【取材】三菱UFJ信託ら、ステーブルコイン導入・普及に向けWG設置、暗号資産取引所も参加
三菱UFJ信託ら、ステーブルコイン導入・普及に向けWG設置
三菱UFJ信託銀行らが、ステーブルコイン(パーミッションレス型ステーブルコイン)の導入および普及を目的としたワーキンググループを設置し、検討を開始することを11月30日に発表した。
このワーキンググループは、金融機関、取引所/私設取引システム(Proprietary Trading System)、証券会社、暗号資産交換業者、ソフトウェア会社及び法律事務所等の計41組織からなる。
ちなみに暗合資産交換業者としては、SBI VC トレード、FXcoin、カイカエクスチェンジ 、コインチェック、Coinbase、DMM Bitcoin、BTC ボックス、bitFlyer 、楽天ウォレットの9社が参加する。
なおリリースではステーブルコイン(パーミッションレス型ステーブルコイン)を「ブロックチェーン(BC)等の電子情報処理組織を用いて移転することができる、法定通貨と価値の連動等を目指す決済手段(資金決済法における『電子決済手段』)のうち、特定の管理者の許可なく誰でもネットワークに アクセスできるBC上で発行されるものの総称」と定義している。
また同ワーキンググループは解決したい課題としてNFT取引における支払い対価の方法が挙げられている。具体的には、次の2つが示されている。
(1)NFT 販売の支払対価として「銀行振込」や「クレジットカード」を前提とすると、NFT 発行事業者にとり、NFT 発行前にオフチェーン(BC外)で都度着金確認を行う等の負荷が生じ、また日本以外のグローバルなNFT マーケットプレイスへの出品ができない。
(2)オンチェーン(BC上)での自動処理や、グローバルな NFT マーケットプレイスへの出品を目的に暗号資産を用いると、受領対価について価格のボラティリティを抱えることになる。
そして同社らは海外暗号資産交換業者との競争上の観点から、国内暗号資産交換業者としても、暗号資産取引で利用し易いステーブルコインの取扱いを希望する声が多いと認識しているという。
また多くのNFTや暗号資産はパーミッションレス型ブロックチェーンで発行・流通しているため、パーミッションレス型ブロックチェーン 上でのスマートコントラクトを用いた自動処理が可能で、価格が安定的なパーミッションレスステーブルコインの存在が不可欠だと結論づけている。
今後のワーキンググループの取り組みとしては、2022年内を目途にパーミッションレスステーブルコイン導入に必要な規制・要件、及びスキーム案を公表することを予定している。
さらに2023年初からは、公表されたスキーム案のうち国内規制に照らして独自の実装を施す必要がある場合には、ステーブルコイン発行基盤のプログマコイン(Progmat Coin)を使って業務・システムの設計などを行っていく方針だ。
三菱UFJ信託銀行のプロダクトマネージャー齊藤達哉氏へ取材
「あたらしい経済」編集部は、三菱UFJ信託銀行デジタル企画部デジタルアセット事業室のプロダクトマネージャー齊藤達哉氏へ取材を行なった。
−−NFTや暗合資産取引においてクレカや銀行振り込みが支払い対価である場合と比較して、パーミッションレス型ステーブルコインが導入できれば、具体的にどのような業務が効率化されていくと考えていますか?
NFT発行事業者の担当部署の方が、NFT購入申込者単位で1件ずつ着金確認を行い(クレカ支払の場合は実際の着金は更に先)、都度NFTの発行オペレーションを実施する必要がなくなることが想定されます。
また同じパーミッションレスブロックチェーン上でステーブルコインの入金が確認されれば、自動で送金元アドレスにNFTを発行するスマートコントラクトの実装により、人手を要しないスケーラブルなビジネス構築が可能になると考えています。
−−またパーミッションレス型ステーブルコインを起点に、新たにどのようなビジネスが可能になると思いますか?
例えばトライアルの取り組みが増えているDAOに関していえば、DAOの参加権自体はガバナンストークンを購入して取得しつつ、活動に比例して受け取る報酬自体は、パーミッションレスステーブルコインを使うことが想定されます。
“理想像的なDAO”は、いかに多くの機能群をオンチェーンで完結できるかを重要視していますが、貢献度に応じた利益分配を計算するところまでをオンチェーン化しても、肝心の報酬自体を法定通貨でしか支払えない場合には、そこが大きなボトルネックになりえます。
報酬計算から支払いに至るまでオンチェーンで完結するには、DAOが存在しているパーミッションレスブロックチェーンと同一チェーン上で利用可能なステーブルコインがあることが望ましい、と考えています。
−−CBDCが発行された場合、パーミッションレス型ステーブルコインはどのように共存していくのでしょうか?
CBDCは、無条件にブロックチェーン上のトークンであることを想定しがちですが、現段階の公表情報によれば、採用する台帳技術は必ずしもブロックチェーンとは特定されていません。
ブロックチェーンを用いないとすれば、前述のようなユースケースを実行するには間を繋ぐAPI群といった仕組みが別途必要になることが想定され、実装方法としてあまりシンプルとはいえない(=中間機能を用意する主体を維持するためのコストも想定される)と想定されます。
また、必ずしもエンドユーザーと中央銀行が直接結びつくわけでもなく、現状の資金決済市場のように、中央銀行⇄市中銀行間の”当座預金(1層目)”、市中銀行⇄エンドユーザー間の”銀行預金(2層目)”のような、2層構造で、当座預金にあたる1層目部分が”CBDC”という名の新しい業者間決済システムとなる、というシナリオも十分想定されます。
そして2層構造となる場合、ステーブルコインは、市中銀行⇄エンドユーザー間の”銀行預金(2層目)”にあたる部分であって”当座預金(1層構目)”にあたる部分ではないため、むしろステーブルコイン発行者間で裏付法定通貨を動かすプロセスがより効率化されるといった、補完関係になるのではないか、と個人的には考えています。
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デザイン:一本寿和
参照元:ニュース – あたらしい経済