサリアムの開発者会議では、「ポストマージ」の大型アップデートとして「上海(シャンハイ)ハードフォーク」と「カンクンハードフォーク」の実装について話し合いが行われました。
上海アップデートでは主に32ETHをステーキングしているイーサリアムバリデータが、自身の報酬やステーク分のETHを引出しすることを可能とするEIP-4895「Withdrawl Push(引出しプッシュ)」がメインとなっています。上海アップデートの次の大型アップデートとなる「カンクン」では、イーサリアムの性能を向上させるEIP-4844の「Proto-danksharding(プロト・ダンクシャーディング)」を中心とした内容です。
つまり2023年前半の実装を予定している「上海アップデート」ではステーキングの調整、2023年後半以降とみられる「カンクンアップデート」ではイーサリアムの性能を向上させるより重要なアップデートであるということになります。両アップデートについて順を追って見ていきましょう。
1/x:5日に行われたイーサリアム開発者会議によると次期大型アップデートの”上海”ではEIP-4895「ステーキングされている32ETHの引出し」を優先し、EVMの大幅改良EIP-3540の「EOF」は含まれない意向で合意。上海は2023年3月を予定https://t.co/4r1xaikXmM#イーサリアム #ETH #仮想通貨 #暗号資産
— 墨汁うまい(Bokujyuumai) (@bokujyuumai) January 9, 2023
上海アップデートとETHステーキング
イーサリアムのステーキングは2020年にローンチしたものの、開発段階が進むまで引き出しができない片道切符であり、ステーキングされた32ETHとバリデータ報酬として付与されたETHがシステムチェーンであるビーコンチェーン(Beacon Chain)上にロックされた状態が2023年2月現在も続いています。
大元の上海アップデートの予定ではコントラクト実行を行うバーチャルマシン「EVM」の調整を行う内容となっていたものの、バリデータとコミュニティの需要から32ETHを引き出しする機能を追加するEIP-4895がメイン実装へと変更されました。
EIP-4895以外の実装はほぼ全て終了していることから、実装が遅れないように他のEIP(イーサリアム改善提案)は含まれない意向となっています。従って上海アップデートでは利便性向上で新規バリデータが増える可能性があるものの、今までロックされていたETHが市場に解放されるということになります。
カンクンアップデートとプロト・ダンクシャーディング
上海アップデートの次の大型アップデートは「カンクン」と名づけられており、イーサリアムの長期ロードマップの「サージ(The Surge)」をメインとしたものになっています。サージとはロールアップ(Rollup)というイーサリアムのセキュリティの裏付けをもつハイブリッド方式の技術を採用したアービトラム(Arbitrum)やオプティミズム(Optimism)、次世代ロールアップを採用したzkSyncやスタークネットなどを中心としたスケーリングを行うというロードマップの1つです。
サージの初期段階カンクンアップデートではEIP-4844のプロト・ダンクシャーディング(Proto-danksharding)を中心に実装することが決まっています。プロト・ダンクシャードとはイーサリアムのチェーンを複数に分割して並列で処理を行うシャーディング(Sharding)と互換性を持つ技術であり、ロールアップのトランザクションを特別に処理する技術となります。
つまりカンクンアップデート後にはよりセカンドレイヤー(L2)が使いやすくなり、イーサリアムのエコシステムが成長するということになるということです。
EOFは実装タイミングが難しいか?
また上海で導入が検討されていたEOF(EVM Object Format)は「EVMの大幅改良」をするというもので、簡単にいえばEVM v2を導入するというものです。EVMはイーサリアムのコア技術であり、上海アップデートでEIP-4895と同時に実装するにはテスト期間や新調に検討する必要があることから予定が遅れてしまう可能性が非常に高くなるでしょう。
そのため上海アップデートではステーキングされた32ETHの引き出しに集中し、EOFの実装は見送られることになりました。ここでの問題は上海後のカンクンではさらに重要となるプロト・ダンクシャーディングがメインとなっていますが、今までに例のない技術であることからEIP-4895以上にテストが慎重かつ複雑になることが簡単に予想できます。従ってEOFは年内の実装は難しいと考えられます。
イーサリアムは去年に増してネットワークとして大きく成長する年になるということであり、ブロックチェーンの新たな時代を切り開いていくことになるでしょう。
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