先週(8月6日~)の日銀金融政策決定会合以降、日銀政策に関する解釈や見方はなお分かれたままだが、そんな中で「やはり円高傾向になってきた」といった論調が流行っている。「やはり」ということは、「今回の日銀政策により円が買われる」という主張があったからこそだが、本当はどうだろうか?
■米ドル/円での円高は限定的。クロス円で円高が加速 7月31日(火)の日銀金融政策発表当日の安値は110.75円前後、その前の安値は7月26日(木)の110.59円だったので、昨日(8月9日)安値の110.70円はその2つの安値の中間にあった。
となると、少なくとも現執筆時点(8月10日(金)14時30分)では、7月26日(木)の安値を割り込んでいないから、米ドル/円で測る円高傾向、あっても極めて限定的だといえる。
米ドル/円 4時間足(出所:Bloomberg)
一方、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の市況は違った風景を見せている。英ポンド/円の5月安値更新をはじめ、ユーロ/円の7月安値更新や128円の大台割れでわかるように、円高進行が加速している。
世界の通貨 vs 円 日足(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 vs 円 日足)
となると、結論として当然であり、また、わかりやすいと思うが、目先言われている円高の傾向はクロス円主導であり、また、円高よりも外貨安のほうが主な原因であると言える。換言すれば、外貨安につられた受動的な円高傾向を「やはり云々」と解釈されても、納得できないところが大きい。
■チャートは米ドル高のスピードが加速すると語っている もっとも、クロス円が下落してきた原動力が外貨安にあったなら、米ドル高はもっとも重要な背景となる。
筆者が繰り返し指摘してきたように、ドルインデックスは6月14日以降、大型アセンディング・トライアングル(上昇三角形型)を形成、昨日(7月9日)、同フォーメーションの上限にトライし、一時、高値を更新した以上、ここからは米ドルの一段高はもちろん、米ドル高のスピードアップも想定される。
ドルインデックス 日足(出所:Bloomberg)
なにしろ、6月14日(木)から形成されてきたアセンディング・トライアングル、時間をかけて形成され、また、煮詰まってきた以上、いったんブレイクすると、その分、モメンタムが加速される公算が大きい。したがって、ここから米ドル高のスピードは加速するだろう。
■1.15ドルを割れたユーロ/米ドルは1.13ドル前後をめざすか 米ドルの対極として位置づけられるユーロは、ユーロ/米ドルで1.15ドル割れを果たした。ここから1.13ドル前後の下値打診に道筋をつけるだろう。
ユーロ/米ドルはほぼドルインデックスと反対の値動きになるから、わかりやすいかと思う。ドルインデックスの6月14日(木)の大陽線が決定的な役割を果たしたのと同じく、ユーロ/米ドルも6月14日(木)の大陰線をもって下落トレンドを決定、また、これがその後の保ち合いにつながっていた。
違うところがあれば、ドルインデックスのアセンディング・トライアングル形成と異なり、ユーロ・米ドルはほぼシンメトリカル・トライアングル(対称三角形型)を形成してきたということだ。7月19日(木)安値を割り込んだことで同トライアングルの下放れが示唆されていたから、一昨日(8月8日)までの小幅な戻しは戻り売りのチャンスを提供してくれたと言える。
以上の理屈は8月8日(水)に配信したレポートをもって説明したい。本文は以下のとおり。
ユーロ/米ドル 日足(8月8日作成、クリックで拡大)(出所:FXブロードネット)
ユーロ/米ドルは昨日の反騰に続き、本日一旦1.1628まで戻ったものの、目先また軟調な値動きを見せている。GMMAチャートにおける短期スパンの抵抗ゾーンを確認、また6月安値から引かれた元サポートラインの抵抗役割を確認という意味合いでは、本日このまま弱く大引けすれば、戻りの限界を果たした公算が高い。
もっとも、繰り返し指摘してきたように、6月14日高値から大型トライアングルを形成しきたから、前記元サポートラインはトライアングルの下限でもある。同トライアングルの下放れ、7月19日(スパイクロー)の安値割れをもって確認された以上、ベアトレンドへの復帰が確認され、一昨日安値からの切り返しをあくまで途中のスピード調整と見なす。
トライアングルに限らず、フォーメーションの破れが生じた後、往々にして元サポートライン、あるいは抵抗ラインのところへ一回押してくるケースが多く、今回も然りだとみる。重要なのは、ラインの役割のチェンジの有無にあるが、本日高値の意味合いに鑑み、元サポートが一転して抵抗となる公算。
今回の下落の起点を7月31日高値と見なすが、同日罫線自体が「フォールス・ブレイクアウト」のサインを点灯していたから、本日にて再度頭打ちとなるなら、下落トレンドの延長をもたらすでしょう。戻り売りの限界を果たせば、そろそろ安値更新をもたらす。
ユーロ安は構造的なもので…