コインベース(Coinbase)のCEOが考える暗号通貨決済の未来
決済分野での利用は限定的である暗号通貨
暗号通貨の決済分野での利用は限定的です。ビットコイン(BTC)の送金は、10分のブロックタイムの制約があり、またボラティリティにも左右されます。アリペイ(Alipay)やヴェンモ(Venmo)、日本ではペイペイ(PayPay)のようなサービスのほうが決済サービスとしては主流で、ほとんどの人にとってこれらのサービスから暗号通貨決済に乗り換える理由はないでしょう。
暗号通貨が決済分野で利用されることはないのでしょうか。米最大の取引所であるコインベース(Coinbase)の最高経営責任者(CEO)であるライアン・アームストロン(Brian Armstrong)氏は、自身のTwitterで暗号通貨決済の未来について考えを述べています。同氏によると、暗号通貨の決済はこれまでの歴史上存在しなかった決済手段として浸透するのではないかといいます。
Summarizing a recent conversation I had with friends comparing messages to payments, and what happens when technology drives down costs…
— Brian Armstrong (@brian_armstrong) February 6, 2020
暗号通貨決済の未来
アームストロング氏は、通信手段の歴史を振り返って、1800年代の人々は1ヶ月に一度手紙を出す程度、1900年代には電話が登場したもののまだ高額で月に数回利用する程度だっただろうと述べています。その後、2000年近くには、SMSが普及、1通のメッセージあたり20セントで送信できるようになり、日に数通のメッセージを送るようになり、ピーク時点には100億のメッセージが流通するようになったと言います。
その後は、現在に利用されているようなワッツアップ(WhatsApp)や電子メールのようなメッセージ送信コストをさらに引き下げるアプリケーションが登場して、日に40や50のメッセージを送り合うことは一般的になっています。
もし1800年代の人々に日に40件のメッセージを送る現代の生活を説明しても理解してもらえないでしょう。メッセージの量だけでなく、メッセージのコストが下がったことによって、ビデオコールやボイスメモ、スタンプ、絵文字などのクリエイティブなアイデアが存在していることも1800年代の人々には理解されないはずです。また、メッセージは国境を簡単に超えるグローバルなツールとしても浸透しています。
この通信手段の変遷を理解したうえで、決済に目を向けると、現代の平均的なアメリカ人は、毎月40回の電子決済を行っています。加えてクレジットカードの決済手数料は決済ごとに2%です。また、決済はローカルで行われており、グローバルではありません。
通信手段が、安価でグローバルになったときに、人々の生活が変化し、スタンプや絵文字、ボイスメモなどのイノベーションが起きたように、決済分野でも大きな変化が起こるはずであるとアームストロング氏は主張しています。
1カ月ではなく1時間あたりに40の決済トランザクションを行うことは、現代を生きる多くの人にとってはイメージできないはずですが、将来的にはあり得ることです。例えば、Webサイトに1クリックでチップを送ったり、Eメールを送って相手に優先的に表示させるため少額が添付されていたりなどが考えられます。
マイクロペイメントを実現する技術の土台はできている
このようなマイクロペイメント決済が暗号通貨で利用可能になるためのライトニングネットワーク(Lightning Network)やステートチャネル(State Channel)をはじめとしたレイヤー2の技術は、初期の研究開発期間を脱して少しずつアプリケーションもリリースされていますが、まだ未成熟であることは変わりありません。技術の土台ができたことから、これらを利用して、多くの企業がサービスに落とし込む工夫をする時期が到来したと言えます。
上述した論考を説明したCoinbaeeもマイクロペイメントに関する具体的な取り組みは現段階で行っていないものの、earn.comの買収など動きがあります。earn.comは現在は事業をピボットしていますが、マイクロペイメントサービスを以前に提供していた企業です。同社も今後、このマイクロペイメントを利用したアプリケーションの領域で機会をうかがっているかもしれません。
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参照元:CoinChoice