イーロン・マスクがCEOを務めるテスラがビットコインの売却。その背景の狙いとは?
イーロン・マスク氏がCEOを務める電気自動車メーカーのテスラは、2022年第2四半期(4月から6月)に2020年から保有しているしていたビットコイン(BTC)のうち75%を売却して、実現利益を獲得したことを明らかにしました。
テスラはビットコインへの投資によって利益をあげることができたのか、この記事ではテスラによって行われたビットコインにまつわる一連の事象の背景を追っていきます。
今回行われたビットコインの売却価格とは
今回の売却は、1ビットコインあたり29,000ドル(約396万円)の価格で行われたと考えられます。
テスラが2022年7月20日(水)に公開した収益報告書によると、第2四半期に9億3,600万ドル(約1,280億円)相当のビットコインを売却したことが明らかにされています。
この売却によってテスラには2億1,800万ドル(約300億円)相当のデジタル資産が残り、その大部分はビットコインに当てられる可能性もあります。
テスラCFO(最高財務責任者)であるザック・カークホーン氏による決算発表
テスラのCFO(最高財務責任者)であるザック・カークホーン氏は決算報告会で、実現利益の獲得のために、保有しているビットコインの大部分を法定通貨に変換しましたが、残りの保有の減損損失(※減損損失とは、企業が保有する資産が元が取れない状態になったときに発生する損失のこと)によって1億600万ドル(約147億円)の費用がかかりましたと述べました。
実現利益を獲得したということは、ビットコインを購入した際に支払った以上の価格で売却したということを意味します。
この売却のニュースを見た人の中には、ビットコインが損失を出したためテスラが売却を行った可能性が高いといった見通しを立てている人もいましたが、テスラが以前に行ったビットコインの売却によって獲得した利益を考慮しても、今回を合わせた全体的な結果は横ばいである可能性があると考えられています。
テスラが実際に保持していたビットコインの総量は情報開示されていませんが、第2四半期に向けて約42,000BTCを購入していたと推測されています。
その場合、保持していた75%のビットコインを売却したのち、約10,500BTCが会社に残っている可能性があることが予測できます。
また、売却した9億3,600万ドル(約1,280億円)相当のビットコインの売却益は、1ビットコインあたり約29,000ドル(約396万円)の販売価格でした。
テスラがビットコインを購入した背景
テスラがビットコインを初めて購入したことが判明したのは2021年2月であり、バランスシートが開示されたことによって15億ドル(約2,048億円)相当のビットコインを購入されていたことがわかりました。
その当時は、ビットコインは1ビットコインあたり30,000ドル(約410万円)から40,000ドル(約546万円)の範囲で取引が行われていました。
購入が判明したその後の2021年の第1四半期に、テスラは必要に応じて流動性を高めるためにビットコインを使用したいといった理由から、保有していたビットコインの10%を売却しました。
つまり、ビットコイン価格の変動は、それが売買されたときの収益にのみ影響します。
テスラはビットコインを時価評価資産として考慮していないのです。
テスラCEOイーロン・マスク氏による報告
テスラCEOであるイーロン・マスク氏は収支報告会で、今回行われた売却は、デジタル通貨への信頼が失われたために実施したという訳ではなく、現金を調達する必要があったためであると主張しました。
マスク氏は、新型コロナウイルスのパンデミックによってテスラの上海工場が閉鎖となり、会社として不確実性が高まり、より強力な現金調達するポジションが必要であると述べました。
中国での新型コロナウイルスによるパンデミックを考えると、会社の全体的な流動性を懸念しているだけであると主張しているのです。
さらに、テスラが将来的に再びビットコインへのエクスポージャー(金融資産のうち価格変動のリスクが伴っている金額)を再び増やす可能性はあると付け加えました。
売却に対して寄せられたコメント
マスク氏が会社の保有している膨大なビットコインの一部を売却した背景には他にも理由があると推測する人もいます。
デジタル資産ブローカー「GlobalBlock」のアナリスト、マーカス・ソティリオ氏は、金利上昇というマクロ経済的背景を考えると、ビットコインが売却のオプションと見なされることは理にかなっていますが、テスラの場合においては、ベストな手段であったかの判断はできかねますとコメントしました。
これは、ビットコインは資産または安全な避難所ではないため、適切な準備金にならないという印象を多くの人に与えるからです。
しかし、ブロックチェーンにおけるセキュリティー技術を作成している機関であるBPSAA理事会メンバーであり、米国に本拠を置くオープンレンディングプラットフォームである「SmartFi」のエンタープライズソリューション担当副社長であるクリス・テリー氏によると、逆に、ビットコインを売却するという決定は、ビットコインの有用性を証明しており、れっきとした金融資産と成り得るとコメントしており、あらゆる方面の意見が寄せられています。
また、ソティリオ氏によると、ビットコインを売却するというこの決定は、世界で最も裕福な人物(マスク氏)による優れたリスク管理の一例となったと付け加えました。
今回のビットコインの売却がなければ、テスラの現金の増減はマイナス8900万ドル(約124億円)となり当然これは望ましくない結果です。
また、マスク氏は決算説明会で、テスラはドージコイン (DOGE) を一切販売していないと述べています。
テスラは DOGEの購入を発表したことはありませんが、同社が商品の一部の支払いとしてミームコインを受け入れていることは知られています。
テスラがどれだけドージコインを保有しているかは、正確には不明のままとなっています。
テスラのビットコイン売却によって起こった価格の下落
テスラのビットコイン販売のニュースが2022年7月20日(水)に発表されたあと、ビットコインの価格は下落しました。
コインは過去24時間で2%下落し、22,951ドル(約318万円)の価格に変化しました。
同時に、テスラの株価は市場前取引で2.09%上昇して757.99ドル(約10万3,000円)になりました。
「ビットコインは現在、世界的なマクロ資産であり、マスク氏よりもはるかに大きな力によって動かされています。
確かに、ビットコインの価格はニュースに対してお決まりの反応を示しましたが、7日間連続で上昇した後、実際には健全な下落が予想されていました。 」
と、仮想通貨ヘッジファンドARK36のエグゼクティブディレクターを務めるミッケル・モーチ氏はコメントしました。
テスラの決算報告書:
https://onl.tw/9C5MG2u
元記事:https://cryptonews.com/news/did-tesla-make-profit-on-its-bitcoin-investment.htm
参照元:NFT Media