DAppsやDeFiの新たなトレンド「マルチチェーン展開」とは?
新たなトレンド「マルチチェーン展開」
最近のDApps(分散型のアプリケーション)やDeFi(分散型金融)には、マルチチェーン展開という新しいトレンドが生まれています。
マルチチェーン展開とはその呼び名の通り、複数のブロックチェーン上でアプリケーションを展開する施策です。例えば、あるアプリケーションをイーサリアム(Ethereum)上で展開して、同時にバイナンススマートチェーン(Binance Smart Chain)上でも展開するというような施策です。
このような事例は最近では増えていますが、例えば、分散型取引所のアグリゲーターの1inch Exchangeは、イーサリアム上で展開して同時にBinance Smart Chain上でも展開しています。1inch Exchangeは長らくイーサリアム上のみで展開していましたが、Binance Smart Chain上でも展開を今年2月から開始しました。
マルチチェーン展開の特徴は、アプリケーションを移行させない点にあります。アプリケーションはイーサリアム上での開発をストップして、他のブロックチェーンに移動せずに。同時に展開します。
またマルチチェーンそれぞれのアプリケーションは、スマートコントラクトレベルで相互互換性を持っているわけではありません。つまり例えば、上述の1inch Exchangeの場合、イーサリアム上の1inch ExchangeとBinance Smart Chain上の1inch Exchangは流動性を共有していません。
それでもユーザーは、異なるブロックチェーン上の同じアプリケーション・UIで、そのブロックチェーン上に形成される流動性で取引体験できるのがマルチチェーン展開です。
EVM互換がマルチチェーン展開を容易にする
例に挙げたのは1inch Exchangeですが、最近ではこのマルチチェーン展開が非常に増えています。その理由のひとつは、Binance Smart Chainなど他のブロックチェーンのユーザーも増えてきたからです。理由は他にもあります。
EVM互換が、マルチチェーン展開を容易にしている背景です。EVMとはイーサリアムのバーチャルマシンで、イーサリアムの状態遷移はEVMによって処理されています。
EVMはスタックベースの仮想マシンでバイトコードによって処理が実行されます。スマートコントラクトと呼ばれるプログラムはソリディティ(Solidity)やバイパー(Vyper)などの高級言語で記述されてバイトコードにコンパイルされ、EVMで実行されます。
このEVMはもともとイーサリアム(Ethereum)でプログラムコードを実行するために開発された仮想マシンですが、最近ではさまざまなブロックチェーンがEVM互換性を持たせています。EVM互換性を持たせることによってイーサリアム上のアプリケーションを移植することを容易にしたり、新しい開発言語を習得しなくてもそのブロックチェーン上で開発できるようにしています。
EVMを軸にしたブロックチェーンは近年増加しており、以下のようなブロックチェーンが該当します。
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【パブリックブロックチェーン】
- Binance Smart Chain
- TomoChain
- TRON
- Ethereum Classic
- Solana
- VeChain
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【独自ブロックチェーン向けモジュール】
- EVM Pallet(Substrate)
- Ethermint(COSMOS SDK)
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【レイヤー2やサイドチェーン】
- xDAI
- Loom Network
- Optimism(Optimistic Rollup)
- Skale Network
- RSK
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【エンタープライズブロックチェーン】
- HyperLedger Besu
- Quorum
このような背景からアプリケーション側は、元々イーサリアムで展開していたアプリケーションを他のブロックチェーン上にもコピーして、多方面でユーザーを獲得することがトレンドになっています。
恐らくイーサリアムのスケーラビリティ問題が続き、他ブロックチェーンのユーザーも拡大傾向にある限り、このトレンドはしばらく続くのではないかと推測されます。これらマルチチェーン展開は、2021年のDeFi/DAppsで最も大きなトレンドです。
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参照元:CoinChoice