ビットコイン(BTC)など仮想通貨は政治献金になりうるのか?
選挙資金や政治献金は、特に米国ではセオドア・ルーズベルト大統領が企業による政治献金の規制を呼びかけて以来、選挙制度改革の中心的課題となってきました。暗号資産(仮想通貨)の出現によってこの数年、選挙資金との関連で新たな解釈が行われようとしています。
米選挙運動法に基づく寄付金の定義の中でBTCを通貨とし位置付ける
米連邦選挙委員会(FEC)は1971年連邦選挙運動法に基づく寄付金の定義の中で、ビットコイン(BTC)を「法定通貨もしくはその価値あるもの」と位置付けて政治献金の対象として認めました。
さて現実はどうでしょうか?政治献金の世界でもダークウェブが暗躍する恐れがあると懸念されています。シドニー工科大学が2018年に発表した論文によると、「ビットコインユーザーの4分の1、ビットコイン取引の2分の1は不法活動絡みである」と指摘し、ビットコインは720憶ドル市場で不法に取引されていると結論付けています。
FECは2014年、政治活動へのビットコイン現物の寄付を認め、当時の市場価値に基づいて、寄付の上限額を100ドルと決定しましたが、あくまでもアドバイザリー(助言)的な性格から上限額を上回っても罪に問われることはありませんでした。もちろんトランザクションのすべては、ブロックチェーンの公的な台帳上に記録されます。
17-18年の米中間選挙では寄付総額25億ドル中BTC寄付は57万ドルと小額
ビットコインは当初意図した小切手のような交換媒体ではなく、価値の保存(store-of-value)として有用とされています。政治献金の場合も同様で、17-18年の米中間選挙では、約57万ドル(約6,100万円)が仮想通貨による選挙献金が9人の候補、政党、スーパーPAC(政治行動委員会)に流れましたが、あらゆる方面からの寄付総額は25億ドルだったことと比較すると、仮想通貨による寄付は小額にとどまっています。
20年米大統領選の民主党候補の1人だったアンドリュー・ヤン(Andrew Yang)氏は、仮想通貨の寄付を受け入れた唯一候補でした。ヤン氏が仮想通貨の寄付を受け取るモチベーションがどのようなものであれ、多くの選挙民が考えているほど容易なことではありません。大統領選で寄付をしたい個人は、大統領選挙コンプライアンス代表事務所に15分間の電話をかけて、本人が米国籍で選挙権を持っていることなどを確認しなければなりませんでした。
仮想通貨と選挙献金のあり方は再度問われるべきだ
仮想通貨による政治献金は長年、偏見に満ちた感情で迎えられて、献金を受けた政治家は冷笑と批判の目を浴びました。クローバー(Crovr)の調査によると、回答者の64%は「政治家は仮想通貨の寄付に対する甘い規制によって有利の立場になるか?」との質問に「イエス」と答えています。
ヒラリー・クリントン元国務長官(民主党)の側近が16年の大統領に当たって、仮想通貨による寄付を拒否した理由は、そのような選挙民の感情を反映しているはずです。側近の考えは、クリントン氏が「リバタリアン過ぎる」と評価されることを恐れといわれます。
20年米大統領選を前にして、ビットコインと選挙献金のあり方は再度、問われることになるかもしれません。
参考
・Are Bitcoin donations in campaign finance a coalition worth supporting?
・CRYTPO & POLITICS
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参照元:CoinChoice