欧州中央銀行(ECB)がCBDCを発行しないリスクを警告
欧州連合(EU)19カ国の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)は、「ユーロの国際的役割(The International role of euro)」との長文の2020年次リポートの中で、デジタル通貨を提供しないことで生じる(世界金融の)安定に対するリスクに関心を払うよう呼び掛けています。
国際決済はテクノロジー大企業に独占される可能性
ECBはリポートの中の「中央銀行デジタル通貨と世界の通貨(Central bank digital currency and global currencies)」の項目で、デジタルユーロ発行の必要性が高まっていることをさまざまな局面から強調しています。
リポートは現金利用の衰退に加えて、国内および国境越えの決済が将来、外国のテクノロジー大企業など国内プロバイダー以外によって独占される事態を想定して、既存の金融システムが崩壊するリスクを分析しています。リポートは名指していませんが、Facebookが発行する計画のステーブルコイン「ディエム(Diem)」がそれでしょう。
ECBによると、このような事態は金融システムの安定を脅かす可能性があります。リポートは「CBDCの発行は、国内の決済システムの自治とデジタル世界で通用する通貨の国際的利用を維持するよう支援する」との結論を導いています。
決済のデジタル化は安全性や手数料軽減などの効果
リポートによると、決済のデジタル化手段は、安全性や取引手数料の軽減、通貨の国際的採用を容易にするバンドル効果をもたらします。このような機能は、決済手段や価値の保存としてCBDCに関してプラスのフィードバック効果をもたらし、世界にアピールする効果もあります。
さらにCBDCは、通貨が不安定でファンダメンタルズが脆弱な国にとって、通貨の代用となりうることを指摘しています。これによってこれらの国は、国内決済をCBDCに置き換える方向に向かうことになります。
デジタルユーロの発行は最終結論待ち
リポートはさらに、国際決済システムにおけるCBDCの相互運用、ユーザーの匿名性、非居住者による利用制限、CBDCによる給与支払い、送金・決済メカニズムなどに触れています。
デジタルユーロの発行はまだ最終的な結論が出ていません。しかし、国際決済にCBDCが利用される時代になるとすれば、デジタルユーロを国際決済に利用することは可能になります。
リポートの結論は以下の通りです。デジタルユーロは、ユーロの国際的役割の観点から必ずしもゲームチェンジャーになり得ないかもしれません。ユーロの世界的アピール強化には貢献することができても、国際的通貨のステータスを定義する「基本的な力」を変えることはできないという評価です。
参考
・The international role of the euro, June 2021
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参照元:CoinChoice