デジタル人民元は米ドル支配打破のため、中国人民銀行(PBoC)金融誌が公式論評
中国人民銀行(PBoC)はこのほど、中国が進めているデジタル人民元、公式には中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行について、世界の先行者となって「ドル支配」を打破することであると公式に認めました。PBoC系列の金融誌「チャイナ・ファイナンス(China Finance)」の論説蘭(9月号)で明らかにされました。
新たな決済システムを確立してドル支配を排す
ロイター通信によると、PBoCはこれまで、すでに高度なテスト段階にあるCBDCについて極力言及することを避けてきましたが、今回恐らく発行の真意を含めて、その重要性を強調しました。
その中でCBDCを発行してコントロールする権利の行使によって、各国間の競争という「新たな戦場」が生まれるろうとの認識を示しました。その上で「CBDCの発行と流通は、既存の国際金融に大きな変化をもたらすだろう」と指摘しています。
PBoCはさらに、「中国は法定のデジタル通貨を発行する多くの利点と機会を持っており、デジタル通貨を発行する最初の国になる必要がある」と主張しています。PBoCはまた、「人民元の国際化の主要な要素として、ドルの独占を打破するための新たな決済システムの確立が必要である」と論じています。
デジタル人民元発行を支援するため130件以上の特許申請
中国メディアは8月、中国商業銀行など4大国営銀行が、デジタルウォレットの大規模テストをすでに開始していると報道、デジタル人民元の公式運用が近づいている動きとして注目されました。チャイナ・ファイナンス誌の論説は、デジタル通貨データのフィードバック改善によって、金融政策の伝達が強化され、新型コロナウイルスのパンデミック終息後の経済回復を支援することになると強調しています。
同誌によると、PBoCのデジタル通貨研究部門はすでに、4月末時点で発行から流通、アプリまで、仮想通貨に関連する130件の特許を申請しています。
米金融専門家集団は中国の動きに警戒、デジタルドル発行を呼び掛ける
中国の動きに対抗して、米国の商品先物取引委員会(CFTC)のクリストファー・ジャンカルロ前会長ら金融専門家グループは、デジタルドルの発行を呼びかけ、中国のCBDC発行に後れを取ると、世界の準備通貨としての米ドルのステータスを失うことになると警告しました。
同グループは5月、「デジタルドル・プロジェクト:US CBDCの検討について」と題するホワイトペーパーを公表しました。その中で中国の動きを警告して、次のように述べています。
「米ドルが今世紀を通じて世界の主要な準備通貨としてとどまるとするならば、アナログなものあるいは、デジタルトークンのようなますます支配的なものの一部にとどまっていてはならない。米ドルはそれ自体デジタルトークン化された通貨となり、世界はデジタルトークン化された物の価値によって評価し、取引されなくてはならない」。
「決済システムが米ドルと深く経済的、地理的に結び付いている西欧の銀行を避けて通ることになれば、外交政策の中心的かつ一元的なツールとしての経済制裁の優位性は、深刻なリスクにさらされる。それは特に(経済制裁など)ソフトパワーの行使など米国の世界的指導力が、リスクにさらされることを意味する」。
参考
・China needs first mover advantage in digital currency race: PBOC magazine
・The Digital Dollar Project Exploring a US CBDC
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参照元:CoinChoice