テゾス(Tezos)のICOに関する訴訟問題:背景と現在の状況整理
スマートコントラクトが実行でき式検証を行うことができるためその安全性が高いブロックチェーンプラットフォームのテゾス(Tezos)。今回はそんなテゾスが抱える訴訟問題の背景と現状を整理します。
テゾス(Tezos)はスマートコントラクトが実行でき、さらに形式検証を行うことができるためその安全性が高いブロックチェーンプラットフォームです。よく金融や不動産分野との親和性が高いと言われているテゾスが実際にどんなところで使われているのかを調べてみます。
Tezosが抱えていた訴訟問題
Tezosは2017年7月、トークンの新規発行による資金調達方法の一種、ICO (イニシャル・コイン・オファリング)により260億円相当の資金調達をしました。
その後Tezosは、内紛によってトークン配布が滞り投資者から集団訴訟を起こされるという事態に陥っていたことは当時から仮想通貨をウォッチしていた人たちにとっては広く知られています。
2017年当時、Tezosは創業者であるオーサー・ブライトマン(Arthur Breitman)氏とキャスリーン・ブライトマン(Kathleen Breitman)氏夫妻以外に、Tezosファウンデーションの最高経営責任者(CEO)にJohann Gevers(ヨハン・ガーヴァース)氏を据えました。しかし、その後方向性の不一致が原因でブライトマン夫妻はヨハン・ガーヴァース氏の辞任を命じています。その後、これをきっかけに内紛となり、ブライトマン夫妻側は、カーヴァース氏の解任が受け入れられない場合Tezosから手を引くと通達しました。
ICOでトークンを購入した投資家はこの様相に不安を感じてTezosを訴訟するに至りました。集団訴訟は、2017年10月と11月に2度行われ、2018年4月に訴訟を統合し、アメリカで無登録の証券募集を行ったことを理由にテゾスに2,500万ドルの補償を求めていました。これが現在に至るまでTezosが抱えていた訴訟の背景です。
TezosのICOに関する訴訟問題解決へ向かう
Tezosファウンデーションは2020年3月、これらの訴訟について、裁判所の承認待ちの状態で和解のステップを踏んでいることを明らかにしました。
Tezosは和解金を支払うものの不正な行為に関しては否定しています。しかしながら、恒常的に費用とリソースを負担し続ける裁判よりも、一度和解金を支払うことになってでも事件の終結を計るほうがTezosとコミュニティ全体の最善の利益になると判断したようです。抗弁の中でTezosファウンデーションは、ICOは投資ではなく寄付行為であったと弁明しています。寄付の返礼がTezosトークンであり、それは違法な証券ではないという主張です。
投資家やコミュニティへの影響
この和解はトークンホルダーやエコシステムにどのような影響を及ぼすのでしょうか?
Tezosファウンデーションは最近の財務レポートで、2020年1月31日現在で6億3,500万ドル(約650億円)を保有していることを明らかにしているため、和解額は2,500万ドルの範囲内であれば、Tezosに損害を与えることはないと考えられます。
Tezos ファウンデーションの保有額は最近の市場のTezosの価格下落により多少低く見積もる必要があるかもしれませんが、2500万ドルという和解金は、Tezosファウンデーションの保有資産の~5%にしかならないため、これが原因で財務危機に陥ることはないと考えられ、投資家や開発コミュニティにとっては良いニュースです。
また、投資家はTezosトークンが違法な証券であると認定され各取引所で上場廃止を誘発するようなシナリオを回避できます。開発コミュニティにとっても、Tezosトークンがこの問題を回避したことで広く流通して、より安定したプラットフォームになることは望ましいでしょう。
参考
・Update On Civil Litigation Involving The Tezos Foundation
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参照元:CoinChoice