Circle社(USDC)はなぜソラナを4番目のパートナーとして選択したのか?
Solana(ソラナ)エコシステムにCircle社が発行するステーブルコインUSDCが新たに追加されることが発表されました。ソラナとしてはテザー社のUSDTに続く2番目の法定通貨担保型ステーブルコインの採用となります。またUSDCとしてもイーサリアム、Algoland(アルゴランド)、Stellar(ステラ)に続く4番目の採用です。
以前の記事「ソラナ(Solana)ブロックチェーンに統合されたテザー(USDT)、及びその影響力」でも取り上げたUSDTの時価総額(10月時点でおよそ170億ドル)と比較するとUSDCの時価総額は10月時点でおよそ1.3億ドルと10倍以上の開きがあり、一見するとUSDTに見劣りするように思えますが、DeFi(分散型金融)領域に限定するならばUSDCの存在感はUSDTのそれを上回るものがあります。
現在でこそUSDTを採用するイーサリアム上の分散型金融アプリケーションは存在しますが、ほんの一年前はUSDCは採用してもUSDTは採用しないというケースは珍しくありませんでした。現在でも発行体を信用しなければならない法定通貨担保型のステーブルコインはUSDCのみ取り扱うという分散型アプリケーションは存在しており、USDCのDeFi市場における信頼性と透明性の高さがいかに評価されているかをうかがえます。
今回の記事ではCircle社がなぜソラナを4番目のパートナーとして選択したのか、また同社が注力するDeFi領域での展望を踏まえて解説します。ソラナの基礎的な解説はこちらの記事「ソラナ(Solana)とは?秒間5万トランザクションを処理できるブロックチェーン」で行っています。
Circle社がソラナをパートナーとして選択した理由
Circle社はなぜソラナを新たな提携先としたのか、その理由は憶測の範囲ではありますが、Circle社の過去の記述と今回のソラナ提携に関する公式発表から、主に2つの理由があるのではないかと推察されます。
一つは今後のDeFi市場はマルチチェーンになるのではないかという予測。そしてもう一つは従来のCeFi(中央集権型金融)に近しいUX(ユーザー体験)を提供できなければ、一般的な個人投資家がパブリックチェーンをベースとしたDeFi市場に参入する可能性は低いのではないかという予測に基づいています。
これからのDeFi市場はマルチチェーンになる可能性
まず前者のマルチチェーンの可能性についてですが、これは現時点のDeFiプロトコルの多くが稼働しているイーサリアムブロックチェーン上のガス代高騰に関連して予測される未来です。
マネーレゴと称されるDeFiの性質を考えると、イーサリアム上にさまざまなプロトコルが構築され、それらが相互に作用し合いながらエコシステムを拡大していくというシナリオが考えられます。2020年にイーサリアム上のDeFiアプリケーションが使用される頻度が増加しガス代高騰が発生したことを踏まえると、今後単一のチェーンだけでDeFi市場が構成されるというシナリオとは別のシナリオが用意されていることは、今後のDeFi市場の成長を阻害する要因を避ける上で重要なことです。
イーサリアムはこの課題に対して将来的なアップグレードにより対処するために取り組んでいますが、DeFi市場の別シナリオとして複数のブロックチェーンと相互運用性をもつマルチチェーンになる可能性も考えられます。USDCはこのマルチチェーンの可能性を踏まえて、イーサリアム以外のDeFiプロトコルを持つブロックチェーンに対応する動きをみせており、今回のソラナをはじめイーサリアム以外のブロックチェーン上でも稼働するデジタルドルとしてその領域を拡大しています。
CeFiに近しいユーザー体験の提供
2020年はDeFi市場が大きく成長し、かつては圧倒的にCeFi(中央集権型金融)が優勢であった暗号資産市場も必ずしもそうであるとは言えない状況になってきました。現に大手暗号資産取引所であるバイナンス(Binance)は、2019年のBinance Chainとは別にDeFiアプリケーションを構築できる専用の独自ブロックチェーンBinance Smart Chainを9月にローンチし、DeFi市場確保に踏み出しています。
とは言え、一般的な個人投資家がDeFi市場に参入するにはまだまだ障壁があります。その理由は暗号資産ウォレットとその鍵管理に対する知識不足、パブリックブロックチェーン上での取引手数料に相当し価格変動するガス代というCeFiにはない概念の存在、この他にも未成熟なクロスチェーン技術や取引処理時の課題といったようにUX面でCeFiに劣る側面はまだまだあります。
今のDeFi市場はまだ一般に受け入れられるようなものではありませんが、一方でCeFiにはない開かれた金融システムとして新しい価値を提供していることも事実であり、CeFiを代替する金融システムとして今後の市場拡大が期待されます。そのような中でソラナは上記課題のうち特に取引処理の課題を解消する次世代パブリックブロックチェーンとして台頭し、最大50,000TPSをサポートし決済は400ミリ秒で完了、トランザクションコストはわずか1セントとCeFiに匹敵する性能を発揮しています。ウォレット鍵管理の課題やメタトランザクションの実現、クロスチェーンなどはソラナブロックチェーン上の今後の開発に期待するところはあります。しかし、少なくともCeFiに近しいユーザー体験を実現しつつ、より包括的でオープンな金融システムを実行できる数少ない基盤としてその可能性が期待されるパブリックブロックチェーンの一つであると言えるでしょう。
ソラナは2020年にローンチしたばかりの新興ブロックチェーンではありますが、すでに暗号資産取引所FTXとアラメダ・リサーチ(Alameda Research)が背後につく分散型取引所セラム(Serum)がチェーン上で稼働しています。その他にも、イーサリアムとの相互運用を実現する開発促進や今回のような新たなステーブルコインの統合など、開発者を惹きつける魅力的な基盤として急速に成長しており、新興DeFiプラットフォームとしての今後の可能性が期待されます。
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参照元:CoinChoice